続・パラドックスって役に立つ?

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昨日の記事
が少し尻切れトンボだったので補足しようと思います。

私は数学基礎論に関しては素人なので、無責任に書いていきますが、
グレゴリー・J・チャイティン(著), 黒川利明(訳). (2021). 知の限界[復刻改装版].: エスアイビー・アクセス.
の序盤に目を通したところによると、
ゲーデルやチューリング、そしてこの本の著者であるチャイティンが述べているのは
「数学には都合の悪い命題が存在する。」
という事らしいのです。
チューリングの名前が出てくることから想像できるかもしれませんが、これはコンピューターの基礎的な部分で登場する問題に関連するとのこと。


そしてこの命題の存在証明では対角線論法が鍵になるそうです。

実数の方が自然数より多い、という事を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、その証明で使われるテクニックです。
(ちなみに、アスコリ=アルツェラの定理の証明なんかで使われるテクニックも対角線論法と呼ばれますが、こちらはコンパクト性を利用して部分列を次々用意した後、対角部分列を取り出すテクニックのことを指しているので別物です。たぶん。
ちなみのちなみに、これはコルモゴロフの拡張定理とかでも使いますね。)

詳細は述べませんが、対角線論法の表現の中には
「自分自身を含まない集合全体からなる集合」
というかなりややこしい集合 (の類似物) を考えるものがあります。

この集合が存在すると矛盾するというのがラッセルのパラドックスになっていて、その事実をうまく用いているのが対角線論法なのです。
(時系列的にはカントールが非可算濃度を持つ集合の存在を示すのに用いたのが 1891 年、ラッセルがこのパラドックスについて言及したのが 1902 年とのことなので、「改良版」対角線論法 だとか「一般化」対角線論法 の中でラッセルのパラドックスがうまく用いられている とした方が正確なのかもしれません。)

という事で前回と合わせまして、
我々が普段から使っているコンピューターの数学という、無用の用の中ではパラドックスが役に立っている
というお話でした。
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