吉田光邦. (2021). 江戸の科学者.: 講談社.
を読んでいて、面白い言葉を見つけたよ というお話です。
藤田定資という江戸時代の和算家の言葉にこのようなものがあったそうです。
“「算数に用の用あり、無用の用あり、無用の無用あり」” (p.29)。
「無用の用」というのは老子の一節にもあるようで、こちらでは
器は何もない空間があるからこそ器としての機能を果たすのだ
というように何もないことが本質になることもあるというのを述べているようです。
定資もこのフレーズを念頭に置いていたかはわかりませんが、彼の用は実用の用の事であるようで
“用の用とは実用性のある数学である。” (p.29)
として解説されていました。
無用の用は置いておいて、無用の無用とは “真理のための真理” (p.29) とのことで実用性の無い数学といったニュアンスの言葉になっているようです。
では 算数の無用の無用 と聞いてなにが思い浮かぶでしょうか?
ゲーデルの不完全性定理を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
ところがどっこい、これはコンピューターの数学においては案外無視できない問題だそうで、無用の用として熱心に考られている題材なのだそうです。
(『知の限界』なんかを参照)
案外、無用の無用は無いもんだな
というお話でした。