【 秋夜のもっと涼しくなる話・1st 】nonfiction

記事
コラム
親友にお寺の三男がおりまして
学生時代に、よく泊りに行ったんです。

もちろん、お寺に…。

難しいゲームがなかなかクリアできずに
交代で睡眠取りながら頑張ったんです。(勉強しろや!)
長時間かかるロールプレイングゲーム、頑張ったんです。

夕食には、お母さん特性のチャーハン。
これが旨くて、いつの間にか宿泊の楽しみに。

いつの日か、真冬のとある日。
2階の友人の部屋。

友人が寝に入ってから、どれぐらい経つだろうか。
眠い目をこすりながら、ゲームコントローラーを握る。

ベランダに出られる、大きな掃き出し窓。
真冬用の分厚いカーテンは隅に結わえられたままで、
日差しを入れる白いレースのカーテンは、閉じられている。

外の景色がうっすら見えている。ん~。
ゲームから目を離し、外を見る。
空からチラホラと雪が降ってきた。

雪だっ。

コントローラーを手放して、掃き出し窓へ近寄った。
カーテンに鼻をつけて庭を見る。

もちろん、お寺なので、お墓がたくさん見える。
怖い気持ちは、これっぽっちもない。
何度も来ているし、泊まって深夜も経験済み。

庭に、少しづつ降り積もる雪。
音も聞こえず、雪がいつもよりゆっくり降っている気がする。
足跡に邪魔されず、綺麗なまま降り積もる。

お墓の隅に、落ち葉などを燃やすドラム缶がある。
ドラム缶から炎が上がっている。
燃やす量が多かったのか、火が消えずにオレンジ色がモヤモヤと見えた。

ん~。何か変だ。

ドラム缶の周りの雪が溶けていない。
どんなによく見ても変な景色。
出るはずの湯気も出ていない。

なんだこれ?

急いで友人を叩き起こした。
ドラム缶を見る。
えっ…。火が消えている。というより何も起きていない。
そもそも、深夜に火をつけたままのはずはない。

友人に説明したが、驚く様子もない。
友人が、「じゃ交代ね」

何だったのだろうか?

きつね火だったと今でも思う。


写真は、山形県の立石寺です。

※カバー画像はすべて、私の撮影したものです。
他の画像も見て頂ければ、幸いで御座います。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す