ミニ怪談;あれは幽霊だったかもと思う話

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コラム
幽霊は信じていなかった(信じたくなかった)私ですが、
振り返るとあれって幽霊だったかなと思うことがいくつかあります。

そのうちの1つです。

もう20年以上前、東京・神楽坂に住んでいた時のこと。
遅くまで市ヶ谷の事務所で仕事をして、神楽坂まで自転車で帰るのが日常でした。
0時過ぎはザラで、1時過ぎることもしばしば。

その日も1時前後の時間に自転車で家まで帰ったんですよね。
土地勘のある人は想像しやすいと思いますが、市谷からお堀の下を
防衛庁へ、曙橋に向かって、右に曲がって外苑東通りを市谷柳町方面に、
というルートで帰るんです。

大体、曙橋の辺りってすごく気が悪いなっていつも思いながら
暗い夜道を自転車漕いで、柳町に出て、変なところでまた右に曲がると
道がなくなって、上りの階段になるんです。
道がないのでそこは軽いマウンテンバイクを押して上がり切ると
ごちゃごちゃした住宅街に入ります。
そこから自宅のある南榎町というところまで、真っ暗な住宅街を抜けていく。

それで、この「道がなくなって現れる階段」を登ったところに、
すごく古い一軒家があるんです。
一軒家の塀の中は雑木林で、鬱蒼としていて、
家屋自体が見えないので、灯りも見えず、
人が住んでいるのかいないのかもわからないような家なんです。
そこ、毎回通るたび嫌な気持ちになるんですよね。

だったら明るい表通り、まさに神楽坂通りから帰ればいいものを
なぜか毎回、通ってしまう変なルート。

そこである日、いつものように自転車を押しつつ階段を上がっていたら、
例の家の塀の前に、自転車にまたがっているおばさんがいたんです。
いつも、この時間のこの辺の住宅街は、シーンと静まっていて人影なんてないのに
おばさん、というか、お婆さんかも?が自転車にまたがっていました。

これから自転車を漕ぎ出してどこかへ出かけるところか?
帰ってきたところなのか?
わからないんだけど、自転車にまたがったまま、私の方をじっと見ている。

わぁどうしよう!!と心の中で叫びましたよ。

おばさんかお婆さんかわからないけど、
普通の茶色とかグレーの地味な洋服で、ズボンを履いていて
いわゆるおばさんパーマみたいな髪型で。
私も坂を上がりながらそちらを見るしかなくて、
こんなに細かく描写ができるくらい、その姿は覚えているんだけど

恐ろしいことに
その人の顔だけがどうしても見えないんです…

思わず目を擦ったかもしれない。
なんでそこだけ見えないの?って。

で、階段を上り切ってしまったら、家の前を横切って奥の道へ抜けるしかないんですね。
その時、どうしてもおばさんの近くを通らないと行けない。

すごく禍々しい感じがして、心臓はバクバクしているんだけど、
引き返すこともできず。
ちょっと挨拶とかしたらいいかな、なんて思いながらも声なんか出ず、

自分なりの猛ダッシュで押していた自転車に飛び乗って
ばーーーーって走って逃げたんです。
でも道は細かったし、多分すごくモタついていたから
おばさんがスイって私の自転車の荷台にでも乗っかってきたらどうしようと
気が気ではなかった。

不安で不安で、ついてこないことを確かめるために、
振り返ったんですよね。

そしたら、おばさんはやっぱり自転車にまたがったまま、こっちを見てる。
だけど、やっぱり顔はない!

パニックになりながら家まで自転車を漕いで、家に転がり込んで
今、変なおばさんがいた!って同居人に吐き出しました。
私があんまり変なところ(階段)から自転車を押して登場したから
向こうもびっくりしちゃって動けなくなっちゃったのかな?
なんて言って笑って、終わりにしました。

それから時々、思い出しては、あの時間に自転車にまたがっているなんて
やっぱり変だよな、と思う。
毎日通っていたけど、あの変な階段や、暗い路地や、古い家、全部が変だったなと思うんです。

違和感というやつですね。
人じゃないよなぁ、っていう違和感。
あの家も、きっと今はもうないだろうと思うけど、すでに異次元ぽかった。

ちなみに、もしかしたら、あの階段は、神楽坂にある「幽霊坂」という
場所だったんじゃないかとも思う。
どんな根拠でそんな名前なのか、どこにあるかは知らないんだけど
ただ、そういう坂があるってことだけ知っています。
確かめに行く勇気はありません。

という、それだけのミニ怪談です。現場からは以上です!


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