昨年夏、記者は重症の急性膵炎になり、東京都内の病院2か所で計2か月余りの入院生活を余儀なくされた。「差額ベッド」問題に直面したのは、その時だ。
腹部の激痛に見舞われ、救急搬送された病院では「他のベッドが空いていない」と言われて、トイレ付の個室に入った。差額ベッド料の1日2万2千円(税込み)を支払う同意書は、入院した日の深夜に、妻が署名していた。
26日間入院し、支払った医療費の内訳は衝撃だった。保険が適用された医療費の自己負担は約27万円。一方、保険外の差額ベッド料は約57万円だった。
退院後、より専門的な治療のため大学病院を外来受診したところ、即入院に。多少の差額は払ってもいいと考えたが、案内されたのは想定よりずっと高い1日3万3千円の個室。「もっと安い部屋が空いたら移動する」という条件で入室したが、お金の心配をしだすと気分が重くなった。
3日後、1日8千円の二人部屋に移ることができた。結局、43日間入院して退院時に窓口で支払った医療費は52万円余り。一方、差額ベッド料は約42万円だった。
結局、二つの病院に支払った差額ベッド料は計約99万円。保険が適用された医療費自己負担より21万円余り多かった。
差額ベッド料が必要な特別室は、個室に限らない。一人あたりの面積が6.4平方メートル以上などの条件を満たしていれば、四人の相部屋でも差額を請求できる。いくら請求するかは病院の自由だ。
差額ベッド料のかかる特別室は、もともとプライバシーなどの面で、患者の「選択の機会を広げる」ために設けられたというのが建前だ。だが、実際には患者の選択によらずとも、高額の支払いが発生する場合がある。(引用終わり)