無料公開!ショートストーリー 【痛客】

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俺はコンビニで働いていた

日々色々な客がくるが当然変な人もいる

最近では痛客というらしい

先日こんなことがあった
買い物かご一杯に商品をつめてレジに来たおばさんがいた
俺はレジで商品を打ち込み

お会計5438円になります
いつものように俺は接客をしたのだが、いきなりおばさんの表情が変わり怒鳴り声をあげた

2000円しか持っていないからその金額にしなさい!

俺は意味がわからず

はい?すいません値切りとかのサービスは当店やっていないのですが?
と聞き返したのだが、

だ〜か〜ら〜2000円しかないからその金額になるように選んで商品を入力しなさいと言ってるの!あなたバカなの?

何そのサービス、聞いたこともねぇよ
言われている意味もあんまり理解できなかったが、こいつがおかしい事だけはわかった
バカと言われその後も罵詈雑言の嵐
俺は我慢の限界がきて

は?そんなこと言われる筋合いもないし
そもそも2000円しかないのに合計5000円以上の商品をレジに持って来たのアンタだろ
商品1つ1つに金額書いてあんだろ?計算もしないで持って来たのか?それとも計算ができないのか?
バカはアンタだろ

言い返した、でも俺は間違ったことはしていない

横のレジを担当してた店長がこっちに来た
正直助かったと思った
のも束の間だった
店長は
大変申し訳ありません
と言い俺にも頭を下げるように言ってきた

いや俺悪くないだろ

と、ふてくされて俺はそっぽを向いた

おばさんは
なんなのこの子の態度?教育がおかしいんじゃないの?
と店長に言う
店長はペコペコしながらカゴの商品を2000円になるようにレジに入力し、計算が合わなければ取り消して別の商品の入力を繰り返している

30分はこの客に使っている、どう見てもオーバーサービスだ
しばらく見てたが、なんとか1923円くらいで勘弁してもらったらしい
幸い後ろの客は俺が最初に戦っているうちに、隣のレジで店長が先に対応してからこっちに来たおかげで誰もいなかったし、その後の来客も今のところ無い

商品を店長が袋に詰めておばさんに渡した

おばさんはこのクソガキと言い俺に何枚かの小銭を投げつけて出て行った
俺は最後まで謝らなかった

俺は落ちた小銭を見つめていると

店長が俺に言った
なんで謝らないの?お客様は神様なんだよ、何か言われたら、はい、はいと聞かないと!

誰が言ったかよく聞く言葉だが
俺には理解が出来ない

俺からしたら客は客、それ以上でも以下でも無い
企業のサービスというのは決められた内容でしかなく、その代価をお金でいただいているわけだ、それ以上のことを要求することは間違っている。
仮に痛客では無いが、ルール外のちょっとしたわがままやお願いであれば、それを聞くのは個人の裁量でのサービスである
そしてそれは企業からも客からも強要される部分では無い

なのにこの国は何故か痛客だろうと客が正しいとして対応しなければならない
そして対応したら最後、同じことを今後も繰り返さないといけない
だから俺はこういう痛客には絶対に対応はしない
次もできないからである
だけども客を神と勘違いしている店長が対応してしまった
これは最悪なことだ
少なくともこの店の長が対応し、謝罪した

これでこの店は、この謎の痛客に今後も対応しなければならない状況を作ったのだ


こんな上が頼りない場所で働けないと思い
落ちた小銭を全て拾って店長に渡して言った

じゃあ今月で辞めます

上がりの時間がちょうど来たのでタイムカードを切って店を出た

店長の手には531円が握り閉められていた


【痛客】



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