【シュール散文詩】「退院」など

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小説
「退院」

『退院おめでとう』と

晴れやかな顔のお医者さん

『確かに退院だけど……』と

体を病室に置いて

空に上って行く少女

「ゴジラ」

居酒屋のテレビで

ゴジラの映画がやっている

ビルを踏み潰し

口から火を吐くゴジラ

思わずカウンターで

コップを拭いている

店主に視線を送る

『まだ若かったんで』

そう照れ臭そうに

すっかり縮んだゴジラが笑う

「ヒーロー?」

たまたまその場に居合わせた男性が

女湯で溺れていた女性の命を救った

「脱線」

私は敷かれたレールの上を

終点に向かって

ただ真っ直ぐに進んでいた

だけどあの日

私はハイジャックされた

私は犯人を許さない

犯人は『2人の未来のためだから』と

いう明らかな詐欺を真に受けた

犯人は

退屈に甘えていた私自身だ

「ビーチ」

ビーチに横たわる美女

その小麦色の肌を

キラキラと輝かせるのは

クレヨンで描いたぐるぐるの太陽

ナンパするのはやめて

部屋に戻る

ゆうた

お前がパパの浮気を止めてくれたよ

「1年のカウントダウン」

……5、4、3、2、1……

ハッピーニューイヤー!!!

明けましておめでとうー!!!

今年もよろしくー!!!

じゃあいくよー!!!

31535998、31535997、3153996……

「きみ」

そっと君の目の前に差し出し

祈りながら割る

すると卵白に包まれた黄身が

床に落ちて潰れた

君はもう悲しんですらいない

透明な瞳に

無数のなりそこないを映すだけ

次こそは

産声が上がりますように

「葬式にて」

足が痺れて

触っても感覚がない

一部だけだが

私も死体になったのだ

お疲れ様でした

そう思いながら

ひっそりと撫で続ける

背後から

『くすぐったい』

そう聞こえた

読んでいただきありがとうございました。
あなたが今日着る服が、気候とばっちり合っていますように。

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