コラム43 チーム・医療

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 一般的にチーム医療とは多職種による医療の実践です。例えば医師、看護師、薬剤師、放射線技師、リハビリ専門技師、事務などが連携をとり患者様に適切な医療を提供することを指しています。それと似てはいますが、最近私がよく感じるようになったのは医者同士のチーム医療です。チーム医療というと前者と勘違いしてしまいそうなのでここではあえて「チーム」と述べることとします。 
 チームとは皆さんのイメージ通り、ある集団ないしは個人個人の集合体を指します。自分が所属しているチームは10名前後の循環器内科医の集団です。私の病院の循環器内科は主治医制で個人個人が一人の患者さんの主治医になります。従ってカンファランスなどで話し合いそれぞれの患者さんの治療方針を決定してはいくのですが、最終的にある程度個人の裁量に任される側面もあり、それぞれの循環器内科医が独立して医療を展開しています。
では何故最近私がチームを感じるようになったかというと。話せば長くなります。自分はカテーテル治療を行うのが好きです。患者さんにとても低侵襲で、真剣に取り組めば取り組むほど奥が深く、スキルアップができるからです。外科医の手術と同じの類だと思います。好きこそ物の上手なれで、私の病院の循環器内科の中では経験年数が多いというのもありますが、私の方が他の医師よりもカテーテルが少し上手いと思います。でも、私自身才能という面では全くの凡人ですし、凡人が努力すればこれくらいのスキルは身につくと思っていたので、他の医師が私よりスキルが劣っていることに対して、もっともっと上達を望んでいました。もちろん、誰でも上達したいとは思っていますし、みんな一生懸命にカテーテル検査に取り組んでいると思います。でも、ある医師は検査に顔を出す頻度が低かったり、ある医師はなかなか上達しなかったり、自分から見ていてもっと積極的にカテーテルに取り組んだ方がいいんじゃないかと思うことが多々ありました。強い言葉に変えると「なんであいつはカテーテルが下手なのにもっとやらないんだ?」みたいな考えでちょっとイライラしたりしてしまうことがあったのです。でもなぜか分からないのですが、最近はその状況から脱しました。卓越した考え方がふと舞い降りてきたのです。その考えは「餅は餅屋」あるいは「適材適所」です。こんなこと当たり前なのですがそれが腑に落ちるまでに医者になって15年はかかってしまいました。循環器内科医にとってカテーテル治療は現代において必須スキルですし、それの上達が第一目標で然るべきという思いが強すぎたのです。でも、実際には外来で患者さん丁寧に診るのが得意な人、体力がずば抜けていて当直が好きな人、周りを見渡し足りてない所を見つけて補ってくれる人、自分にも人にも厳しく周囲を律せる人、和やかな雰囲気で活発なカンファランスに欠かせない人、寡黙だが自分の仕事をきっちりこなせる人、ホウレンソウがちゃんとできる人、カテーテル治療が好きな人、ペースメーカーにずば抜けて詳しい人、時間外労働をしなくても仕事が終わる人、論文から最新の知見を見つけ出し日々の医療に生かすのが得意な人、論文が書ける人などなど個人個人特徴が当然あってその個人個人が偶然集まっただけなのだと気が付きました。当たり前だけど、腑に落ちるまで私には時間がかかってしまいました。
 しかし、腑に落ちてからというもの、それはそれは仕事が楽になりました。「君たちがいて僕がいる」みたいな感じがすごくするのです。私がカテーテルに真剣に取り組んでいる陰で、他のチームメンバーが私の足りない点を埋めてくれていると感じるようになり、感謝感謝の思いがいっぱいになりました。私はカテーテルがたまたま好きで得意ということを活かして他の医師に技術を教えたり、手技でつまずくことがあれば助けてあげたりすればいいのです。それが私の役割です。
それぞれが個人の得意不得意を理解し、お互いに補い合って仕事をすればチームとして素晴らしい集団になれると思います。結論はごくごく当たり前なのですが、この当たり前が本当に機能している集団になるのは実は難しいと思います。でも、チームとして仕事を効率良くこなすことを意識し日々過ごしていけば今後もうまく働けるような気がしています。毎年毎年、人事異動などでチームは変わります。その都度適性を活かした「チーム作り」というスキルが求められるのだと思っています。

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