ボーカルMIXのやり方①

記事
音声・音楽
私はこんな感じでMIXをしておりますという紹介として記事を書こうと思います。
今回の前提としましては、完成したオケがすでにあり、そこに歌を混ぜる。いわゆる「歌ってみた」MIXの流れになります。
オケ作成については割愛します。

またあくまで基本の流れであって、楽曲や歌い手さんによって順序や設定は毎度変わります。

環境:Logic Pro X
今回のMIX内容:ボーカルはメインボーカルの1パートのみを録音

■下準備
まずはざっくりとオケとボーカルの音量のバランスをとります。
マスター音量が割れてしまわぬように調整します。
今回のオケは既にマスタリング済み、音圧・音量がぱんっぱんに隙間なくぶち上げされているものでした。GAINも少々下げます。ボーカルが入る周波数の隙間も少なかったので追って手を加えます。
オケはあればマスタリング前のものがMIXがしやすいです。マスタリング後のオケしかない場合は、腕の見せ所ですね。。

①ボーカルのピッチ補正
とりあえず今回はピッチ補正から行うことにします。
スクリーンショット 2022-10-07 17.48.55.jpg

たいていのピッチ補正ソフトにはキーに合わせて一発ですべてパーフェクトピッチに揃えてくれる機能がありますが、大体違和感のあるもの(薄くなったり、部分的に妙にボカロっぽくなったり、半端にケロったり)になってしまうので、しっかりと一音ずつ確認します。
ピッチが安定しているに越したことはないですが、パーフェクトピッチ=正義とは私は考えていません。息遣いやムード等、より良いものが損なわれてしまうなら補正しない部分も作ります。トータルで良い曲にするのが目的です。

またビブラートの調整、揺れすぎて浮いてしまいそうな部分のトリートメントも行います。

②ハモリ作成
補正が完了したトラックを複製し、こちらをハモリのトラックにします。
錬成します。
楽しい作業です(笑)。

ピッチ補正の要領でこちらはがっつり音程を変更させます。
大体3度下か上が基本ですが、曲に合わせて調整します。
このときの注意は、単純に音程を平行移動させるのではなく、キーからスケールアウトしないよう気をつけます。不協和音になります。

③ボーカルトラックの音質補正
ここからMIXという感じですね。
今回適用したプラグインはこちら。

1.GAIN
2.EQ
3.コンプ
4.コンプ
5.ディエッサー
6.Vocal Rider
7.EQ
8.サチュレーター
9.リミッター

(SENDにて)
1.プレートリバーブ
2.ディレイ
3.ホールリバーブ

スクリーンショット 2022-10-07 18.09.24.jpg

1.GAIN
シンプルに音量の調整です。DAW付属のもので十分です。
若干音が小さかったので上げました。

2.EQ
スクリーンショット 2022-10-07 18.12.08.jpg

まずはボーカルとして不要な部分をローカット※。
今回は女性ボーカルさんで、180Hz以下をばっさりカットしました。
※なんでもかんでもローカットすれば良い訳ではないという意見に私は賛成しています。オケMIXをする際は緩やかな処理をしたり、いっそローカットしない場合もあります。

また1.7kHzと5.1kHz付近に耳に痛い部分があったのでピンポイントでカットし、耳あたりがよくなるようにトリートメントします。
ここがすごく重要です。どのあたりをカットすべきかは声質、また曲によって毎回違います。気合いです。

ここのEQでは華やかにするためのブーストは行いません。
トリートメント的なカットのみを行います。

3.コンプ
スクリーンショット 2022-10-07 18.20.52.jpg

コンプレッサー。音量差を整えたりアタックや余韻を調整するものですね。
OPT式コンプというものを差し込みます。
緩やかに、全体の音量差を整えます。
ここではあくまで緩やかに。

4.コンプ
スクリーンショット 2022-10-07 18.23.39.jpg

もう一つコンプを差し込みます。
先のは緩やかに全体を均一化するもの。
こちらは1つめで取りこぼした部分の均一かと、アタックや余韻の調整の目的です。後者の目的の方が大きいですね。
同じ設定でも、ロックなざらついた雰囲気を出したければ、古い機種をシミュレートしたプラグイン(1176系とか)を使ったり、逆にモダンなクリアな感じに行きたければザ・デジタルコンプ的なものを使ったり、雰囲気もここで加わるので、楽しいです。

5.ディエッサー
サ行の出だしなど、耳に痛い部分をピンポイントで狙って削り、マイルドにするためのものです。
耳に痛い部分のみにかかるように、ボーカルの主成分には影響しないように調整します。ひたすら吐息的なものばかりを集中して聴く作業なのでしんどいです。家族には見せたくない光景ですね。

6.Vocal Rider
これだけプラグイン名で書きました。
これはもうチートです。Wave社から出ている、音量を均一化するためのプラグイン。
スクリーンショット 2022-10-07 18.31.52.jpg

前段でコンプをかけているとはいえ、ボーカルはとりわけ音量差が激しいのでカバーしきれません。というわけで昔は最終行程でオケに合わせて手動でフェーダーを動かして(オートメーションを書くというやつ)微調整していたのですが、これが出てからめちゃめちゃ楽になりました。
これがあっても実際にはあとで調整作業しますが、作業量が大幅に違います。おすすめです。

7.EQ
ようやくお待ちかねのブーストEQです。華やかにします。
スクリーンショット 2022-10-07 18.38.32.jpg

今回は220Hzで太さを出し、7.2kHzと12Hzで煌びやかさを足しました。
ぐんと華やかになるので楽しいです。
また、それでもなんだか抜けが悪く感じる場合は、最初に挿したEQの方で基音を若干カット、二次倍音をブーストしたりもします。ここはオケとの駆け引きですね。

8.サチュレーター
これは完全にお好みでですが、歪みを加える作業です。
アナログで録音すると実際のところ、機材だったり、テープだったりで若干の歪みが加わります。ただここでの歪み=悪ではなくて、いわゆる倍音が少し足されて色っぽくなり、馴染みが良くなったりします。
もちろんクリアさを保つために加えないこともあります。
お好みで。

9.リミッター
もう十分コンプをかけているので、このリミッターはお守り程度のものです。
0dbを超えて音が割れてしまわないように。

その後、オケとの調整もしながら
プレート系のリバーブで空間を出し、
ディレイで左右への広がりも出し、
ホール系のリバーブで全体に馴染ませます。

だいぶ長くなってしまったので雑になってきました。
リバーブについてはまた機会があれば別途書ければ。。

④ハモリトラックも音質補正

はい、もう1トラックあります。
同じような作業をします。

ただコーラストラックなので、メイントラックを邪魔せず、綺麗に馴染むように。コンプはもう少し強め、EQカットは大胆に、ブーストは控えめにします。
リバーブもプレートは控えめにすることが多いです。

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この後、オケトラックの編集。
ボーカルが入るための隙間を作り、リバーブで馴染ませる。
ボーカルとハモリも馴染ませて。
でもってボーカルのブレスなどのノイズ除去をして、ボーカルフェーダーの微調整のオートメーション書いて。
最終的な音圧・音質を調整してマスタリングして完成。

すみません思いのほかひとつひとつが長くなって力尽きました。
次回に持ち越したいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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