新型コロナウイルスについて今思うこと

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皆さんこんにちは。

今回はここまで続けてきた薬学部での生活についてではなく、新型コロナウイルスについて一病院薬剤師が思うことについて述べていきます。
あくまでも一つの考え方であり、人それぞれ思うことは異なると思いますが、実際にコロナ最盛期に感染病棟を担当していた私だから思うことというのもあると思うのです。少し愚痴みたいなことを言ってしまうかもしれませんがその点はご容赦ください。

前提知識として、プロフィールを見ていただければわかりますが、私は都内の某大学病院で薬剤師をしており、東京都の新規感染者数(1日当たり)が1万人を超えていた時に感染病棟で実際にコロナ患者さんの治療に関わってきました。

少し思い出話をさせてください。
コロナが日本国内ではやり始め、濃厚接触者という言葉が生まれた時、世間の皆さんのみならず医療従事者もみな未知のウイルスに対しての恐怖心がとても強かったことを覚えています。当時はその危険性も分からない部分が多く、正確な感染経路も同定されていなかったため、防護服、手袋、キャップ、N95マスクと完全防備で患者と関わっていました。感染者数が増え始め、都から感染病床の確保要請が来たため、コロナに関わる医師、看護師の数も増員され、それに伴い薬剤師の業務内容も変化していきました。
当初の薬剤師はというと、1日に何人も入院してくる新規感染者の基本情報(既往歴、現病、重症度)を確認し、飲んでいる薬を確認して電子カルテに入力、患者本人より内服状況聴取を延々と繰り返していました。初年度は薬の開発も追いついておらず、治療のメインは対症療法でした。
毎日大量の医療資源(防護ガウン、マスクなど)が消費されていき、院内のマスク在庫も不足する始末で、院内も混沌としていました。
ほどなくしてアメリカで承認されたベクルリーという抗ウイルス薬が日本でも使用できるようになり、治療のストラテジーも確立しつつありました。ですが、あの頃は既存の薬剤に新型コロナウイルス治療効果を見出す治験も多く行われており、本当に効くのか科学的根拠がないまま厚労省のマニュアルを基に治療していました。新型コロナウイルスは免疫系を過剰に働かせ、全身状態を悪化させることが分かってからは、リウマチなどで使用されるアクテムラやオルミエントなど普段あまり出ないような薬剤も使用され、薬剤師界隈でも本当に効くのか疑問はありました。世間を騒がせた駆虫薬であるイベルメクチンなども一時期使用されておりましたが、今ではすっかり使用されていません。
現在はというと、抗ウイルス抗体薬であるゼビュディやロナプリーブも出番を失いつつあり、ワクチンの方が重要という見解が増えてきています。ウイルスは頻繁に変異していき、一般的には弱毒化するのが生物学上の流れですが、感染しやすさはあまり変わっていないようです。今まで最も恐れていた重症化のリスクが下がったことは非常に喜ばしいことですし、風邪に類似した症状程度でしたら、そこまで恐れることもありませんよね。やはり、最悪死ぬかもしれないという死への恐怖が新型コロナウイルスを凶悪な存在へと認知させたのでしょう。

さて、話を本題へ戻します。新型コロナウイルスに対する一薬剤師の私の考えですが、現在の致死率、後遺症のリスクなどを考えるとコロナウイルス感染症はインフルエンザと同等レベルの危険度ではないかと考えます。まあ政府の5類感染症への報道が出ましたので後出し感はありますが・・・
日本でのトータル感染者数も3000万人を超え、3~4人に1人はもう感染して発症したということになります。無症状でPCRをしていない人も大勢いますので、それらを加味すると2人に1人くらいかもしれません。

ご存じの通り、人間は細菌やウイルスに感染すると免疫機能の働きにより抗体を獲得します。この反応を利用しているのがワクチンになりますが、コロナに感染するということはワクチンを打つことと大きな差はないと考えます。ニュースなどで取り上げられていた集団免疫という言葉があったように、みんなが感染すればみんなが抗体を持つことになります。抗体というのは病原体に対する抵抗力、戦闘力ですからみんなが抗体を獲得していれば理論上はほとんど感染症は蔓延しないことになります。ではなぜ感染する人がいるのかというと、免疫の働きはみな同じではないからです。個体差ももちろんありますし、ストレス負荷が高い状態や体を冷やしすぎたりといろいろな条件によって働きが鈍くなります。持病の影響で免疫抑制剤を飲んでいる人もいるでしょう。

このように体がおかれている環境によっても免疫の働く力も変わってくるため、完全に感染症を抑えることはできません。ですが、抗体を持っていれば重症化を予防することができます。とりわけ重症化というのは、体に侵入したウイルスの量が爆発的に増え、そのウイルスを退治するために過剰な免疫反応が出現した結果であり、ウイルスが増える前に叩くことができればこの状態になるのを防ぐことができます。糖尿病や透析をしている方など重症化リスクの高い人はなおさら抗体を持っている状態の恩恵が大きいと考えます。

反ワクチン派などもメディアで取り上げられたりしておりますが、個人的にはワクチンは3回までは接種した方がよいと考えております。それ以降については、変異株対応などの名目もありますが、未発症でウイルス感染して自己抗体を獲得している人がそれなりにいること、現状の新規感染者数を考えるとあまり意味はないように思います。持病がある人や、厚労省が発表しているハイリスクの方は打つメリットはあるかもしれません。

今後、インフルエンザワクチンのように希望者が年に1回接種するという時代になりそうな気がしますので、まだ一度も接種していない人で、コロナに罹った人はすでに抗体が体内にある状態ですので、追加で接種はいらないかもしれませんね。コロナがはやり始めたころは集団免疫などのワードも取り上げられましたが、結果的にワクチンを接種していない人が一定数いる限り、その人がスーパースプレッダーになった時点であまり意味のない話でした。

長くなりましたが、新型コロナウイルスに対する私の考えは以上です。人それぞれ考え方がありますので誰かの考えを否定する意図は全くありません。
皆さんのこれからのコロナウイルスとの付き合い方の一助となれば幸いです。
ではまた。
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