こんにちは。『徒然なる世界』の管理人リュードです。
今回も、前回に続き、少々込み入った話をしたいと思います。
「ラスト・リゾート」という言葉があります。
ラストは「最後」という意味で間違いありませんが、
リゾートを「行楽地」という意味でとらえてしまうのは間違いです。
確かにリゾートには名詞としての「行楽地」という意味もあるのですが、
他に動詞として「頼る」という意味もあります。
そして「ラスト・リゾート」と言った場合、
リゾートは後者の意味として使われます。
「最後」に「頼る」もの。
だから「ラスト・リゾート」は「最後の手段」と訳すのです。
さて、英文法としてはこういうことなのですが、
一方で、日本語としての「最後の手段」を表す言葉には、
「奥の手」
「切り札」
というものもあります。
では、何故こうした複数の表現が存在するのか。
それは「最後の手段」と「奥の手」の、
使われる状況を区別するためです。
日本語で「最後の手段」と言った場合、
それは大抵、万策尽きようとしている状況、
つまり、他に取るべき方法がないから、
この方法を使うしかない。
そういうニュアンスが含まれることが多いです。
一方で「奥の手」と言った場合は、
状況を好転させる、あるいは有利に進めるための方法という、
どちらかといえばポジティブなニュアンスで使われるケースが多いでしょう。
そして、英語でも
「ラスト・リゾート」
はネガティブな意味で使われることが多く、
もし、ポジティブな意味、
つまり日本語でいうところの「奥の手」の表現をしようとした場合、
「エース・イン・ザ・ホール」
と言うのが一般的なようです。
「エース・イン・ザ・ホール」は、
トランプのポーカーゲームに由来する言葉で、
場に伏せたカードの中で最強のカードがA(エース)である、
というところから生まれました。
伏せカードなので、相手はそのカードの内容が分からない。
その伏せカードが最強のエースであることを知っているのは自分だけである。
こうした状況から、
「エース・イン・ザ・ホール」は、
「自分だけが知る自分の有利な点」という意味になり、
それが転じて「奥の手」という意味になりました。
このように、似た意味を持つ言葉であっても、
状況の違いによってどちらを使うのが適切か、ということは、
創作においても非常に大きな意味を持ちます。
追い詰められて、どうしようもない状況に立たされた時に使うのが
「ラスト・リゾート」
状況を好転させる、あるいは形勢逆転を狙う時に使うのが
「エース・イン・ザ・ホール」
こうした、ちょっとした表現の使い分けに気を遣うことが、
作品の完成度にも大きく影響するのです。