【文献紹介#9】抗体の劣化を防ぐことが出来る精製方法!

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こんにちはJunonです。
本日公開された研究論文(英語)の中から興味のあったものを一つ紹介します。

出典

タイトル:Highly selective Protein A resin allows for mild sodium chloride-mediated elution of antibodies
著者:Julia Scheffel, Sophia Hober
雑誌:J Chromatogr A.
論文公開日:2021年1月25日

どんな内容の論文か?

「新しく開発されたProteinA樹脂を用いることでマイルドな条件下(中性、低塩濃度)で精製することが可能となり、抗体の質の低下(変性、失活、凝集など)を防ぐことが出来る。この技術は抗体医薬品の品質維持や開発のブレークスルーに貢献できる。」

背景と結果

治療用としてのモノクローナル抗体(mAb)の活用は常に拡大しており、多種多様な抗体を選択的に精製できる効率的な方法は技術革新にとって非常に重要です。今日では、抗体や Fc 融合タンパク質を不純物から分離するための分離技術が数多く存在します。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いた精製法は最も広く利用されています。プロテイン A 樹脂に捕捉された抗体の溶出には、pH を中性から 3~3.5 の低 pH にシフトさせることから、抗体によっては凝集を助長します。抗体凝集体の形成および除去は、精製プロセスの収率を低下させ、いくつかの抗体は、これらの酸性条件下で完全に分解されてしまいます。そのためProtein Aアフィニティークロマトグラフィーの溶出をマイルドにする試みが繰り返し行われてきましたが、良い方法はありませんでした。
今回新しく開発されたプロテインA樹脂はマイルドな条件下において抗体を溶出することが出来るように設計されたものであり、以下の結果が得られました。
•中性pHで抗体の溶出が可能でした。
•低濃度の塩化ナトリウムで抗体の溶出が可能でした。
•高純度で濃縮された抗体溶液が得られました。
•抗体の回収率は99%を達成することができました。
•抗体の凝集体の形成を防止することができました。

スライド

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最後に 

1975年にハイブリドーマ法によるモノクローナル抗体が開発されて以来、産業的な利用が発展を遂げ、多くの抗体医薬品がこれまでに開発されました。しかし、医薬品開発の課題の一つには高品質な抗体を効率よく取得することが挙げられます。今回の精製方法はその課題をクリアすることが出来、製品化するためのクローン選別の選択肢が増えるかも知れません。

おしまいです。
次の記事までお待ちください。

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