【文献紹介#8】妊娠初期の空腹時血糖値の評価は重要か?

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こんにちはJunonです。
本日公開された研究論文(英語)の中から興味のあったものを一つ紹介します。

出典
タイトル:Women with Mild Fasting Hyperglycemia in Early Pregnancy Have More Neonatal Intensive Care Admissions
著者: Katrien Benhalima, Paul Van Crombrugge, Carolien Moyson, Johan Verhaeghe, 他
雑誌:J Clin Endocrinol Metab.
論文公開日:2021年1月24日

どんな内容の論文か?

「妊娠初期に軽度の空腹時高血糖を有する女性は、代謝異常と関連があり、その後にNICU に入院する率が高いことが示さ妊娠予後の評価として重要である。」

背景と結果

妊娠糖尿病(GDM)は、一般的には妊娠前・初期に認められる糖尿病は除外され、妊娠第2期または第3期に診断された糖尿病と定義されています。妊娠24~28週の間にGDMのスクリーニングと治療を行うことで、母親と赤ちゃんのリスクを減らすことが心掛けられています。ほとんどの国際的なガイドラインでは、妊娠初期に糖尿病のスクリーニングを行うことを推奨しています。しかし、早期に検査を行うことで、明らかな糖尿病ではない高血糖患者を特定することにもつながりますが、これらの女性を妊娠初期にGDMと定め、治療すべきかどうかは不明なままです。
早期発症のGDMの女性は、後期発症のGDMの女性と比較して周産期死亡率と新生児低血糖の率が高かったことが過去の研究では示されています。しかし、妊娠初期に軽度の空腹時血糖値(FPG≧5.1~5.5mmol/l)が、妊娠初期に通常の血糖値(FPG<5.1mmol/l)の女性と比較して、妊娠の有害転帰のリスクが高いかどうかは依然として不明だったため本研究が実施されました。
妊娠初期にFPGを測定し、さらに妊娠後期にOGTTを実施した全参加者(1838 人)のうち、78 人(4.2%)が FPG ≥5.1~5.5mmol/l で、そのうち 49 人(2.7%)が妊娠後期に OGTT が正常となりました。よって、妊娠初期のFPGのGDM予測に対する感度は 37.2%に留まっていました。
低FPG群と比較して高FPG群では代謝異常、妊娠中の高い喫煙率、GDMの既往歴、耐糖能障害、BMI高値、インスリン抵抗性とインスリン分泌障害が有意に認められた。妊娠体重増加は両群間で差は認められませんでした。
重要なことに高FPG群では低FPG群に比べてNICU入院率が有意に高くなりました(20.8%対9.7%)。さらに妊娠初期に低FPGでありその後NGTと診断された群に比べて初期に高FPGであったNGT群ではさらにNICU入院率が有意に高くなりました。この高FPG-NGT群で最も多かったNICU入院の理由は新生児呼吸窮迫症候群でありました。また新生児低血糖症によるNICU入院者はいませんでした。
妊娠24~28週の間にGDMのスクリーニングと治療を行うことは、妊娠の有害な転帰を減らすために有益であるという証拠が蓄積されていますが、妊娠初期の軽度高血糖症の管理については、まだ議論の余地があります。しかし今回の結果は妊娠初期の軽度高血糖症患者もリスク対象にするべきである結果となりました。

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最後に 
妊娠中期~後期での糖負荷試験はリスク評価として大変重要ですが、Covid-19感染症の拡大に伴い、糖負荷試験の実施が制限されている場合があります。その場合には、妊娠初期の空腹時血糖値を評価し、妊娠中に生じるリスク患者を判断するのは簡単な代替手段となると思います。

おしまいです。
次回の記事までお待ちください。

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