化粧品売り場の出会い

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コラム
百貨店出店ブランドを担当していた頃、美容部員採用の仕事で沢山の女性とお会いました。

地方で若いチーフが店舗を立て直すスタッフ募集に、業界未経験、接客経験ありの40代後半女性とお会いすると、いろんな理由で対象外になるのですが「現在おひとり様」と知ると、採用してみてはどうだろうか? という複雑な気持ちと葛藤もしました。

人と関わる仕事は、いろんな人の人生を垣間見ます。


私が百貨店美容部員として勤めた7年間の中で、一番印象深かったお客様は30代の頃に札幌でお会いした、私の母より少し若く控えめな女性でした。


 その女性はアトピーによる赤ら顔で、病院に通っていたもののよくならず《製薬会社のスキンケア》に僅かな期待を持ち、初めて百貨店の化粧品売場に来たといいます。心落ち着かない売場に足を向かわせたのは、娘の幸せを願う母ごころ。


​「この汚い顔で娘の結婚式は、恥ずかしくて出られないから。。」でした。


当時勤めていた化粧品ブランドはアトピー専用の化粧品ではありませんし、化粧品は医薬品ではないため治癒・効果という説明はできませんが、どんな事情でも売場に足を運んで頂いたお客様の気持ちには応えたい。日頃のお手入れ、生活習慣等々を聞き出したところで、私はこう伝えました。

「弊社の商品は、アトピーに効果があるものではありませんが、肌がきれいになるために必要なのは《保湿と、キレイになりたいという気持ち》なんです。
当店にはアトピーのお客様も数名いらっしゃいますが、肌質は人によって様々ですから、サンプルをお試しになり、お肌に合うようでしたら、試す価値はあると思います。ですが、もし合わなくても諦めず、お肌に合う化粧品を探し続けてください。きっと見つかりますから」


そう伝えると、女性はポロポロと涙を流し、サンプルを入れた袋を手に持って帰られる時、通路を右へ曲がる手前で振り返り、手を振ってくださった笑顔は、とても明るく印象的でした。

その後、女性が来店されることはなかったけれど、7年間の美容部員勤務でいちばん思い出深い、お客様です。


  女性が「きれいになりたい」という気持ちは、様々な原動力になります。
 ライフワークとして「スキンケアカウンセリング」を始めた私の原動力は、
美容部員時代にお会いした、あの女性の笑顔。


お越しいただく方から肌悩みを伺いながら、結婚や人生の岐路、転職や環境の変化によるお悩みに行きあたることは珍しくありません。

「帰りに早速、百貨店に化粧品を買いに行きました」

と、明るいお知らせをいただいたとき、お会いできてよかったと思うと同時に「化粧品の仕事に就いてよかった」と思う瞬間でもあります。



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