サンマ

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今晩の夕食はサンマの塩焼きにした。
サンマには必ずなめこの味噌汁がつく。我が家の定番。
結婚当初 夫は「俺は実家では サンマを骨ごと食べていた。
お前が焼いたサンマは焼きが足らなくて 骨ごと食べられない」
と奇妙な事を言って私を困らせた。
普通に焼いたサンマは骨は残すでしょう。
骨ごと食べられるまで焼くってなんだ? 炭になるぞ。

私の実家でまだ私が学生だった時 母が帰ってきてサンマを焼いた。
珍しく早く帰ってきていた父が母に文句を言った。
「普通サンマは塩をして1,2時間置くものだ。それを塩を振って すぐに
焼くとはなんだ。」
母だって パートの帰りに買い物をして、それから急いで
夕食の支度をするのである。 例え父の言うことが正しいとしても 
そんなふうに言うもんじゃない。可哀想だろ。
そう思った私は父に反論した。
「あら、お父さん このサンマは新鮮で ついさっきまで海にいたのよ。
海ってホントしょっぱいの。もう充分塩してあるのと同じよ。」
父は思わぬ方向からの愛娘の反論に 「えーっ そんなわけないだろ」と
ちょっと狼狽えた。

夫の骨まで食べられるサンマの謎は少しして解明した。
夫が食べていたのは 干物にした丸さんまだった。
これは焼くと確かに骨までいける。目刺しみたいなものだ。

先日、実家に帰って 偶然サンマの話が出た。
あの海でさっきまで泳いでいた思い出のサンマ話。
父は10年前に故人になってしまった。
「そんな事もあったね」とお母さんが笑う。
「お姉ちゃん 何言ってんのかと思った」と妹が笑う。
「結局あの時お父さん ぺっろと2匹食べたよね」
と私も笑う。笑った後 優しかった父を思い出し
ちょっと泣きたくなった。


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