離職理由、変更できる?異議申立てには何が必要?

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少し間が空いてしまいましたが、前回までのブログでは失業給付の概要から受け取り方、再就職後の給付金について書かせていただきました。
失業給付の基本的な流れについては書き終えましたが、今回は離職理由について詳しく書きたいと思います。
失業給付の制度の概要や給付の流れなどについてお知りになりたい方は前回までの記事をお読みください。

<※必ずお読みください>
このブログは、失業給付の受給を検討している方に参考にしていただく目的で個人が書いているものです。
(※2024年4月時点の制度をもとにしています)
特定のハローワーク、労働局、省庁の公式の見解を記したものではありません。
なお、実際に受給できるかどうかは管轄のハローワークの判断になります。確実な受給を保証するものではありません。
以上のことをあらかじめご承知おきの上お読みください。
また、偽った申し込みをして不正に受給をすることは絶対におやめください。

離職理由とは?

そもそも離職理由とは何か。
言葉通り退職の理由ということですが、失業給付の手続き時にハローワークが何をもってそれを確認するかというと、「離職票-2」です。
離職票は2つの書式になっており、その2枚目の右側に離職理由が記載されています。
この離職理由は(本来であれば)退職前に会社と本人とで確認・合意の上で記載内容が決定されるものです。
(本来であればと書いたのは、事前の確認を省略することがままあるためです)
会社の記載した離職理由と本人の認識とが合っていれば問題ないのですが、そこが食い違っている場合などはしばしば問題となります。

離職理由の食い違いが問題になる理由

なぜ記載されている離職理由が食い違っていると問題となるのか。
それは、以前のブログにも書きましたが、離職理由によって受給の開始時期が異なる場合があるためです。
離職理由が自己都合退職or懲戒解雇の場合は、手続き後に給付制限という支払いのない期間が発生しますが、それ以外の場合は給付制限はなく、7日間の待期期間が過ぎれば受給開始となります。
つまり、受給開始時期が少なくとも2ヶ月間異なるのです。
さらに、解雇や退職勧奨などの会社都合退職であれば、所定給付日数も倍ほどの差が出てくる場合があります(退職時の年齢や雇用保険の加入期間によって前後します)
仮に、会社から退職するように言われて合意の上で退職したのに、離職理由に自己都合と書かれていた場合、すぐ受給できると思っていた失業給付が2ヶ月も先になってしまう上に受け取れる日数まで減ってしまうことがあるのです。
こんなことがあったら困惑してしまいますよね。

離職理由は変更できる?

記載されていた離職理由が事実と異なる場合、変更できる場合はあります。
が、離職者本人の言い分のみでは変更できないため、原則必ず会社側に事実確認が必要になります。
この事実確認と変更の手続きをハローワーク経由で行うのが「異議申立て」という手続きです。

なお、変更するにはこの手続きが必ず必要というわけではなく、本人から会社に訂正依頼をすることも可能です。
ハローワーク経由での確認はどうしても一定の時間を要するため、会社とコミュニケーションが可能な方は自身で話をした方が早い場合もあります。
次のような場合は、一度会社に確認することをお勧めします。

・退職前に会社の担当者から「会社都合退職となる」と伝えられており合意の上で円満に退職したにもかかわらず、自己都合退職と書かれていた。
・契約期間満了日での退職で、契約書上でもその日付が確認できているにもかかわらず、自己都合退職と書かれていた。

上記は記載誤りである可能性の高いケースですが、そうでない場合の手続きや必要書類について次に書いていきます。

会社の労働環境が理由である場合

自分から退職を願い出たのは事実だけれど、会社の労働環境に問題があった…という申し出をされる方は多くいらっしゃいます。
この場合、その問題点が一定の条件に達しており、なおかつその事実確認が取れる場合には、離職理由を自己都合から会社都合相当に変更できる場合があります。
これには多くのパターン・条件があるため、詳しくは「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」というワードで検索して厚労省の公開している資料を読んでみてください。
資料は細かい文字でびっちりと書かれていますが、下記に特に多い異議申立ての例とその確認資料を記載します。

異議申立てとその確認資料例

申立ての中で、比較的事実確認がとりやすいのは下記のようなケースです。

・時間外労働が多く発生していた
・給料の支払いが遅れていた
・給料の金額が突然低下することになった

これはいずれも時間や金額といった数字で確認のできるものであり、タイムカードや出退勤記録、労働条件通知書や契約書、通帳の記帳などが事実確認の根拠として利用できます。
もしもこういった事実についてハローワークに相談される際は、可能な限りで上記のような資料を用意すると良いでしょう。
資料が特に無い場合も、具体的な時間や金額を自分なりに整理しておくと手続きがスムーズです。

一方で、申立てが困難であったり、事実確認に時間を要する場合があります。下記のようなケースです。

・社内でのパワハラやセクハラ
・(正社員の)配置転換・異動・転勤

これらも相談の多いものですが、離職理由の変更はかなり困難であるのが現状です。
ハラスメントは口頭・行動によるものが多く、書面での証明提示が難しいためです。
とはいえ、変更できる可能性はゼロではないため、ハラスメントについて相談される場合は下記のような内容をまとめておくと良いと思います。

・ハラスメントの事実を社内の担当者に相談した際の日付・担当者名・内容(メールなどの記録が残っているとなお良いです)
・ハラスメントの中で退職を迫るような発言があった場合、その日付・場所・相手の名前・内容

また、配置転換・異動・転勤は、正社員の場合はもともと就業規則上でそれらに制限がないことが多いため、異動などによって意図しない職種や勤務地になったとしても申立ての対象にならない場合があります。
非正規の場合や、正社員であっても勤務地や職種が限定されていたような場合は、労働条件通知書や就業規則をお持ちの上ハローワークに相談してみることをおすすめします。

なお、ハローワークはあくまで離職票や関係書類の確認しか行えず、企業の労働基準法違反を取り締まったり、どちらに非があるか判断するための裁判を行う機関ではありません。
そのため、ハローワークはボイスレコーダーの音声や動画を証明として受け取ることもできません。
離職理由のみでなく会社の労働環境そのものや給与の金額について異議のある場合、または不当解雇に対しての相談を希望する場合は、労働基準局や弁護士への相談をおすすめします。

体調不良や出産・育児、介護が理由である場合

自分から退職を願い出たけれど、その理由が体調不良や出産・育児、親族の介護であったと確認できる場合は、「特定理由離職者」となります。
自己都合退職を、「やむを得ない個人的理由による退職」に変更するようなイメージです。
「特定理由離職者」になると、2ヶ月の給付制限をなくすことができるため、受給開始の時期が早まります。
この条件も、「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」というワードで検索して厚労省の公開している資料を読んでみてください。
下記によくある例とその確認資料を記載します。

特定理由離職とその確認資料例

特定理由の中で特に多いものと、その確認資料です。

・体調不良や怪我により週20時間以上の労働が困難
 →ハローワークの求める医師の診断書式
・出産や3歳未満の子の育児(この理由により、退職後も3ヶ月以上就労できない状態)
 →母子手帳
・親族の介護(原則同居、かつ他に介護を手伝える家族がおらず、付きっきりの状態)
 →介護保険証、世帯全部の住民票

注意すべきポイントは、上記のいずれも手続き時点では週20時間以上の就労が可能になっている必要があるという点です。
就労できない状態が続いている場合は、その時点では失業給付の手続きはできません。
その場合、「受給期間延長」という失業給付の受給権利を保留するような手続きが可能な場合があるので、管轄のハローワークに確認をおすすめします。
特に医師からの診断書をとる場合は、必ず事前にハローワークに確認するようにしてください。
ハローワークの求める内容が書かれている書式でなければ、確認に使用できない場合があるためです。

また、「特定理由離職者」には、上記の他にも結婚に伴う転居や配偶者の転勤・転職に伴う転居も含まれています。
詳細は厚労省の公開している資料を確認してみてください。

あとがき

今回は離職理由について詳しく書かせていただきました。
異議申立てが通るかどうかは、最終的には管轄のハローワークの判断となります。
内容によっては担当者によって判断が分かれるので、課内の複数人で審議することもあるようなデリケートなものです。
そのため、ブログ上では事実としてのよくあるケースや参考となりうる資料の案内に留めております。あらかじめご了承ください。

ちなみに、ものすごく稀ですが退職前に会社側が本人との話し合いによって労働環境の問題点を積極的に認め、その事実を記載した会社都合退職の離職票を発行するような場合もあります(数年間の窓口業務の中で2回くらい見ました)
何にせよ、退職の事前に会社と離職理由について話し合えるに越したことはないので、これから退職を考えられている方はぜひ入念に打ち合わせをされることをおすすめします。

上記を読んで、「私の場合はこれはどうなるんだろう?」と引っかかる点があるのであれば、お住まいの管轄のハローワークの給付係に問い合わせるか、離職票や身分証を持って直接窓口に行くことをおすすめします。

このブログの反響によっては、今後期間限定で電話相談やチャット相談の出品を検討しています。
次回以降は、受給期間延長や窓口でよく受けていた質問などについて書いていきたいと思います。
ご興味を持っていただけた方はぜひ引き続きお付き合いください。

最後までお読みいただきありがとうございました!
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