「バランスの良い食事を心掛けましょう」とのバランスの良い食事の真意とは。

記事
コラム

認知症予防へ食事からのアプローチ


寝たきりになる原因ナンバーワンは脳血管障害、ついで高齢による衰弱、骨折転倒、認知症だそうです。

ナンバーワンの脳血管障害の内訳は、脳梗塞59%、脳出血27%、くも膜下出血11%で、最も割合の高い脳梗塞といえば動脈硬化症、高脂血症など食生活に起因した生活習慣病です。
脳梗塞による損傷部位の後遺症から若くして車椅子生活になった、片麻痺になった、動けなくなった、という方は本当に多くいらっしゃいます。

脳梗塞や生活習慣病を予防する食事や栄養管理はあちこちで触れられていますので、私が今更書くこともないかなと思うので、寝たきりになるナンバー5の「認知症」について触れていこうと思います。


私が勤めている特別養護老人ホームにご入居されている多くの方が軽度~重度の認知症をお持ちです。認知症の進行により活動量が減少し、食事も水分も摂れなくなり、ほぼ寝たきり状態となってお亡くなりになったご入居様もおられました。

認知症の厄介なところは、食べ物を食べる物だと認識できないために、食べ物が口の中に入っても咀嚼できない、飲み込むことができない、といった難しさにあります。もちろん「噛んでください」「飲み込んでください」の声掛けにもなかなか理解出来ません。

いくら美味しい食事を用意しても、大好きだった食品を用意しても、それが何で何をすべきかが認識できないために、何も分からず食べられずに終わることも多々あります。
また、食事と同様に水分を摂ることも困難なので脱水の危険もあります。


認知症というと、徘徊、せん妄や妄想、不潔行為、人格の崩壊など周囲に迷惑がかかるような行為が思い浮かぶかと思いますが、これらの症状は家族や周囲の人を悩ませる代表的なものです。

認知症患者のお母様が、新築の家の至るところで排尿、排便、便をいじり遊ぶといった行為をするので「殺意を覚える」「自分がどうにかなりそう」と訴えるご家族もいました。血の繋がっている親であろうと、そう思えるほどまで追い詰められる認知症の切なさ悲しさを感じます。

認知症の問題行動が出現すると独り暮らしはもちろん、家族が疲弊するため、家族との生活も困難になりますので、介護施設に頼らざるをえなくなります。


生活や人格が崩壊される認知症ですが、現在日本では65際以上の方の7人に1人が認知症、その予備軍と言われている認知症大国で、今後も認知症患者は増加していく見通しです。

「認知症となる原因も予防法もまだ明らかではない」というところが、
明確に生活習慣や食習慣を是正することで予防できますと指導される寝たきりナンバーワンの脳血管障害より厄介なところだと感じますが、
明確ではないものの、認知症予防策としての食事は示されています。

バランスの良い食事
摂取カロリーを守る
塩分を控える
間食・糖分を控える

そうだよね、というような基礎的なことですが、
食事内容にしても考え方にしても、寝たきりナンバーワンの脳血管障害や糖尿病といった生活習慣病と同じ予防策なので、毎日のバランス良い食事から健康はつくられるということなのでしょう。


ところで「バランスの良い食事を心掛けてます」「バランスの良さにこだわりました」と俗に言われる

「バランスの良い食事」とはどのような食事だと思いますか???


私が日本栄養士会の研修で学んだバランスの良い食事とは
「一連の化学反応をスムーズに引き起こすことができる食事」のことを差します。

私たちの身体は「化学反応の連続」なのです。

例えば、ご飯の主成分であるデンプンが各種消化酵素によってグルコースという物質にまで分解され、
そのグルコースがピルビン酸や乳酸といわれるものに代謝され、ATPという代謝産物を生成し、その生成されたATPをエネルギー源として私たちの生命は保たれています。さらに、これら一連の過程にも複数の酵素やイオンが関わっています。

「私たちが生きるために必要な代謝をスムーズに引き起こし、必要なエネルギー源を効率良く生み出すための食事」がバランスの良い食事だということです。

例えば、ビタミンB1は糖質代謝の補酵素として働くために、ビタミンB1が不足すると糖質がエネルギーに変換されにくくなります。
なので、ご飯や炭水化物を食べ過ぎてしまった時はビタミンB1を多く含む豚肉やゴマを摂るようにすると、糖質が効率良くエネルギー源になるよというわけです。

各種ビタミンも微量栄養素も過不足なく摂るようにすることは、スムーズな代謝を促し身体が良好な状態を維持するために必要なことだと理解できると思います。


各種制限された療養食や個別な食事相談ではなく、ざっくりとバランスの良い食事は?と求められた場合、私なら迷わず「和食(日本食)を意識して下さい」とお伝えします。

お米の消費量は年々減少していますが、日本食は多くの人が、ご飯と味噌汁と納豆や焼き魚などイメージしやすく、なんだかんだと確固たるポジションを保っているため、頭に描ける日本食は食卓に再現しやすいのかな、と感じています。

塩分控えめを意識したバランスの良い日本食は、脳血管障害や認知症予防として、またその先にあるかもしれない寝たきり予防として最良の食事です。

日本食を好まないという人は、ハンバーガーとポテト・ピザを食べた次の日は、日本食でデトックスみたいな感じで試してみたり、
日本食をベースにした献立の脇に、お楽しみとしてピザを置く、
みたいな感じにすると継続しやすくて良いのかなと思っています。


今年、認知症の大半を占めるアルツハイマー型認知症の病理に作用する、初めての治療薬(エーザイ)が承認されたとのことです。
処方薬として出回るようになるまでまだ時間がかかりそうですが、
コロナ感染症と同様に、予防と治療薬とセットで対処できる希望ある未来はそう遠くないかもしれません。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す