女らんまと攻略する異世界地下迷宮(短編小説)

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「いやー、けっこう強いって聞いてたけど、弱っちいモンスターだらけだな♪」
「入り口の大きさから推測するに、かなり深いダンジョンだから、そのうち、強いモンスターが出てくるんじゃねえのか?」

 ベリーヌ公爵から案内されたとおり、先代勇者の墓所近くに発生したダンジョンへと侵入したオレとらんま。松明の代わりに使役したピクシーを小瓶から出し、周囲を照らしてもらいながら進んだ。
 手元の懐中時計ではすでに32時間程度、経過している。その間に雑魚モンスターたちと数回の戦闘を繰り返し、休息を取りながら、階段を16回降りたから、今は第17層ってところか。

 最深部まで何層かかるかわからなかったから、いちおう数える事にしておいて正解だったな。
 ここに至るまで遭遇したモンスターは雑魚だらけで、そのすべての戦闘をらんまに任せた。オレも多少は戦ったのだが、らんまがあまりに豪快に戦うので、オレが出る幕もなく戦闘が終了していた事がほとんどだった。

「奥に進むにつれてだと、良いな♪ もっと歯ごたえあるモンスターに出くわしたいぜ~」

 戦闘狂な性格は武道家たる所以で、らんまがそんな事を言っていると、突如がいこつ剣士が現れた。

「お、出たな。らんま、一応は気をつけろよ」

 肉を失った人体の骨がそのまま、モンスターになったようながいこつ剣士が、6本の手に剣を持ち、多段攻撃を仕掛けてきた。

 オレは先頭を歩くらんまに戦闘を任せた。正直、あくびがでるほど、退屈な戦闘だ。それでも、ファンタジー世界らしく、マント付きのビキニアーマーを着用したらんまは、久々に思い切り戦えるのが嬉しいようだ。がいこつ剣士の多段攻撃も、まるで槍を中国棒術のように扱い受け流していく。普段のらんまも抜群に可愛いが、戦っているときのらんまはさらに生き生きとしていて、さらに可愛い。

「任せろっ、ほっ! はっ! でぇい、無差別格闘早乙女流槍術さみだれ突きぃ!!」

 攻撃を見事、受け流したらんまはがいこつ剣士の攻撃の倍以上の手数で槍を突く。余裕の表情で戦うらんまに必死で攻撃をしかけるがいこつ剣士。汗をかかないはずのがいこつがまるで汗をかいているようにも見えた。それくらい実力差が開き過ぎていた。らんまのさびだれ突きがヒットするとあっけなく、がいこつ剣士はガラガラと音を立てて、崩れ落ちていく。

「へっ、他愛もねぇ♪」

 らんまが得意気に鼻をこすり勝ち誇ると、さらに地下へと進む階段が目の前に現れた。

「いい加減、次の階層からはオレにも戦わせてくれよ、らんま」
「えぇー、せっかくの冒険なのに」
「んなこと、言ったって、オレだって戦えるんだからさ。んじゃさ……こういうのでどう?」

「ん?」

「次に現れたモンスターが1匹なら、らんま。2匹以上なら2人で戦うってことで」

「よし、それならいいぜ。決まりぃ♪」

 階段を降り、ピクシーに照らされた道を歩いていくと、前方から炎が飛んできた。攻撃魔法のようだ。

「あちぃっ」

 らんまが炎の攻撃魔法を喰らうがマントの先が少し焼けたくらいで、ダメージは少量。

 次々と炎が飛んでくるので、敵の数は1体ではないようだ。

「ピクシー照らしてくれ!」

 オレがそう叫ぶと、闇の中から灰色の雲モンスターが5匹現れた。ギズモだ。

「よし、2体以上。オレの出番だな」

 剣を構える。久しぶりの戦闘でワクワクする。なんせ、元の世界じゃ、一般男子高校生だったこのオレも、こっちの世界じゃ、勇者の力を得ているからな。冒険者ギルドには敢えて登録していないが、登録していればSSSランクだ。

「だぁー、先に2体倒したほうが残りのやつを倒すってことでいいよなぁ!」

 らんまが先陣を切り、ギズモに向けて槍を振り回していった。疾風のごとく動き、素早く攻撃をしかける。目にも止まらぬ速さで敵の懐に潜り込み、ギズモにダメージを与えていった。素早い身のこなしのらんまならではの戦闘スタイルだ。男の乱馬のときよりもパワーは落ちる分、女のときはスピードでカバーしていくのは元の世界から一貫している。

 一方、オレはギズモが飛ばしてきた炎の呪文を盾で防いだ。らんまよりも早く、ギズモを倒すべく、雷の呪文を唱える。

「閃光呪文・ライトニングボルト!」

 多少、威力は抑えたものの。被雷した2匹のギズモが床に落ちた。

「うわ、魔法で同時に2匹かよ。ずるー」

「魔法は使っちゃいけないとは言ってないだろ?」

「にゃろぉー、なら、こっちも雷鳴突きぃ!」

 らんまがギズモに垂直に槍を突き刺せば、まるでホッピングのように反動を利用して、また飛び上がり、2匹目を串ざした。そして……。

「へへー、3匹目もいただっきぃ♪」

 もう一度飛び上がったらんまの雷鳴突きに最後のギズモも仕留められてしまった。

「わ、らんま!? そっちこそ、ずるいぞ」
「へへへ、悪ぃ、悪ぃ♪ 勢い余っちまって。残り1匹を攻撃しちゃいけないって決めてなかったしなぁ~?」

 ニコニコとイタズラな笑みを浮かべるらんまに、オレは不服な表情で返したが、内心では、元の世界でずっと憧れていたらんまと、こうして、冒険を行える事に幸せを感じていた。
 思えば、初恋だったんだ。はじめて学校でらんまのことを見かけたとき、素直に可愛いって思った。周りのクラスメイトにその事を話したら、元男のあんなやつのどこがいいんだって言われたっけ。らんまよりも完全な女である天道あかねやシャンプーのほうが良いって声も多かった。断固、うっちゃん派だってやつもいた。中には久能先輩の妹、小太刀派ってやつも。それでも、オレはらんまが一番可愛いって言って譲らなかったな。雨の日はらんまが女の姿で学校に登校する事が多かったから、天気予報で傘マークがつくと、すごく嬉しかったり。

 らんまの周りには響良牙もいた。中学のときから良牙とらんまは格闘ライバルで親友だったんだよな。そんな良牙のポジションがすっごい羨ましかった。オレも良牙みたいに強くなってさ、そうしたら、らんまともっと親しい関係になれるのかなって憧れていた。でも、ただの男子高校生がちょっと筋トレしたくらいじゃ、いきなり強くなれたりはしない。それでも、らんまとちょっとでも仲良くなりたくて、ゲーム一緒にやろうって誘ったのが、この世界へ転移されてきたキッカケだったんだよな。

 それが、今や、こっちの世界じゃオレは勇者で、らんまは彼女どころか、嫁になってる。人生、なにが起きるかなんて、わからないもんだな。

 ぼやっと、そんな事を考えながら、また1つ階段を降りていると、らんまに声をかけられた。

「どうしたんだよ、達也。なに、ニヤニヤしてんだ? 変なやつ」

「な、な、なんでもねーよ、ほら、はやく進もうぜ」

「なに考えてたんだよ~? どうせ、またエッチなこと考えてたんだろ?」

 らんまがマントをひるがえし、肌面積の多いビキニアーマー姿を見せつけてきた。元男のくせに、らんまはすごく胸が大きい。つい、動揺してしまう。

「ち、ちげーよ……!」
「じゃ、オレのことかな~? 達也、大好きだもんな、オレのこと」
「そ、そ、それもちげーよ」

「オッパイ見せてやろうか?」

 らんまがビキニアーマーのブラに手をかけてオレを挑発してくる。

「ほらほら、ここはダンジョンだぞ。集中しろ」

 オレは必死にらんまのサービスを拒否する。なんせ、ここはダンジョンだし。家じゃない。

「ちぇっ、つまんねーの。ま、いいけどさ~」

 女の勘ってすごいな。そう思っていると、さらにらんまが女の勘を働かせた。

「なんか、ここの壁から空気が漏れているような……」

「どれどれ」

 確かに言うとおり、壁にあいた僅かな隙間から空気が行き来している。手をかざすと風を感じられるが、覗けるほど大きな穴ではない。軽く触ってみると壁はもろそうだ。

「達也、これってもしかして……」
「ああ」

 ダンジョンには隠し部屋が付き物だ。その場合、ダンジョンでしか得られないような貴重なアイテム、もしくは装備品が隠されている事もある。

 オレとらんまは頷き合うと、せーのっ、という合図と共に、二人で壁を勢いよく蹴ってみた。すると壁の欠片がボロボロと崩れ落ちてきた。そのまま何度か蹴り続けると、見事、壁の先は隠し小部屋がある事が確認できた。人が一人分通れるようになった壁穴を通ると、小部屋は2畳ほどの広さで、宝箱がひとつ佇んでいた。

「わ♪ やったな! お宝ゲットだ!さっさと開けてみようぜ」

「ちょっとらんま、ここは慎重に。宝箱の形をしたモンスターの可能性だってある」

 こういうときに盗賊のスキル『みやぶる』があると便利なんだよな。中にモンスターがいれば、開けないままスルーできる。

「それだったら、倒せばいいじゃねーか♪ よっと」
 らんまが宝箱の蓋を開けると、中から出てきたのは……。

 シルク素材の黒い布きれだった。

 らんまが頭に?を浮かべながら手に取ってみると。それは『エッチな下着』だった。

「な、なんだよ、これぇ?!」

 顔を真っ赤にして、オレに投げ渡してくるらんま。渡されたそれをらんまの身体に重ねてみると、黒を基調としたセクシーな女性用の下着で、ブラとショーツとガーターベルトで構成されていた。

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