女らんまと異世界冒険記・小説

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小説
 オレの名は達也。風林館高校に通う1年生、16歳だ。

 武術の心得は多少、あるもののどこにでもいるような普通の高校生だ。

 同じく、風林館高校に通う早乙女乱馬は元は男だが、水を被ると女の子になっちゃう摩訶不思議な体質の持ち主。お湯を被れば、元の男の姿へと戻るのだけど……。

 正直、女になったときのらんまは可愛い。髪の毛は赤毛に変化し、体格も小柄になるのだけど、胸は大きく膨らむ。いわゆる『トランジスタグラマー』ってやつだ。元が男なだけに無防備で、八宝斎というスケベ爺さん相手に戦うときにはバストトップを惜しげもなく披露したりもすることもある。オレを含め、風林館高校に通う男子生徒でらんまのバストトップを見た事あるやつは少なくはない。ほとんどのやつが見た事あるんじゃないかな?

 そんならんまと二人きりで遊びたいと思ったオレは『RPG系の新作ゲームソフトが発売されたから一緒にやらないか』と誘ってみた。ゲーム機もゲームソフトも持っていないらんまはオレの誘いに気軽にOKしてくれて、新作ゲームを鞄に詰め込んだオレはらんまと歩いていた。家への帰り道をショートカットしようと神社の鳥居をくぐったら、突如、謎の光に包まれて、この異世界に転移してきちまったわけ。

 謎の光に包まれたオレとらんまは気がつくと広大な草原に倒れていた。草原で過ごすのもアレだと、道案内の看板を頼りにオレたちは街へ向かう事にした。草原から街へ移動する途中にはモンスターもいたりして、どうやら、ここはオレが購入したばかりの新作ゲームソフトの世界のようで『剣と魔法のファンタジー世界』だった。言葉も通じる。
 この世界で何度、寝起きを繰り返しても、現実の世界に帰る、つまりは夢から覚める事はなかった。さらには、オレにとっては好都合だった事に、らんまは女の姿のまま転移してきたので、この世界では、お湯をかぶっても男の姿に戻る事はなかった。そんなこんなで、オレは年中無休の女でいるらんまと、この異世界で過ごす事になった。

◆◇◆◇

 今日で、らんまとこの異世界に転移してきてから、ちょうど一週間くらいになる。
 寝泊まりしている宿屋の一室で目覚めたオレは身支度を整えて階段を降りた。宿屋に差し込む太陽の光がまだ眠いオレの目を照らす。異世界でも朝の太陽は眩しい。宿泊者が食事をする一階の憩いのスペースでらんまが起きてくるのを待っていた。
 だいたいはオレのほうが起きるのが早いので、こうして、ここでらんまが起きてくるのを待っている事が多い。部屋はらんまとは別の部屋を借りている。
 今日も階段をドタドタと降りる音が聞こえたので、らんまが起きてきたかと思い、階段のほうを見るなり、オレは飲んでいたホットコーヒーを盛大に吹き出してしまった。

「ちょ…!らんま、な、なんだよ、その格好!」

 なんと、らんまがビキニアーマーを着用しているではないか。体を覆う範囲はビキニの水着とまったく変わらないため、「身体を守る」という鎧本来の機能を捨て、完全にフィクションと割り切ってデザインされた防具を身に着けたらんまが口を開いた。

「へへへ、どうせ、こういう世界にいるんだから、こういう格好してみようかなって思ってさ。これ、昨夜、防具屋のおじさんからもらっちまった。だから、無料だぜ。どうだ? 似合ってるか?」
「いや、そりゃ、よく似合っているけどさ。そんな格好、目立つぞ。」
「そっかぁ? なら、いつものに着替えてきちまおうか?」

 らんまはいつもこうだ、女の姿である事を自覚していたりしていなかったりで、すぐにこっちの気持ちを試そうと小悪魔的な行動を取る。オレは必死に転移してきたときの赤い服に戻られては困ると弁解した。むしろ、あのらんまが自ら進んで、こんな『F系ゲームのビキニアーマー』を着てくれるなんて、願ったり叶ったりだ。

「あ、いやいや、そのままでいい。むしろ、そのビキニアーマーすごく良い!」


 らんまと揃ったところで朝食を取り始めた。パンと野菜が細かく刻まれたスープだけという簡易的な朝食を取る。ビキニアーマー姿のらんまは、今日も食欲旺盛でパンを頬張れば、おかわりをした。よくも、こんな細い身体に入るものだと感心する。あれだけ食っているのにウエストはくびれている。ヒップは可愛らしい感じで、それにらんまのおっぱいはすごく大きい。カップでいえば、Hカップくらいあるかもしれない……。

 らんまの姿に見とれていると。

「な〜に、さっきからジロジロ見てんだよ? わかった。そんなにオレのこの格好が魅力的すぎるんだな。美しいって罪よね〜、おほほほー♪」

 高笑いするらんま、そりゃ、見惚れているのは間違いないけど、こっちも悪態のひとつでも返さねばとオレも揶揄する。

「良かったな、ここが異世界で。元の世界でそんな事言ったら、ヤカンの湯をぶっかけて男に戻しちまうぞ?そのビキニアーマー姿で」
「ばか! 達也。んなこと、したら、許さねえからな。でも、男の姿が恋しいぜ......」
「そんな格好しておいて、よく言うよ、らんま。」

 食事を終えたオレたちは宿屋を出発し、街に繰り出した。この街に滞在して一週間程度のオレたちは、まだ街の新参者だ。街の男どもらが、らんまを見ながら、こそこそと会話をしている。この世界じゃ、ビキニアーマーを着た女戦士は珍しくもないが、らんまほどのスタイルを持った若い娘は、やはり希で、噂されているのであろう。しかし、そんなように注目を浴びながらも、堂々と街を歩くらんま。オレのほうはいうと水色の服に青いマントが付いた旅人の服を着ている。いつも、らんまと一緒に行動しているから、カップルと思われたら、少し嬉しい。

「さてと、らんま、今日はどうしようか?」

 オレとらんまの異世界冒険が今日も始まった。

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