中小企業経営のための情報発信ブログ29:心理的安定性

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は「心理的安定性」「心理的安定性が高い職場」について書きます。
心理的安定性」とは、サイコロジカル・セーフティ(psycological safety)を日本語に訳した言葉で、「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰を与えるようなことをしないという確信を持っている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」のことです。これは、心理的安定性の提唱者であるハーバード大学エドモンドソン教授(組織行動学専門)の定義です。簡単に言えば、上司や同僚の反応を恥ずかしがったり怖がったりすることなく、自然体で自分を隠すことなくすべてをオープンにできる状態のことで、そのような穏やかな雰囲気がある職場は「心理的安定性」が高いと言えるのです。
「心理的安定性」が企業で注目されるようになったのは、グーグルが、大規模な労働改革プロジェクトを実施し、その結果「心理的安定性がチームの生産性を高める重要な要素である」と発表したからです。この発表により、世界中に「心理的安定性」という言葉が広がりました。
1.コミュニケーションの重要性
 職場・仕事の場面だけでなく、「あの時、もっと確認しておけばよかった」「連絡しておけばよかった」と後悔することがあります。あとで後悔するくらいなら、なぜ先にやらないのか?ということですが、これは単純に「面倒だったから」です。
 自分や相手の時間、そのお互いの時間を調整すること、話をする場所の確保、話すことに使うエネルギー、これらはいずれも面倒な負担になるのです。気心が知れず話しにくい相手や厄介な内容のクレーム、良く分からない内容の指示、繁忙期となれば、さらに負担がかさみます。いちいちコミュニケーションをとってやるくらいなら自分でやった方が早いということになります。
 風通しの悪い組織・職場では、階層が大きな障壁になり、地位とそれに伴うパワーが付与されているため話にくさが生まれます。だからと言って組織である以上、階層を取り除くことはできません。
 ここで重要なのがコミュニケーションです。
 以前にも言っていますが、コミュニケーションは人と人との関係、より良い人間関係、信頼関係を構築するものです。そしてコミュニケーションは「言葉と思いのキャッチボール」です。このキャッチボールがスムーズに行われている職場は心理的安定性が高い「風通しの良い職場」になるのです。
 風通しの良い職場の多くでは、上司による「朝の声かけ」が行われているというデータがあります。
 上司が社員一人ひとりに声かけしている職場ではメンタルの不調を訴える社員が少なく、職場でのミスや事故も少ないのです。上司による朝の声かけが、社員一人ひとりの健康を維持し、ひいては事故防止にも一役買っているということです。
2.メンタルヘルスが職場の生産性を左右する
 メンタルヘルス不調によってもたらされる経済的損失は約1.7兆円にもなるというデータがあります。メンタルヘルスは職場の生産性に大きな影響を与えるものなのです。
 先ほどの朝の声かけは、地道な取り組みですが、組織への貢献は大きいものです。上司から声をかけられて嫌な思いをする社員はいないはずですし、社員のモチベーション、エンゲージメントの向上にもつながります。声かけすることで、上司は部下の表情や声色、姿勢の特徴を知り、その変化で体調やメンタル面の変化に気づきやすくなり、早い段階で対処できるようにもなるのです。
 上司が率先して朝の声掛け・挨拶をしている企業では、従業員同士もお互いに挨拶をするようになり、心理的安定性がさらに高まります。
3.朝の声かけ・挨拶の3つの機能
 調子の悪い職場では挨拶をしないので雰囲気が澱んできます。雰囲気が澱んでくると挨拶しにくくなります。この悪循環に陥り、ますます雰囲気が悪くなるのです。
 朝の声かけ・簡単な挨拶には、組織を安定させる重要な3つの機能がありと言われています。
 Ⅰ:コミュニケーション開始の機能・・・朝一番の挨拶が、今日1日何が待ち構えているんだろう、大きなミスをすることなく過ごせるだろうかといった不安や警戒心を緩和してくれます。
 Ⅱ:友好の証を示す機能・・・挨拶は声を掛けてくれた相手とつながっているという感覚を与えてくれます。チームに受け入れられていることを感じさせてくれる瞬間なのです。これによって人との距離が縮まるのです。
 Ⅲ:それぞれの立場と互いに尊敬しあえる関係であることを確かめる機能
・・・相手の立場や関係性を経験的に知っているので、相手によって挨拶の仕方を変えているはずです。これがよりよい人間関係、信頼関係を築く基礎になるのです。
 先ほども書きましたが、心理的安定性が高い職場では、挨拶、特に朝の声掛けが行われています。
 皆さんも、朝の声かけ、簡単な挨拶を心がけてください。職場だけでなく、家庭でも学校でも、効果抜群です。
4.心理的安定性が低いと起こる問題行動
 心理的安定性が低い職場では、多くの従業員が自己印象操作を行い、本当の自分を偽って働いていると言われています。
 エドモンドソン教授によれば、「心理的安定性」が低いと起こる4つの行動特徴があります。
 Ⅰ:無知だと思われる不安・・・「こんなことも知らないのか」と思われるのが不安で、上司や同僚に必要な質問や相談ができなくなり、従業員同士のコミュニケーションも減少します。
 Ⅱ:無能だと思われる不安・・・「こんなこともできないのか」と思われないか不安になり、ミスを報告しなかったり、自分の失敗を認めなかったりするようになります。
 Ⅲ:邪魔をしていると思われる不安・・・自分の発言が議論を長引かせたり本題から外れたりして「邪魔しているのではないか」と不安になり、自分から発言や提案をしなくなります。新たなアイデアやイノベーションが生まれにくくなります。
 Ⅳ:ネガティブに思われる不安・・・「いつも他人の意見を否定している」と思われないか不安になり、発言をためらったり、本当に重要なことを指摘しなくなります。常に自分を隠して仕事をするようになります。
5.心理的安定性の高い職場をつくるメリット
 先ほども書きましたが、グーグルは「心理的安定性がチームの生産性を高める重要な要素である」と発表しました。グーグルは、心理的安定性の高さが職場にどのような効果をもたらすのかについて、4つのメリットがあるとしています。
 Ⅰ:情報やアイデアの共有が盛んになる・・・発言が否定されるという不安がないので、個人の意見やアイデアが多く集まり、職場のコミュニケーションも増え、従業員間での共有もされやすくなります。
 Ⅱ:ポテンシャルの向上・・・お互いを認め合い、尊重し合うという価値観の共有が職場に広がり、従業員が切磋琢磨するようになります。自発的な学習で、従業員のポテンシャルも高まります。
 Ⅲ:目指すビジョンが明確になる・・・自由で建設的な議論により目指すビジョンが明確になり、腹落ちしたビジョンを共有し全員が一致団結して同じ目標に向かうことができるようになります。
 Ⅳ:エンゲージメントの向上・・・仕事へのやりがいが生まれ、今の会社で長く働きたいと思うようになり、離職率も低下します。
「心理的安定性」が高い職場は、従業員一人ひとりが安心して自分の考えを自由に発言したり、行動を起こせるので、イノベーションが生まれたり、従業員のエンゲージメントが高まり、チームのモチベーションも高まったりなど、組織において多くのメリットを生み出します。また従業員個人においても、パフォーマンスの向上、ストレス緩和など、スキルとメンタルの両面でメリットが生まれます。
今後、「心理的安定性」の高さを意識した職場作りがますます必要になって来るように思います。そのスタートは、朝の声かけ、簡単な挨拶からです。難しく考える必要はありません。
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