【第2回|デザイン思考を学ぶ】デザイン思考のプロセス①共感

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ビジネス・マーケティング
第2回目はデザイン思考の5つのプロセスのうち、1つ目の「共感(Empathize)」について説明します。

1. 共感(Empathize)の概要

1-1. 共感とは何か?

デザイン思考は常に人間中心を原則として思考していく。消費者はどのような状況で、どういったジョブを持ち、その達成に向けてどういった問題があるのか、それを解決する体験はどのようなものか、その体験を実現する施策は何があるか、といった具合である。
そのために、自分の頭の中を顧客の頭の中に限りなく近づけていく必要があり、その行為が「共感」である。共感プロセスでは、「観察する・体験する・インタビューする」を複数回繰り返すことで、徐々に顧客への共感水準を高めながら観察対象者のジョブを探索していく。なお、ジョブを探索する際は下記観点に留意する(ジョブ理論)。

1. 身近な生活の中
2. 無消費に眠る機会(ジョブを満たす解決策を見いだせず何も雇用しない)
3. 間に合わせの対処策
4. できれば避けたいこと
5. 意外な使われ方
共感3要素.png

1-2. 共感プロセスで用いる調査方法(例)

①エスノグラフィー

エスノグラフィーとは、自らを観察対象者と同じ環境に置き時間を共有することで観察対象者と同じ水準の感覚を獲得する調査手法である。エスノグラフィーは5つの手順で行う(ビジネスのためのデザイン思考)。

1. 適切な課題設定を行い、観察者自身が調査対象の社会や集団に参加する
2. 集団との媒介約になってくれる人(対象集団内の情報提供者)との人間関係を構築する(ラポール形成)
3. 五感を駆使して体験することによって暗黙知を獲得し情報を集める
4. 現場で観察し、フィールドノートを記述、あるいはインタビューを口述(記録)する
 ※フィールドノート:時系列で、出来事の背景や詳細を含め、物語的に記述する
5. 観察を経て現場からの仮説形成を進めるにつれ、問題あるいは理解を徐々に構造化していく

ただし、実際のビジネスでは、プロジェクトの予算や期間などの制約によりエスノグラフィーを十分に行うことができないケースも存分にあり得る。

②デプスインタビュー

デプスインタビューとは、観察対象者と観察者による1対1の面談式で実施する調査方法である。デプスインタビューの特徴としては、1人の観察対象者に集中できるため、消費者行動の深堀りが可能であることが挙げられる。特に新たなサービスに結びつく顧客の課題を発見するためには「エクストリーム・ユーザ」へのアプローチが効果的である。エクストリーム・ユーザに顕在化した問題は、メインストリーム・ユーザ(平均的なユーザ)の潜在的な問題にもつながることが分かっている。
※エクストリーム・ユーザとは、極端な行動パターン、問題意識やこだわり、環境を持った人たちを指す

③ソーシャルリスニング

TwitterなどSNS上で交わされるユーザーの自然な会話を収集・分析する調査方法である。簡単に費用も掛けずに行えるため初期の仮説構築などに利用するのが一般的でる。

2. 共感プロセスで使用するツール(例)紹介

2-1. フィールドノート

エスノグラフィーで使用するノート。出来事の背景や詳細を含め、時系列で物語的に記述していく。はじめは全てのことを事細かに記載していく。時間の経過に伴い、観察対象者の価値観、文化、行動などが把握できるようになってくる。その後、エクストリーム・ユーザなどに特化し観察、記述していく。

2-2. 観察ワークシート

インタビュー時に使用するツール。感情曲線に加えて観察対象者の経験を事前に整理するためのツールが、観察ワークシートである。観察対象者の頭の中を整理し、観察者の負担を軽減する(デザイン思考)
また、感情曲線(3ページ目)は①観察者がインタビュー前に実際に経験してみて書いておく、もしくは②対象者に事前に記載してもらうようにする。
観察ワークシート.png

観察ワークシート例(デザイン思考を基に作成)

2-3. 共感マップ

観察対象者の行動(言動)から成し遂げたいジョブまでを整理するツール。
step①:観察対象者の言動を記載していく
step②:言動につながる入力情報である五感を推測で記載していく(どういった体感によって観察者はその言動を行ったのか)
step③:入力情報の解釈を推測で記載していく(五感を通じて感じた知覚に対してどのように感じ(Feel)、どのように考えたか(Think))
step④:観察対象者が成し遂げたかったジョブを推測する(本来のジョブについては観察対象者自身が自覚していないことさえある)
共感マップ.png

共感マップ(出所:デザイン思考)

3. 引用

紺野登著『ビジネスのためのデザイン思考』
廣田章光『デザイン思考』
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