最近、「アート引越センター」での集団イジメが報道され、話題になっています。
これは、運搬トラックの中で全裸の男性社員を荷物を固定する用のゴムで縛りつけ、引っ張ったゴムを同僚が男性めがけて弾く様子を笑いながら撮影するといった本当に悪質なものでした。
しかも、こういったことは過去にもあったとのことです。
たとえば、「昨年11月、『アート引越センター』のアルバイトと社員の計4人が強制わいせつ致傷の疑いで逮捕されました。同僚のたまり場となっていたアルバイトが住むマンションの一室で、複数人で1人の男性社員をパンツ一枚にさせ、女性社員が来たところでパンツも破って脱がせ、頭部や腹部に暴行を加えたのです。容疑者らはその一部始終を携帯で撮影していました」といったことが報告されています。
ところで、こうした「職場いじめ」はそれほど珍しいことではありません。
厚生労働省の統計によると、職場でいじめに遭っているという相談は、ここ10年で2倍に増加しています。
では、職場いじめは、なぜこのように増加・深刻化しているのでしょうか。
「職場いじめは昔からあった」という意見もあるでしょう。上司による行き過ぎた「指導」、ベテラン従業員による新人いじり、社内の「派閥争い」、出世する同僚に対する嫉妬、他人への配慮に欠けた「問題社員」の行為などを挙げる声もあるでしょう。こうした労働相談は、今もなくなったわけではありません。
しかし、近年見られる職場いじめには、これまでとは異なる傾向があります。ここでは、最近の職場いじめに共通する特徴や背景を指摘していきたいと思います。
まず、第一の特徴は、「過酷な労働環境」です。
それを示唆するのが、2021年4月に公表された厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(2020年10月に実施)です。この調査では、現在の職場でパワーハラスメントが起きている労働者に、職場で起きているハラスメント以外の問題について質問しています。
一番多く挙げられたのは「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」で37.3%でした。過去3年間にパワハラを経験していない人で、同じ回答をしたのは15.1%と、2倍以上の開きがあります。ただし、コミュニケーションがないこと自体がハラスメント行為であったり、ハラスメント行為の結果であったりするケースも多く含まれていると思われます。
目を引くのは、2番目に多かった「残業が多い/休暇を取りづらい」が、パワハラが起きている職場の労働者の30.7%から回答されていることです。一方で、過去3年間にパワハラを経験しなかった人のうち、その職場で「残業が多い/休暇を取りづらい」と答えた割合は13.4%にとどまりました。やはり2倍以上の差があるのです。
もちろん、ハラスメント行為そのものや、その行為の影響によって、残業が多くなったり、休暇が取りづらくなっていることもあるでしょう。しかし、少なからぬハラスメントの背後に、長時間労働に象徴される過酷な労働環境が横たわっていることを窺わせます。
では、こうした職場いじめをなくすためにはどうすればいいのでしょう。
以下のようなアプローチが考えられます。
1. 教育と意識啓発: 職場いじめの問題についての啓発活動やトレーニングプログラムを実施し、従業員に対していじめの深刻さや影響を理解させる必要があります。また、適切なコミュニケーションスキルや共同作業の重要性を教えることも重要です。
2. 厳格なポリシーやガイドラインの策定: 職場いじめを明確に禁止するポリシーやガイドラインを策定し、全ての従業員に周知徹底させる必要があります。違反行為に対する厳正な対応策や報告手続きも整備し、被害者が安心して相談できる環境を整えることが重要です。
3. リーダーシップとモデル行動: 上司や経営陣が職場いじめを容認せず、モデル行動を示すことが重要です。適正な指導とコミュニケーションを行い、従業員の尊重とチームワークを促進することで、職場いじめの発生を防ぐことができます。
4. 監視と報告メカニズムの確立: 監視システムや匿名の報告メカニズムを設けることで、職場いじめの早期発見と適切な対応が可能となります。従業員が報告しやすい環境を整え、報告者への報復を防ぐことも重要です。
5. 組織文化の見直し: 職場いじめを容認するような組織文化や価値観を見直し、共同作業と協力を重視する文化を醸成する必要があります。信頼と尊重を基盤とした職場環境を作り上げることが大切です。
6. 適切な対応と支援の提供: 被害者や関与者に対して適切な支援を提供することが重要です。労働相談窓口やカウンセリングサービスの提供、紛争解決手法の活用など、適切な対応策を講じることで、被害者の支援と再発防止に努めることが必要です。
これらのアプローチでは、組織全体での取り組みが求められます。職場いじめをなくすためには、徹底した予防と対応策の実施、組織文化の変革が必要です。
では