昭和の香りが残るパチンコ屋 店員編2

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マネー・副業
 前回書いた元ホテルの支配人夫婦を山田さん、元ボーリング場支配人を伊藤さんとする。
 山田さん夫婦がきたころは、伊藤さんが着任してからすでに一年ほど経っていた。伊藤さんは、その仕事ぶりに関してだけは信頼を得ており、バイト連中(近隣に一流と言っていい大学が在りバイトの殆どがそこの学生で社員より優秀だったかも?)からも絶大な人気だった。しかし何かことがあると事情を知る我々からはやはり疑いの目を向けられる。
一度だけは、こいつで間違いないという限りなく確信に近い件があったのだがそれ以外は誤解だった。本人にしてみれば針のむしろだっただろう。
 そんな伊藤さんにとって山田さん夫婦の存在は大きかったと思う。何故なら皆のヘイトがほぼ全て山田さん夫婦に向けられたからだ。この夫婦とにかくプライドが高い。しかも上からの態度が身に沁みちゃってる。本人たちがそのつもり無くても要所要所で自然と出てくるから鼻につく。しばらくはしっちゃかめっちゃかでトラブル続き、どうやら自分たちが絶対にクビに成らない事まで計算してる。それに気づいた時は流石に途方に暮れた。相手は相当なやり手、しかも私から見たら親くらいの年齢。この夫婦に比べれば伊藤さんなんて簡単だった。同年代でしかも謙虚。腹のなかまでは分からないが表面には出さない。
 山田さん夫婦に対して、その重ねてきた年齢と経験を尊重するとして、仕事に関しては伝えるべきことは伝える、言うべきことは言うという態度で接した。特にプライドを傷つけない様に細心の注意を払った。時間が解決じないものはないとはよく言ったもので、段々打ち解けていった。伊藤さん同様腹のなかまでは分からないが・・・
 それでも奥さんの方は女性同士の関係で最後まで苦しんでいた様に思う。それは男同士、男と女の関係とは質の違うものに感じて、当時の私にはとても首を突っ込むことが出来なかった。実際数年後同じようなケースに足を踏み入れて自分の無力さを知る。
 二年半程だったか、山田さん夫婦は無事借金を完済した。夫婦二人掛りなので早い。確か月に五十万円以上のペースだったと思う。従業員の中でも確かな地位を確立した夫婦はこのままここで働きたいと強く要望した。居心地もいいだろうし、年齢的に再就職も難しいだろう。何より給料がいい。家賃はタダ、食事は賄い二食つき、光熱費タダ、これからは五十万円以上の現金が残る。会社の答えは・・・勿論NO。裸騒然で放り出された。
 その末路を目の当たりにして一人残された伊藤さんは、何を思ったのだろう?伊藤さんの試練はまだまだ続く。


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