〜これは、私ではない「誰か」の今日を綴ったストーリー短歌です〜
この4月、転勤のため、家族とともにこの自然豊かな町に越してきた。
結婚して4年間は東京の狭い中古マンションに二人で暮らし、自由気ままな共働き夫婦だった。
今回の転勤で、妻は8年務めた出版会社を退職し、僕についてきてくれた。
それと同時に、妻のお腹に、二人の初めてとなる赤ちゃんを授かった。
ライバルだった同期の内山は、この春、東京支店で営業一課長に昇格。
それに比べて、僕はこんないなか町に転勤だ。
妻というパートーナーと、お腹の赤ちゃんがいなければ、とうに腐っていただろう。
そう、僕には守るべき家族がある。
妻は、今回の転勤を喜んでいるようだ。
出世コースから外れてしまったけれど、それでもいいと言ってくれた。
妻の両親も、僕の両親も、子育てをするなら、東京なんかより、自然に恵まれた土地がいいと言って喜んでくれた。
生まれてくる子どものために、ゆっくり生活を楽しむなんてことも、いいのかもしれない。
ひょっとしたら、すごい贅沢な時間をもらえたのかもしれない。
この町に来てから、妻がお弁当を作ってくれるようになった。
もともと料理が好きな妻だけど、これまでは時間をかけて凝った料理を作る時間を持てなかっただろう。
朝からキッチンに立って、朝ごはんとお弁当を作ってくれる妻は、忙しそうではあるけれど、楽しそうにも見える。
僕もこの町で、妻と赤ちゃんと、そして同じ支店で働くみんなのために、いい仕事をしようと思う。
そんな僕の今日の短歌