〜これは、私ではない「誰か」の今日を綴ったストーリー短歌です〜
ずっとサッカーをやってきた。
だから高校を選ぶときも高校サッカーの強豪校に頑張って入った。
3年の先輩が抜けたあとを、俺たち2年生が引っ張って、今年こそ全国のトップに立ってやろう!と気合が入ってる。
・・・ってのは、レギュラーの奴らの話だ。
サッカーを始めたのは小学生の頃。人より体が大きかった俺にとって、戦う相手は幼稚園生のように小さく思え、走れば誰より早かったし、ドリブルを奪われることもなかった。
「ユウタくんすごいね!将来はJリーガーじゃない?」
母親たちは俺のことをそんなふうに噂してた。
俺も、「オレって天才!」だと思ってた。
そんな小学生だった。
でも、中学生になると様子は変わった。
今まで俺のあごくらいの身長のヤツが、どんどん俺より大きくなっていった。
気づけば俺はクラスでも並。
勉強も、サッカーも。
それでも人一倍努力して、中2でレギュラーを奪い返し、中3ではその努力を買われてキャプテンにもなった。
失いかけていた自信を、少しずつ取り戻していったんだ。
そして、手にした高校サッカー強豪校への入学切符。
じつは、俺以上に喜んだのは母親だった。
今日も朝練のため5時に起きて、6時の電車に滑り込む。
朝からサッカーをやれば当然昼前に腹はペコペコ。
母親が作ってくれる弁当は2つ。
朝練終わりに食べるやつと、昼に食べるやつ。
正直、高校ではレギュラーになれるかどうか分からない。
もちろん努力はしてるけど、それ以上にセンスや能力の高い奴らばかりが集まる高校だ。簡単なわけじゃない。
それを知ってか、母親の作る弁当はいつもコッテリ焼肉弁当や唐揚げ弁当。
これって普通の家庭の夕ご飯のやつじゃね?
こんなのを、朝6時に出ていく俺のために2つも作ってくれてるってわけだ。
「ありがたい」をはるかに通り過ぎて「重い」
実際の重さもそうだけど、思いが重い。
でもさ、その重い思いに応えたいって思ってる、いい子の俺もいる。
だから今日も眠たい目をこすって、朝6時の電車に駆け込んでるんだよな。
よっしゃ!
グタグタ言わず、やることやるか!
そんな俺の今日の短歌