II. 人的資本情報の開示
(1) 人的資本情報の重要度の高まり
企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、自社の人材や人材戦略が、どのように経営戦略の実現や持続的な企業価値の向上につながるのかについて、企業と投資家が対話を進めることの重要度が高まっている。2021 年 6 月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいても、人的資本への投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識した、わかりやすく具体的な情報開示が求められている。
また、ESG の観点から、労働安全や従業員の健康、賃金の公正性、ダイバーシティといった人的資本に関連する論点について、より高い水準での達成を求める投資家や消費者からの声は高まりをみせている。加えて、ブランド価値やサプライチェーンのリスクマネジメントの観点からも、情報の重要度が高まっている。企業もこのような動きを受け、ESG 活動の主要なテーマとして人的資本に関連するトピックを挙げる割合が増加傾向にある。
(2) 海外における人的資本情報の開示をめぐる議論
① 米国証券取引委員会による Regulation S-K の改定
② 英国財務報告評議会による人的資本に関する報告書の公表
研究会における議論
人的資本の開示の論点は大きく「価値向上」の視点と、「リスクマネジメント」の視点から整理することができる。具体的には、経営戦略の実現を支える人的資本の価値を最大化する取組を通じて、中長期的な企業価値の向上を目指し、投資家からの評価につなげる「価値向上」のための開示と、人的資本にかかる公平性・公正性確保のための取組を開示することで、投資家からのリスクアセスメントニーズに応えていく「リスクマネジメント」のための開示の 2 つに整理される。
育成
・リーダーシップ
・育成
・スキル/経験
エンゲージメント
流動性
・採用
・維持
・サクセッション
ダイバーシティ
・ダイバーシティ
・非差別
・育児休暇
健康・安全
・安全
・身体的健康
・精神的健康
労働慣行
・労働慣行
・児童労働/強制労働
・賃金の公正性
・福利厚生
・組合との関係
コンプライアンス/倫理