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これは世界で一番美しい場所、ローフォーテン諸島(ノルウェー北西部)を私がヒッチハイクで旅して回った時の記録。
第0話はこちら
(前回のあらすじ)
アナ雪のモデルになった場所、レイネに到着した。
レイネ
レイネ村、あるいはレーヌ村。人口400人に満たない素朴で美しい島。
到着してまず、「とんでもない所に来たかもしれない。」と思った。民家はちらほらといくつか見えるだけで、後は一面緑の原っぱ。同じ村でもヘニングスヴァール村は住居が密集していて多少の活気と人の気配があったが、レイネは自然の割合が多い上に多くの家が海辺に面しているので村を歩いていても人の気配がほとんどしない。
「自然に許されて人間が何とか住まわせてもらっている」という感じが強い村だった。
村の中でアレンデール(アナ雪で出てくる都市)っぽさを探す。
が、ここがアナ雪のモデル?と思うほどぱっと見てもアナ雪っぽさがない。
そういえば事前にアレックスから見せてもらった写真は村を一望した時の遠景だった。後で展望台に行ってみよう。その前に腹ごしらえだと思った。
レストランをやっているホテルが島内で唯一に近いご飯屋だったので、そこで昼食にする。時刻は13時40分。
ここ2日のペースから、スボルベルからの距離的に17時までに到着できたら十分だと思っていたのだがかなり早く到着できたのは帰省中のフレデリックさんに拾っていただいたおかげだ。
特産の干しタラで作ったフィッシュスープを注文する。値段の割に量は少なめだったが、冷えた身体を温めるのには十分だった。魚の風味と、バターだろうか。コクのある味が染みる。
食後スタッフさんと話していて、私がこれからレイネを一望できる展望台があるレイネブリンゲン山に登ると言うと、荷物を置いて行っていいよと言ってくださった。
お言葉に甘えて、カメラなどが入った貴重品バッグだけの身軽な格好になってレストランを後にする。
レイネブリンゲン
村を出て登山口に向かう途中、きつすぎて登山をギブアップしたと言うおじさんと、登頂は出来たけれどめちゃくちゃハードだったと言う白人カップルに会った。どんな登山でも大丈夫なように一応トレッキングシューズを履いてきたけど、大丈夫かなと心配になる。
レイネブリンゲン山は、ちゃんと登山口が整備されているわけではなかった。カップルから聞いた情報と足跡を頼りに進んでいく。間違った足跡を追って行き止まりにぶつかることもあり、まるで迷路だった。
しかも登山道?はローフォーテンらしい、急に切り立った崖道。一歩一歩進むたび膝の高さまで足を持ち上げさせられる。おまけに夜が冷えたためにできた霜が溶けたのか、雨が降っていたのか分からないが足元はドロドロ。重たい土の塊が足に絡みつく。慣れない動きをするので徐々に足首も腰も痛くなってきた。
「君がトレッキングに自信があるなら行くといいよ。」なんてアレックス、言ってたっけな。。。
晴れているので気温は高い。すっかり汗だく。なのに道は中途半端に木が生えているので、その日差しで泥が乾くことはないという極悪コンボ。
おじさんがリタイアした気持ちがすごく分かった。
15時45分。はあはあと息を荒げつつもようやく崖を登り切った。
レイネを一望する。
。。。アナ雪?
後で確認したところ。どうやら雪景色になると曇り空を映して海も銀色になってアナ雪らしさが出てくるらしい。(ぜひ「レイネ 雪景色」で検索してみてください。)
それにしても、ローフォーテンの山々はワニガメの背中みたい。
西の果てに向けて
レイネの予定が意外と早く終わったので、このままオー(Å)というローフォーテンの西端の町に寄って今晩はアレックスおすすめの「ホビットハウス」で泊まることにした。
そうと決めたので下山する。2回も滑ってしまった。
あらためて、身体が動くうちに旅するって大事だと身にしみた。
荷物を回収しにレイネに戻る途中、レイネを一望できるスポットを見つけた。
頭の中で雪景色を想像。うん。アナ雪っぽいかも。
山に囲まれ、海に面したアレンデールがうっすらと見える気がする。ここはまた冬にリベンジしたいと思った。その時はきっと、レイネに泊まってゆっくりしよう。
さて、荷物を取りに戻りトイレと水分補給を済ませてヒッチハイクを再開した私は、ローフォーテンでヒッチハイクする辛さを思い出していた。車が来ないのだ。
たまたま今朝はスボルベルからレイネまで運良くスムーズにヒッチハイクできたので、「意外と西方向に向かうの余裕やん。」と勘違いしていたようだ。
しばらく車を待っていたが来ないか、来ても素通りするだけ。通過する車の多くがキャンピングカーだった。きっと今晩キャンプする場所に向かうカップルかグループなのだろう。外から見ても荷物でいっぱいで、とても新たに人を乗せる余裕はなさそうだ。
小一時間ほどそうしているうちに、ナルヴィク発オー行きのバスが目の前を通って、少し先で止まった。このバスは、私がヒッチハイクに失敗したときに乗ろうとしていたバスだ、と思う。特に目印は見当たらないが、そこが停留所らしい。ナルヴィクを出発して3日目にして、ようやく出会えた。
トレッキング後で疲れていたし、小一時間待っているし、このバスに乗りたいという甘い誘惑が私の中でむくむくと湧き上がるのを感じる。
でも、ここまでずっとヒッチハイクで来たのに、たった一度の楽したいと言う気持ちでヒッチハイク旅を台無しにしていいのか?と思う自分もいた。
レイネからオーまでは9kmほどなので、最悪ヒッチハイクできなくても歩けないことはないが、歩くと1時間半はかかる。20kgの荷物を背負った状態でレイネブリンゲンで既に十分痛めつけられた足で歩くなら、2時間はかかるだろう。
少しくらい身体をいたわってもいいのでは。。
…悩んだ結果、私はバスを見送ることにした。
追加の乗客がいないことを確認したバスは、オーに向けて去っていく。
結局その後も車は止まらなかった。
でも、自分の選択に後悔はない。だって弱い自分に負けなかったから。ヒッチハイクでお別れを言う度に、みんなからもらったこれまでの「グッドラック!」という応援を裏切らなかったから。
トレッキング後で足は重く、痛いけれど。もう見えなくなったバスの背中を追いかけるように、オーに向かう次のヒッチハイクスポットを探すため私は歩き出した。
次回。
ホビットハウスに泊まる。
お楽しみに!
*更新は毎週日曜日です。