買い物依存症の直し方③

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コラム
元カレと同棲して2年目のとき、電車で30分程度なこともあり、マザコンな私は毎月実家に帰っていた。

私は断捨離にドはまりしているときだったが、母にシャネルの小物入れを貰った。
そのシャネルの小物入れは20年もタンスに入れっぱなしだったため中の合皮がドロドロに溶けていたので、しばらくしてゴミに出した。

私は分かりやすいロゴの入っているブランドが昔から好きではない。皮肉屋な私は、みんながこぞって持ちたがるヴィトンやシャネルが苦手だ。だからいらないと言っても母は強く持ち帰るように言った。

その後も家に行くたびに大量の真珠のネックレスやブランド物のローヒールのカビの生えた革靴を貰った。
真珠のネックレスは後々お直しに出すので大事に取ってあるが、趣味でない革靴は当然のように捨てた。

母は、物をたくさん持っている。

だが昔の母はなんでも捨てていた。
私たちの学年が上がるとすぐに教科書を捨て、私たちが図工で書いた絵も持ち帰った瞬間処分していた。母が父に学生時代に書いたラブレターや父の吹奏楽部時代のフルートも勝手に処分していた。
人の物も勝手に捨てるほど徹底して物を持ちたくない人だったのだ。

また私が幼いころは貧乏だったため、3人兄弟の末っ子の私は姉兄のおさがりばかりで生活をしていた。
私の洋服は色あせ、おもちゃは薄汚れ、自転車はサドルがすり切れ中のスポンジが見えていたのでレジ袋でくるんでいた。
そんな生活だったもんだから、清貧を心がけているのだろうと子供ながらに自分を納得させようとした。

そんな母が、あるときから大量に物を収集するようになった。

一番初めは我が家が金持ちの仲間入りをしたとき。

たった3年だが、我が家は日本屈指の金持ちエリアに住んだときがある。
そのとき、母は大量にブランド物とアンティーク食器初期を買い漁った。

その後一転して再び貧乏になったとき、ブランド物も食器も売らずタンスや食器棚にしまい続けることになる。

二回目は母が我が家が借金まみれになり自己破産後に、古食器を安値で買い漁るようになったのだ。

古食器を買った後の母はとてもいい顔をする。
そんな母の顔を見るのが嬉しいし、実は私も母の影響で食器好きなので、そのお披露目を楽しみにもしていた。

だが度が過ぎる。

私たち兄弟が全員実家を離れたとき、両親は夫婦二人で済むために狭い家に引越した時に、引越し業者に「食器の量が飲食店と変わらない」と言われた。
これについては仕方ないかなとも思う。

祖父は食器道楽でもあったが、祖父の家が温泉宿だったので母の実家には本当にすごい量の食器があったのだ。
母にとっては季節や食べ物によって食器を変えるのは当たり前で、母にとって見たら祖父の家の半分も食器もないのだ。母は、普通の家がどれだけの食器の量で過ごしているのかを知らない。

一般家庭よりも食器の量が多いと知っても母は古食器を集める。
トイレで有名なTOTOの「東洋陶器」の頃の湯飲み茶わんとか、明治時代の小皿とか。
これがまあ可愛いのだ。

使えばいいのだけれど、日常的に使うのはいつも同じ食器。

本を800冊所蔵して1割も読んでいない私が言うのもなんだけど、使わないなら買わなければいいのに、と思う。

私が本を買ってしまうのは、人とコミュニケーションを取りたいことと、心を軽くしたいことが本当の望みだったが、古食器を大量に買い、使わないブランド物をしまい続ける母の心の問題は何なのだろうか。

ここからは私の推測に過ぎないが、使用しないブランド物を捨てられないのはお金持ちエリアに住んでいたこと過去の栄光を忘れられないのではないか。
また古食器を買い漁るのは、祖父母の恋しさと、・・・多分もう一つ。
金持ちエリアに住む前に5年同居した義母との生活が上手くいかず施設に預けてすぐに亡くなったことを後悔しているのではないだろうか。

私の推測は間違ってるかもしれないが、確実に言えることは母は今を生きていない、過去を生きているということだ。

過去の栄光に執着したり後悔を引きずっているから回顧するために物を集める。

だが物を手に入れても心が満たされないから、「もっともっと」と物を集め続けてしまう。

もちろん、ブランド物や古食器を手元に置き続けることが母の望みなら私にそれを辞めさせる権利などない。

だが過去を手放し、自分の身の回りにある物とも別れを告げないと苦しいままだ。

物を増やすということは、過去の自分からのSOSの側面がある。
胸の中にいる過去の自分が、まるで怨霊のように苦しみから救って欲しいと、目に見える形で現在の自分に助けを求めている。
だとしたら不要なものを買ったときに「また買ってしまった。どうして自分には物欲を抑えることができないのか」と自分を責めるのはお門違いだろう。

不要なものを買ってしまった時に、じっくり買ったものを眺める。そして購入した自分を誉めるのだ。今日もいいものを買えた。買ったお陰で心が晴れたと。
そして俯瞰して考える。なぜこれが欲しかったのだろう。これを買うことで何を満たしたかったのかを自分の心に問うのだ。そしてその気持ちがどんなものであれ寄り添う。
そうやって過去の自分を除霊してあげなければいつまでたっても恨めしいと言って離れてくれないのだ。




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