好きなことを仕事にしたら。 ~良いことも悪いことも~

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 続けられる職業として、オートバイ整備士か、調理師か、その当時興味のあった二者から選ぶことにし、調理師免許を取得。調理師を職業として選びました。以降、業態、所属会社を数回変えましたが、飲食業界から長期間離れることはありませんでした。長続きしたのは、好きなことを仕事にして正解だったから・・・。と言いたいところですが、迷走につぐ迷走、本当にこの選択は正しかったのか?と自問自答しながら、ここまで来てしまった、というのが本心です。それはやはり、仕事は経済活動であり、社会の仕組みに組み込まれ、その中で自分の好きなことを思うままにしようというのは、なかなか難しく、好きなことを仕事にしたから楽しいことだらけ、とはいかないからかもしれません。
 調理師に限らず、どの職業でも同じだと思いますが、最初に職場に配属されれば、その業界のルールを教えられ、仕事に関する雑用を任され、比較的責任の重くない、ゆえに仕事の核心とは遠いところの作業を任せられます。飲食業で言えば、調理器具の管理、清掃等衛生面の管理。そこから料理の盛り付け、食材の管理、仕込み作業、と徐々に調理の作業に近づいていくのですが、実際にその立場に立つと、それらの作業は地味に見えて、面白みを感じることは少ないと思います。「調理を仕事としているのに、なんで毎日掃除や鍋磨きなの?」と感じ、「つまんない職業(もしくは職場)。こんなのやる意味があるのか?」と思うかもしれません。料理長や先輩調理師が料理している華やかな場面を遠目で見ながら、自分の現時点での無力さを感じ、好きなことをなぜやらせてくれない?自分には熱意も、腕にも自信はあるのに、という理不尽な思いを抱くかもしれません。
 でも指導管理する上司(料理長たち)は、免許を持っているとはいえ素人同然の人間に、いくら熱意があるから、センスがあるから、という理由で一足飛びに調理の仕事を任せることはありません。その職場=キッチンから提供される料理は対価を求めます。お金を稼ぐ料理を作り出す責任を上司たちは負います。対価を得ることができて仕事として成立するわけで、それが出来ない料理を提供してしまうリスクは避けなければなりません。ゆえに、その作業を任せるのは、信頼をおける経験を積んだ調理師になり、経験の浅いものは不足している経験、知識を周辺の作業をこなしつつ、ひとつひとつ体得していかなければ、そのポジションに立つことができません。この過程を疎んじていては、いつまでも満足する立場にはなれず、夢や憧れはそのまま、ということになります。この過程を通じ、好きなことで対価を得る=好きなことが仕事になる、ということを実感すると思います。

 「自分の好きなことでお金を稼ぐ」という意気込みでその業界に入ってきたものは、自分の好きなことが対価を求めるのに値する=社会に仕事として認められる、その段階に至るまでに年月を費やすわけですが、その間、様々にその道を妨害する要素が現れます。収入が少なかったり、体力的にキツかったり、拘束時間が長かったり、職場の人間関係に悩まされたり、目立たない地味な作業の繰り返しだったり・・・。私は特にですが、どうしてもラクな方向に流されやすい傾向にあり、「楽して効率的にお金を稼ぎたい」「人とは違う変わった仕事がしたい」とか、最初の意気込みはどこへやら、実際に飲食業とは全く畑違いの職場を選んだこともあります。その職場は当初は新鮮で楽しかったりもしますが、徐々に自分のいる場所に違和感を感じるようになります。仕事をやりきった達成感はありますが、本当にやりたいことをやった充実感を感じることはありませんでした。なんとなく良さそうと思って入ったものの、その業界にはその業界なりの悩みはあるもので、「隣の芝生は青く見える」だけだったのかもしれません。
 これは仕事が経済活動であり、収入の多寡が生活のレベルを決める、といった半ば真実であり、半ば資本主義経済に組み込まれてしまったものの思い込みが作用しているのかもしれません。高効率、高収入、余暇は好きなことにたっぷり費やす。この状況をもたらす仕事が理想的なのか?それは人それぞれ感じ方が違います。仕事は収入を得るための手段、余暇を充実させるために仕事は割り切って力をセーブします、と実際に話された方も知っています。その考えを否定することはできませんが、私は割り切ることができませんでした。仕事には自己実現、自己表現の側面があり、自分に課せられた使命感のようなものを感じることができなければ、なんとも味気ないものになってしまいます。自分の仕事に自信を持ち、自分の技術、工夫をこらし、自分の特徴を表現し成果を出す。その仕事が自分の好きなことと直結していたら・・・、とどうしても考えてしまいます。私はどうしても仕事にのめりこむ傾向がありますが、少し冷静になる必要があります。仕事は生活の、人生のすべてではなく、一日の大半を占めますが、それがすべてではないからです。そのうえで好きなことを仕事にするには、仕事が持つ経済活動の側面を理解し、好きなことを追求し続けるモチベーションを失わず、ワークライフバランスを保つことができる考え方が必要になると思います。

 調理師という職業を選んで、好きな料理に関わることができるのは嬉しいのですが、社会人として生活する以上、様々な出来事に遭遇し、右往左往することもあります。それでも続けられるのは料理の奥深さ、追求することの楽しさ、この職業との相性の良さ、それとちょっとした幸運が味方してくれたのかもしれません。
 職業との相性、なぜオートバイ整備士を選ばなかったのか?という話はまた改めて、ということにさせていただきます。「幸運」、「天職」というキーワードも関係してくるかもしれません。

 *冒頭の写真  向かって左。小アルカナ、ペンタクル7というカードです。ペンタクル=金貨、から経済面、仕事のことを表します(質問内容によりそれだけではありませんが)。鍬のような農具に頬杖をつき、浮かない表情をしている人物が仕事の成果=金貨の生っている木を眺めています。努力の成果に不満なのか、自身とこの職業との相性に疑問を感じているのか?仕事についての悩みを表していると思います。


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