お寺で開く書道展

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お寺で開く書道展
 「本願寺新報」では、いろいろなお寺でさまざまな行事に取り組んでおられる様子を見ることができます。コンサート、キャンプ、落語会・・・、特に本年が親鸞聖人750回大遠忌法要の年ということもあり、各寺院での活動もバラエティーに富んでいる感じがします。
 お寺でも、昨年5月に大遠忌お待ち受け法要を住職継職法要とされました。お参りいただいたご門徒の一人に、美術館の副館長の方がいらっしゃいました。その方から「亡き父がお世話になったこのお寺で、父の書道展を開けないだろうか」とのご提案をいただきました。
 この提案が昨年10月に実現。「竹澤丹一 信心の世界展」という書道展で、本紙にも掲載していただきました。
 浄土真宗の信仰に深く関(かか)わったこの書家の生涯を通した40数点の作品を本堂や庫裏に展示する、本格的な書道展となりました。多くの方がお寺に足を運び、書道の作品を通して浄土真宗のみ教えに触れることができたと思っています。
 書道展自体は、主催者でもある息子さんが、各地の美術館や施設にある作品を借用され、専門業者による移送・展示と、寺院側としては何の心配もいりませんでした。
 しかし、裏方としての住職や坊守には、この展示の10日間、大きな心配がありました。それは防犯という心配です。通常は美術館のガラスの中にある作品が、本堂の鴨居(かもい)や庫裏の床の間にそのまま掛けられているのです。しかも、多くのメディアで宣伝したため、遠近各地からこの作品を見るために集まって来られました。
 そのため、作品が展示されていた10日間は、神経が休まることはありませんでした。少しの物音が気になり、心配して見回りをしたり、見知らぬ来場者の様子を陰からうかがっていたこともありました。
 10日間の展示期間が終わり、息子さんが片付けに来られました。「期間中いかがでしたか。何か変わったことはありませんでしたか?」。そして「保険に入ってはいたのですが・・・」と一言。この言葉を聞いたとたん、体の力が抜けました。「保険のことを早く聞いていれば、10日間もピリピリしなくてすんだのに・・・」と思ったからです。
 保険は将来に備えて加入しますが、そこから生まれる安心は今現在のことです。現在の安心と未来の損害補償は別々のことではないのです。
今聞かないと未来も
 蓮如上人は「御文章」の中に、「一念発起(ぽっき)のかたは正定聚(しょうじょうじゅ)なり。これは穢土(えど)の益(やく)なり。つぎに滅土(めつど)は浄土にて得(う)べき益(やく)にてあるなりとこころうべきなり」と、浄土真宗の利益(りやく)を現在と未来の二つについて述べられています。
 信心をいただいた時、浄土に往生することが正(まさ)しく定まり、必ずさとりを開いて仏となることが決定している身にさせていただきます(現在)。そして、この世の縁尽きた時、ただちに浄土に生まれ、無上のさとりを開かせていただきます(未来)。
 しかし、凡夫の私たちは、眼前の雑事にばかり心を奪われ、日々不安にさいなまれて生きています。だからこそ、阿弥陀さまは、そんな私たちを救わずにはおれないと、南無阿弥陀仏の名号を私たちに回し向けてくださいました。
 親鸞聖人は『浄土和讃』に、「五濁悪時悪世界濁悪邪見(ごじょくあくじあくせかい じょくあくじゃけん)の衆生には弥陀の名号あたへてぞ恒沙(ごうじゃ)の諸仏すすめたる」
と詠(うた)われています。
 南無阿弥陀仏の六字は「必ず救う、まかせよ」という阿弥陀さまのおよび声です。その名号を聞き、大きな安心をいただくことができます。これが「正定聚」という現世の利益です。
 残念ながら今でも「仏教は死んでからの教えだ」とか、「まだお寺まいりをする年齢ではない」といった声を聞くことがあります。しかし、今聞かずして、それに続く未来もまたありえないのです。
 このたびの大遠忌のさまざまなご勝縁に、阿弥陀さまの願いが今生きている私たちに向けられていることを、あらためて聞き、大いなる安心をいただきたいと思います。

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