10. 【VUCA時代を生き抜く意思決定】合理的意思決定理論と積極的不確実性/ジェラット

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本日ご紹介するのは、「意思決定論といえば!」まず名前が挙げられる理論家のジェラットです。

彼の意思決定論は、キャリアコンサルティングにおける技法というよりは、キャリアの意思決定におけるパラダイムを提示したといえるものです。

また、意思決定プロセスをガイダンスするにあたっても、フレームワークとして大いに活用することができます。

進路指導や就活支援の場において「いつから何を始めるべきか」とか「ESの書き方極意」などというハウツー的なガイダンスは溢れています。
しかし一方で、人生の大きなライフイベントである「就職」において、「どうやって意思決定をするのか」という観点からガイダンスしてくれる人は、まだまだ希少とも言えるかもしれません。

ジェラットの理論ですが、彼は自身の活動の前期と後期で考え方を大きく変えているため、前期・後期それぞれ分けてまとめていきます。

▼前期理論:左脳的意思決定
前期のジェラットの理論は「左脳的」というだけあって、合理的に理論化された意思決定プロセスです。

結論から言うと、人は下記の3ステップを繰り返しながら、意思決定をしていくと提唱しています。

①予測システム:可能性のある選択肢の予測を行い、選択肢それぞれがもたらす結果の起こり得る可能性を判断する。
②評価システム:予測
される結果がどれぐらい自分にとって望ましいかを評価する。「自分の価値観にあっているか」「自分の興味・関心にあっているか」など。
③決定システム:可能な選択肢を目的や目標に照らし合わせて評価し、決定基準に合っているものを選択する。

ここで留意したいのが、②評価システムにおいて陥りがちなエラー、「主観的可能性」。

主観的可能性とは「自分の興味に関連している選択肢=最も望ましい選択肢」と思えてしまうこと。

人は、意思決定にあたって、この主観的可能性を大いに採用しがちであるとジェラットは言います。

就活の企業選びにおいても、自分の採点表(自分にとっての評価基準を複数洗い出し、企業ごとに点数化していくもの)を作ることがありますが主観的可能性に影響を受けがちな人にはおススメの方法だと思います。

主観的な思い込みで人生の選択肢が狭まることがないよう、「フリーチョイス」できる自分でいることが、意思決定における重要なポイントとなります。

▼後期理論:右脳的意思決定
その後、ジェラットは実践的な観点から、「人は果たして一貫して合理的な意思決定ができるものか?」と疑問に思い、自身の理論を軌道修正していきます。

当時、1980年代後半というのは教育・キャリアの分野において個性の尊重が重要視され始めた頃で、労働市場においても、今ある産業構造や働き方が
職業人生を通して不変とは限らない、変化の激しい時代に突入していました。

ジェラットは、「未来は存在せず、予測できないものである。それは創造され発明されるのである。合理的なストラテジーは時代遅れなのではなく、もはや効果的でないというだけである」と述べ、意思決定の新たなガイドラインを提唱しました。

1.情報は限られており、変化し、主観的に認知されたものである
2.意思決定は、目標に近づくと同時に、目標を創造する過程である

現在はどんどん複雑化しており変化の多い時代であるからこそ、「不確実性を積極的に捉えて柔軟になること」が大切だと唱えたのです。

初期の合理的意思決定モデルを否定する訳ではなく、依然として意思決定においては、情報収集や選択肢の絞り込みは欠かせません。

段階を経て意思決定をするわけですが、その際に合理的な側面だけを考えるのではなく、直感や夢、創造性といった非合理的な側面がむしろ大切になってくるということです。

▼まとめ
ジェラットの後期理論は今から約30年前の理論ですが、今のVUCA時代を的確に見据えた理論のように感じます。

キャリアデザインにおいて、特に20~30代のうちは「山登り」から「いかだ下り」のスタイルにシフトしているとよく言われます。

しかし、いかだ下りも、ただ流されれば良いわけではないということですね。
ジェラットの言うように、意思決定は、目標に近づくと同時に、目標を創造する過程です。

自分がいかだに乗る意味を見出し、自分でオールを漕ぐ姿勢が必要なのだと、改めて教えてくれた理論です。

ジェラットが2001年の日本講演で強調して伝えていたメッセージは
「夢見ることを忘れずに」。
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