「校正実務講座」ってぶっちゃけどうなの?

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こんにちは。校正・校閲のサービスを出品中のみねパセリです。

私は校正の経験が10年以上ありますが、最近、文科省認定の通信講座「校正実務講座」を修了しました。

受講を考えている方のご参考に、講座の概要と受講しての率直な感想(辛口)をお伝えします。

「校正実務講座」とは?

一般財団法人 実務教育研究所が提供する、校正者を養成する通信講座です。
「文部科学省認定」と付いているので「校正って国家資格なのか」と勘違いされがちですが、ゴリゴリの民間講座です。
※「文科省認定講座」とは、郵便料金の優遇や大臣からの表彰などの特典付き民間講座のこと。

受講期間は6ヶ月(無料で3ヶ月延長可)、郵便での通信講座のみ(任意参加のスクーリングあり)です。
期間内にテキストを自習して、6つの課題+終末試験で60点以上取れば修了。課題が月に1つずつしか届かないので、急いで勉強しても6ヶ月より早く終えることはできません。

入学金は5000円受講料は4万400円です。
添削料やテキスト代が含まれます。切手代やトレーニング問題の添削料は別途自腹(計1500円ぐらいだったかな?)。

修了すると「校正士」の受験資格が得られます。これまた勘違いしている人がいますが、修了しただけでは校正士(これも民間資格ですよ!)にはなれません。

結論から言うと…うーん

私が半年と約5万円を費やした校正実務講座ですが、受講した感じ、無条件で「超オススメ!」とは言えません。決してダメダメではありませんよ。しっかり基礎は学べます。
でも、この講座だけで初心者が実務に堪えうるのかは疑問が残ります。
あ、私は想定される受講生よりだいぶ実務経験が長いので、やや特殊な受講生の個人的な感想として読んでくださいね。

紙の本の校正がメイン

内容は、書籍や雑誌の校正がメインに据えられています。ガチガチの組版ルールと、限られたスペースにキレイに詰め込む方法を身につけよう!という感じです。
書籍校正は量も技術もハイレベルなので、できるようになればそりゃ結構ですが、需要や要求されるスキルからして、駆け出し校正者がいきなり任されるとは考えにくいです。ないとは言いませんが。

また、今やスマホやタブレットやPCで読む文章を無視することはできませんよね。これらは大抵横書きで、紙の本とはまた異なる見せ方やルールがあります。
にもかかわらず、デジタル画面を想定した校正には全く触れられていません。

内容がびっくりするほど古い

テキストはブラッシュアップしているそうですが、多分嘘です。20年以上変えてないんじゃないかなあ。
MDで入稿とか、ばかでかいコンピュータの写真とか、今は存在しない企業名や地名とか、子どもでもできるデジタル入力・変換の丁寧すぎる説明とかが普通に出てきます。
ある程度現場を知っている人なら、教養として印刷や校正の歴史を学ぶ価値はあるかも知れませんが、初心者がこういうのを長々と勉強しても、実務とのギャップに戸惑うのでは?という気がしました。

テキストがなんか不親切

字がびっしりで、言いたいことを語ったエッセイっぽいテイストです。スッキリまとまった実用書や見やすい図解に慣れた人は、この独特の雰囲気に馴染むのが大変かもしれません。

また、たまにテキストに載っていないことが出題されます。課題を解く際は辞書などを参照していいので、テキスト以外の手段で調べればいいんですけどね。
特に気になったのが「エンピツの入れ方」。明らかな間違いは赤で、著者や編集者に判断を仰ぐ疑問は黒鉛筆で指摘することになっているのですが、この疑問の出し方がどこにも書かれていません。
なのに課題では当たり前のように要求されます。これ、初心者にできるのかなあ?

案内も不親切

HPにもガイドブックにもない課題がいきなり届きます。
第1単元の答案返却時に「トレーニング問題」が同封されているのですが、これが全何回でいつ届くのか、どこにも案内されてないんですよね。
表紙に「第1集」とあったので少なくとも2回以上あると推測しましたが、結局2回しか届きませんでした。全2回なのか、第3集以降を送り忘れられたのかは不明です。

終末課題提出時には、受講の感想や今後の抱負や後輩へのアドバイスをレポートにして出さなければなりません。
これもいきなり原稿用紙が送りつけられてきて知りました。しかも「800~1200字」の指定なのに、原稿用紙が1080字分しかないという…。

添削が曖昧

課題は手書きで採点されて戻ってきますが、この結果もよく分かりません。
間違いや見落としらしき箇所にはチェックマークが入っているのですが、説明はほぼなし。何がダメだったかは、模範解答や解説を見て考えます。

また、チェックは4つあるのに2点しか減点されていない、みたいなことも多いです。
おそらく「ここは絶対気付かないとダメ!」「ここは難しいから見落としてもノーカン」「ここは激ムズだから指摘できたら+2点」みたいに、同じチェックマークでも内容?ランク?に違いがあるように思います。知らんけど。

添削指導が売りなんだし、先生との唯一の接点なんだから、もう少し丁寧に解説してほしかったです。個人的にはこの点が一番残念!

良いところもあるよ!

文句ばっかりというのもアレなので、良かった点もご紹介します。

私にとって一番の収穫は、校正者はどんな立場で、どのように原稿に向き合うべきか、という心構えやスタンスを意識できたことです。
分かっていたつもりでも、長くやっているうちについつい驕っていたなあと反省しました。

校正とは本来どんなものかを学ぶにも良いと思います。本当に基礎の基礎から教えてくれるので。
校正記号や用語など、マイルールでやってた、ドヤ顔で使っていたけどちゃんと意味を分かっていなかった、というような気付きが結構ありました。

問題のレベルはよく考えられていると思います。初心者にはほどよい歯ごたえがありそうです。
平均点の推移から見ても、単元が進むにつれていい感じに難易度が上がっていきますし、実務でよく見かけるミスはおおむね出題されています。
10年以上の経験がある私も、最も簡単な第1単元で失点しましたし、課題には毎回悩まされて決して楽勝とはいきませんでした。

教材の「校正ハンドブック」は実務でも役立ちます。
これは常用漢字一覧や仮名遣い、漢字や言葉の使い分けなどがまとまった冊子で、パラパラ見てるだけでも「へぇー」と思える発見がいっぱいありました。


以上が個人的な感想ですが、実際問題として、がっつり校正を学びたいと思った時、そもそも講座が少なくて他に選択肢があまりありません。
また、校正士の資格が欲しいなら、前提条件となるこの校正実務講座を自動的に受講することになります。
何はともあれ、興味がある、勉強したいと思っているなら挑戦してみるのが良いと思います。無駄になる勉強はありませんから!

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ますます自信をつけた校正を是非体験してください!

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