臨床経験17年目の獣医師です。
それでは今回は薬についてのよく聞かれる質問その③として
「薬は飲ませ続けないと駄目でしょうか?」
という質問についてお答えしたいと思います。
この質問は薬の種類によって回答は異なってしまいますが、
まずは獣医さんがそれぞれの病気に対して処方した薬は特別な指示がない限り、飲み切ってもらった方が良いです。
それは獣医さんがその病気を治すために必要な日数のお薬を処方しているからです。
そのうえで、その薬をまた再処方してもらい飲ませ続けるものか、処方された薬を飲み切ってそのまま飲ませなくてよくなるのかは、病気の種類によっても異なります。
その違いはざっくりした表現でお伝えすると、
完治する病気か
完治しない病気(治すことのできない病気)か
の違いです。
完治する病気の例とすれば、骨折などの外傷が典型的な例になります。
骨折が治るまでの間は必要に応じて抗生剤や痛み止めの薬が必要になりますが、骨が治ってしまえばそれらの薬は必要なくなります。
完治しない病気の例としては、主に慢性的な病気があります。
具体的には、シニアになってから出てくる心臓病、腎臓病、肝臓病などが挙げられます。
このような慢性的な病気でかつ、手術などで完治させることが難しい病気は、薬を飲み続けることでその病気が悪化するスピードをゆっくりにしていきます。
そしてその薬を飲むことでその病気とうまく付き合っていくようになります。
その病気とうまく付き合っていく
とは言いましたが、
言い方を変えるとその病気は治すことのできない病気のため、薬を飲んでいても少しずつ悪化はしていきます。
そして悪化して薬でコントロールができなくなると、最終的にはそのペットが亡くなってしまうことになります。
あくまでもその薬は愛犬愛猫の病気の進行をゆっくりにするだけですので、
よく飼い主様から
「それは延命治療ですか?飲ませた方が良いのですか?」
というような質問も受けることがあります。
その質問に正しい回答はありません。
薬を飲ませず、病気の進行は自然に任せるという選択をする飼い主様ももちろん多くいらっしゃいます。
ただ私としてはペットとして家族として長く一緒に過ごしてきた愛犬愛猫だと思いますので、一日でも長くご家族と一緒に過ごさせてあげたい。
そのように思っているため、健康な長生きを目指し、慢性的な病気は早期からなるべく治療をとるように飼い主様にはおすすめしています。
ある程度シニアの愛犬愛猫を飼われている飼い主様は今回のブログの内容は思い当たることもあるのではないでしょうか?
そしてそのような病気を持つペットのご家族は悩まれることも多いと思います。
その際は主治医に悩んでいることを正直に伝えてもらうのが良いと思います。
そして主治医と一緒に愛犬愛猫のために何ができるのかを一緒に考えながら治療をしていくのが良いと思います。
今回の質問「薬は飲ませ続けないと駄目でしょうか?」
の回答としては以上になります。
くどいようですが、主治医の先生にはその薬を飲ませ続ける理由が必ずあるはずです。
飼い主様の中で
今飲ませている薬が飲み続けるものなのかどうか?
がよく分からないようであれば一度主治医の先生に薬について聞いてみるのが良いと思います。
そしてもしも主治医の先生に聞きづらいようであれば私に質問していただいても大丈夫です。
お気軽にご相談ください。
薬の話もだいぶ長くなってきたので、次回は「副作用」についての話をしてひとまず終わりにしようかと思っています。
よろしくお願いいたします。