周易古占例 (46)盗まれた牛の行方、(47)待ち人の占

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天元春日  周易古占例 24

本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。
【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(24)】

ー真勢中州について
真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。
『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、
「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」
と記されています。

ー真勢中州とその一門の占例
(46)は盗まれた牛の行方、(47)は待ち人の占例です。

(46)ある農家、牛を偸(ぬす)まれたり。
その牽き往きたらんところの方角を問う。
予(よ)之震(しん)
占にいわく、これ強壮たる男子の牛を盗みて牽きて逃げ行くのところの象あり。  
これ本卦予の判断たり。震を壮士とし、大塗(みち)とし、進み行くとし、坤を牛とし、道路とし、坎を盗むとし、牽とす。
また牛を偸(と)るものは先に逃げ行く。
后(あと)より一人進かけ行くの意味あり。
これ、之卦重震の卦の判断たり。
一人前に走りて行けば、一人後ろより追いかけ行くの象義たり。
また卒に追って牛を取り返すの意味あり。
これ重震の卦の画象たり。
また義象たり。
ともに口伝。
その方角は北にして少し東の方なり。
坎を北とし、艮を丑寅の隅位とす。
これ北にして少し東に当たる象とす。
速やかに追いかくべし。
遅きときには逃げさりて再び取り返すこと難かるべし。
はたして指図の方角へ追人を走らしめたるに、その牛偸人(ぬすびと)はすでに牛をば売り渡して
いまだその売金をば受け取らずして休息して居たりしところへ追いついてついにその牛をば取り復すなり。
【輝星】 
按ずるにこれ中州子の判にしてまずその方角を指し定めしこと奇々妙々たるなり。
本之両卦中にして震の卦三つまであり。
さるを震の東は指さずして中卦の坎と中卦の艮とをとりてその方位を定められしこと、これその事の主要をとる秘伝口決なり。
これ卦象にしてその実は爻象たるなり。
元来この卦は之卦重震の象にてみれば、たとえ追いか
け行きても跡追いにしてついには追いつけざる卦象なり。
さるを早く追いかけたらば取復すことを得べしと判ぜられしものは、これ本卦予より
之卦震へ行く卦爻の転歩に初九へ一陽爻を加えたる蓍の情こそ視居(みすえ)たるところの占なり。
この判の作略活用は実に神位に入りたるものと称すべし。
所詮吾輩の企て及びがたきものたり。
今、この事を記載するについて、この占判に粗(ほぼ)似よりたる処の小子が愚判を意(おも)いだせり。
これ、この百分の一にも及ばずとはいえども後進の修行のために、ここに記す。

(47)京都に西岡玉全というものあり。
至て卜筮を好みて人も知りたるものなり。
余が門に入りて易を学べり。
一時余に問いていわく、待ち人の占に重震の卦を得たり。
震不変
これにては来らざるの象にあらずやと。
余答えていわく、待ち人の占にも種々の活用あり。
これ京師中の人を待つのか、または遠国の人を待つ事か。
玉全いわく、遠国にて三日路あり。
二宿りせねば京都へは至らざることなり。
これ、是非ともに面会せざれば叶わざることなるによりていい遣せしこと数度に及べりと。
余いわく、その卜筮せしは幾日頃のことなりやと。
玉全いわく、今朝のことなり。
判じていわく、来るべきなり。
今日より三日目の夕方には至るべしという。
これ下卦震の催促の書面達せしゆえに今朝上卦の震の人、震にて動かんと支度して出かけるの象と見えたり。
ゆえに三日目に至るべしと判ぜるなり。
さて、それより四日目に玉全また来たりていわく、此頃の待ち人の占は奇妙に当れり。
三日目の夕方に来れり。
また問いていわく、その者京へ来て後の義はいかがなりや。
また判じていわく、その者はるばると京都へ来たりしことなれども
肝腎の呼びにやりたる人には対面することなくして間違いて帰国せるの象義たりと。
玉全手を打ちて首を席に附ておどろきていわく。実に奇なり。神なり。
けだしその待ち人の来りしは黄昏どきなり。
その主人はその日は家の総勘定日なりしゆえに朝より本家へ出勤せり。
家内よりその人来りたりしを言いやりしは、今夕は夜半過ぎまでも休暇なきゆえに帰宿すること叶い難ければいずれ対面は明日いたすべし。
随分意を加えて饗応すべしと言い来りしなり。
客人は酒飯十分に飲食して四つ時頃に寝たり。
夜半前にその家の門の戸を叩きて客人の国許(くにもと)より飛脚来りて火急の緊労出来せり。
この飛脚戸同道にて帰国すべしということゆえに、すぐさま同道して夜通しに帰国せり。
ついに主人とは面会することなしという。
これ重震の卦象。
一人前に走ればまた一人後ろ走り追いかけ行きて「彼終跡進」となして面会せざるの象なり。
※出典 真勢中州『占験諸例』(写本復刻)文章は読みやすくするため、適宜加削変更しています。
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