気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その55~

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皆さん、いつもありがとうございます。今回も、どうぞ気楽に読んでください。
今日は呼吸の深さに付いて、きっと、ここでしか読めない切り口で語ってみます。
それには昨日も少し触れた、股関節のリラックスに関してもう少し書き加えておきたいと思います。
股関節の緊張は、顎関節の緊張です。イコールと言っても言い過ぎではありません。
脚の付け根、股関節の外側に、大腿骨大転子という骨の突起部分があります。この左右の大転子を掌で優しく円を描くように擦ってみてください。
この動きも決して機械的にはならないように、呼吸を無視しないで行ってみます。
暫く続けたら、突然奥歯を食いしばってみてください。
そこには二通りの反応が表れる可能性が大です。
一つは、股関節の緩みが順調に醸成され、何故か歯を食いしばろうとしても食いしばれないというもの。
もう一つは、歯を食いしばることが出来て、それと引き換えに大転子を擦っていた手の動きが突然まともな円を描けなくなる、或いは直線的な動きに変わってしまう、というものです。
顎関節の緊張と股関節の緊張は、云わば鶏と卵のような関係で形成されていると思われ、どちらか一方のケアだけではなかなか改善されません。
もっと簡単に、ただ単に奥歯を軽く食いしばってみると、全く同時に骨盤内部に >< ←こんな形の緊張の線が走るのを感じられると思います。
このちょっとした実験で股関節と顎関節の只ならぬ関係性に納得したなら、更にもう暫く楽~~~に同じ動きを続けます。
こうすることで股関節のリラックス度は増し、骨盤の後傾という姿勢、上体が緩んで重心が下りて来るのを更に広い面で受け容れようとしてくれるのです。
同時に顎も緩み、口腔のスペースは縦方向に長く感じられるようにもなり、発声の概念でよく出て来る、ノドの奥が開いた状態に近くなります。つまりこれだけでも声が通り易くなり、滑舌も良くなる可能性が大いにあるということです。
この時に恐らくは椅子の天面と接している体の部位、中身には坐骨があるのですが、その坐骨の周囲の柔らかな部分と椅子の天面の接地面積は確実に広くなったように感じ、温かさもより具体的に感じる筈です。
それでこの、椅子と接している部分の広くて温かな感覚ですが、これを、感覚としての骨盤の底と捉えて頂きたいのです。
解剖生理としての骨盤底も勿論大切ですが、それよりも、一種の油断とも言える心身の状態が連れて来てくれるリラックスした骨盤の底部の状態を、寧ろリアルな骨盤底と捉えて頂きたいのです。
深い呼吸とは、この感覚抜きに得られるものではありません。
骨盤底と横隔膜の見事な連動があって初めて本当の呼吸に目覚められることから、骨盤底のことを第二の横隔膜と呼んだりもしますが、この感じが馴染んでしまうと、とてもそのようには思えなくなります。
逆なんです。
骨盤底こそが第一の横隔膜、そして皆がよく知る方の横隔膜は、骨盤底の緩みという恩恵により初めてその真価を発揮して豊かな吸気を実現出来る、二番手の存在と言えるのです。
筋肉のサイズやエリアの広さに於いてはお話にならない程上半身の横隔膜の方が圧倒的に大きいのですが、深い呼吸をリードする影響力に於いては、そのサイズの小さい骨盤底の存在感は絶大です。
ここまで来ると先程の話の中に、もう通じなくなってしまっている個所が生まれて来ます。
それは、椅子との接地面の話です。
確かに物理的にはお尻の底と椅子の天面が接していて、そこに殆どの重心が来ている訳ですが、心の眼でその部位周辺を観察すると、自分の重心を委ねている地点、骨盤の底はそれよりももっともっと下、下手すると床の面よりもずっと下に感じられることすらあるのです。
本当に深い呼吸とは、このように味わうものだと思い、ここに自信を持ってご提案させて頂きます。
この深い呼吸を、鉛筆や木炭による生きるエネルギーのデッサン、素描だとすると、明日はそこに、彩色としての声を乗せる、そんな話へと進んでみたいと思います。
A-E-I-O-U の中の、 “ U ” という母音を使いますが、その音は、日本語の50音表には載っていません。
この一つの母音が、肉体的にも確固たる実感としての、更に深い呼吸の旅へと誘ってくれるのです。

つづく

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