IT職とうつ病。そして、そこに必要なもの。

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 私は学生時代に『IT職はうつ病が多い』と聞いたことがあります。技術職の現場では、OJT教育という言葉で正当化された「ほったらかし」が、若年層の勇気をくじき、彼らが戦線離脱する悲しい現実を見ることがあります。

 うつ病は、周囲の理解ある対応と適切な治療で必ず治るものです。しかし残念ながら、周囲が正しい知識/理解力を持たなかったり、地方都市の限られた心療内科で十分な治療を得られなかったりして、復帰までに相当な時間がかかる事例も多く。
 私は、このような現実を非常に歯がゆく感じています。私個人ができることは本当に限られているが、もしこの文章に目を通してくれた人が、「へぇーそうなんだ、いままで甘えてるだけかと思ってたけど、ちょっとネットで調べてみようかな」と感じてくれれば嬉しいと考え、この文章をまとめてみることにしました。

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 『IT職はうつ病が多い』・『IT職は若くして引退の時期が来る』。私が大学生の時に、先輩に聞かされた言葉です。

 IT職(SE含む)は、高精度のアウトプットが求められます。ほとんどの人はせっせと忙しく働き、余裕がなく、ゆったりと話を聞く時間がないように見えることが多い。
 若年層の教育/育成は、『実践的な業務を通したOJT教育(On the Job Training)』と呼ばれる方法が多いとよく聞きます。業務の流れをある程度覚えた(ように見えた)ら、一人で作業を任せられることも少なくなく。
 若年層だとしても、求められるアウトプットレベルは決して低くありません。OJT方式―――という都合がいい言葉で正当化された『ほったらかし』―――が浸透した組織では、必要な知識/スキルは先輩や上司に声を掛けることが基本とされるが、セカセカと忙しく働く先輩に直接声を掛ける勇気を持てなかったり、顔の広い社員と出会えず協力者に恵まれなかったりすると、求められたアウトプットレベルを達成することは、非常に困難です。
 「自ら考えて行動できる人」をテーマにするくせに、その自律性を重んじた基本理念に反して、他律的な動機づけ(例: 厳しい叱責、プレッシャーかけ、噂話)が多い。
 ひとたびレッテルを貼られると、状況打開はますます困難となり、少しだけあった自信はガタガタと崩壊し、承認欲求が欲求不満となり、ときとして適応機制の"退行"に陥る。

 退行とは、精神が耐え難いプレッシャーを受けたとき、それを解決しなくても良い年齢まで人格を戻すことです。「自分は無能だ」とか「自分には価値がない」とか「自分なんか、存在しなければいい」などと。追い詰められた人にとって、このような方法でしか直面した課題を回避する方法に対処できない状況は、―――それがどのような経緯で発生したにしろ――― 極限の状態と言えるでしょう。

 こうして、もともとある組織(の常識)に適応できなかった人が、悲しい結末(例: 職場を去る)を迎えることがある。先輩の言葉『IT職は若くして引退の時期が来る』は、こうした現実の1ページを伝えたかったのかもしれない。

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 私は、技術職こそ 『大人』として必要な対人コミュニケーション能力や国語力、観察力が必要だと考えていますが、これをないがしろにされているケースをよく目にします。特に、一生懸命頑張ったんだけど、なかなか結果が出ずに悩んでいる人の心に寄り添い、その人の声に耳を傾けて、そっと勇気づけをすることが、技術者だからこそ大切ではないかと。

 だって、難しい内容をやっていて、ひとつのミスが命取りになるようなリスキーな作業なんだもの。「つらい」って声に出してなくても、みんな相当なプレッシャーと戦って疲弊しているはず。
 自分の観察力のなさを棚に上げて、その人の落ち度を攻撃ばっかりしては、そりゃーギスギスしたやりづらい雰囲気にもなりますよねー。

 内発的な動機づけは、理解力や忍耐力、その人のミスをカバーできる技術力/包容力が必須ですが、―――実行できるまでどれほどの時間がかかるかは置いといて――― 少なくともそれを道しるべにして、一歩一歩 進んでいきたいと感じます。
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