こんぺい糖 ーその2ー

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そこには上着をまくし上げ、左脇腹を見せる裕子がいた。


下唇を噛み締め、睨みつけるその目には涙が浮かんでいる。
何かを我慢するような苦痛な表情に、芽衣は心臓を掴まれ胸が痛んだ。
そして、強い後悔に圧された。


裕子が見せる脇腹には、
手のひらサイズの歪んだハート型のアザ。
芽衣がそれを目にするのは二度目だった。
これほどの怒りを向けられながらも、
( やっぱり素敵だ。)
芽衣はそこに惹かれていく。


うすい茶色のハートは白い肌に
柔らかく描かれているようにも見える。
他の誰にもない特別なマークは、
選ばれし者であるかのよう。


意を決してありのままの気持ちを伝えることにした。
どうせ嫌われるのなら、思いを届けた方がいい。


芽衣はまっすぐに裕子の目を見た。

「あの日、廊下で渡辺さん達が噂話をしてて。」

渡辺という女子は、裕子と同じ中学を出ている。

「裕子が…、水泳の授業で着替える時、
不自然にコソコソと着替えること。
中学の修学旅行の入浴も皆とは入らなかったこと。
何か、おかしい、って。
絶対に何か隠してるって。
勝手に推測して、嫌な感じに話を盛り上げてて。
すごく腹が立った。」

「そんな話放っとけば良かったやん?!
芽衣には関係ないとやけん。」

「…関係なくない。
関係ないことはない。
私ね、私、裕子が好き。
大切だし、尊敬もしてる。
私が失敗した時に優しくしてくれて、
話まで聞いてくれた。
あの時にそのアザも見せてくれて。
本当に嬉しかった。」


芽衣は新しいクラスになかなか馴染めなかった。
はじめこそ数人の女子が話しかけてくれたが、
おどおどとした芽衣のもとから、少しずつ人気は消えていった。


不器用な芽衣は失敗もよくした。
物を落とす、プリントを破く。
間の抜けたとこもある。
教室を間違える、人の名前を間違える。
移動教室の時に、迷子になり遅刻をしたこともあった。


新しい環境への期待は、少しずつ薄れていく。
(いじめにあわないだけ、マシ…。)
そう自分に言い聞かせながら、
自己嫌悪がじわりじわりと広がっていた。





短編小説第二弾は、少し長くなりました💦
小分けしてお届けしております。
お読みくださいました方々、
私の未熟な文章にお付き合いくださったこと、
心よりお礼申し上げますm(_ _)m


その胸の内にじわりと広がる負の感情があるならば…
こちらは文字でのやりとりです。
そのお悩みに真心こめて返信します。
1時間、文字でのキャッチボール♪



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