【悩める多重関係】

記事
学び
 人は誰でも「ライフロール(人生役割)」
 というものを持っている。簡単に言うと、
 私・久木弥九蔵という一人の男性は、親
 から見れば「息子」、妹からなら「兄」、
 一歩外に出たら、「知らないオッサン」、
 「ミュージカルボランティアの塾生」等、
 様々な顔がある。これは誰でも同じこと。
 職場では、「上司・部下」「先輩・後輩」
 「同僚」「取引先の担当者」、等の顔が
 あり、プライベートでも、友達・恋人・
 活動仲間等々枚挙にいとまがない。私の
 場合だと、ここにクライエントにとって
 「カウンセラー」という顔が加わるのだ。
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 カウンセラーにとって、クライエントと
 友人・恋愛・性的関係になったり家族・
 友人のカウンセリングを行うこと、所謂
 「多重関係」になることは本来タブーと
 されるものだ。相談者が本音を話せなく
 なるのは勿論、カウンセラー自身の目も
 曇ってしまうからだ、と私は考えている。
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 私は、そのタブーを嘗て一度だけ犯した
 ことがある。クライエントと友人関係に
 なったのではなく、元からの友人に依頼
 されてカウンセリングした、という形で。
 その友人が精神的に追い詰められて切羽
 詰まった状況の中、私になら話を聞いて
 もらえるという気持ちで、すぐ会いたい、
 という思いでいるのを無視できなかった
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 カウンセリングとして会ったのはその時
 だけで、それ以後は、時折LINEでの
 やり取りや、食事を兼ねて会って話すと
 いう友人同士の付き合いに終始している。
 ただ、そうしたことは、その友人が何か
 精神的に追い詰められた場合に限られて
 おり、私の対応もついカウンセラー目線
 になりがちだし、私にその気がなくても、
 カウンセラーである私と会うにはお金が
 かかる、という気持ちがあり、それなら
 物理的に無理だと相手も躊躇してしまう。
 一度きりのカウンセリングが二人の間の
 微妙な障壁に確かになってはいるようだ。
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 また、同じカウンセラー仲間に将来的に
 私に自分のカウンセラーになってほしい、
 と希望している人もいる。これも「多重
 関係」であるとお互いに承知しているが、
 上級のカウンセラーよりも立場の近い者
 同士の方が共感しやすい、という理由で
 相手がそれを望んでいるので、私の方も
 そのつもりでいる。これは、「多重関係」
 の一方で、ある意味「スーパービジョン
 (心理カウンセリングにおいて、自分の
 担当事例について、心理カウンセラーが
 指導者に報告し、適切な方向付けを得る
 ための指導を受けること。指導する者を
 「スーパーバイザー」、指導を受ける者
 を「スーパーパイジー」という)」かも
 知れない、と互いの切磋琢磨のつもりだ。  
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 「もっとも影響力のある心理療法家」と
 言われるカール・ロジャーズは七十近く
 なってから女性と性的関係になることに
 興味を持つようになり、それを実践して
 みたいと強く思い、性的関係を持ちたい
 相手のリストまで作っていたそうである。
 そして、実際に幾人かのクライエントと
 性的関係になったようだ、ということが
 諸富祥彦著:「カール・ロジャーズ入門
 ―自分が“自分”になるということ」に
 記されているくらいだから私如き凡人が
 多少「多重関係」に悩むのも止む無しか。
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 御閲覧、心より感謝申し上げます。
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