【もしも自分のメロンだけがなかったら】

記事
コラム
 私は、普段テレビや映画等は殆ど観ない。
 私の音楽や映像の作品志向は偏っており、
 映画は、ほぼ「男はつらいよ」一辺倒だ。
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 映画「男はつらいよ」第15作「寅次郎
 相合い傘」に、ファンにとっては有名な
 「メロン騒動」というエピソードがある。
 寅次郎が旅先で面倒を見た会社員兵頭が
 後日お礼に来た時に貰ったメロンを巡る
 一悶着で、私は、今、これを認知の問題
 として研究の対象にしようと考えている。
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 この「メロン騒動」、さあ食べよう!と
 切り分ける時に、外出していた寅次郎を
 勘定に入れ忘れていたことから大喧嘩に
 発展する。帰ってきて自分の分だけない
 ことに激怒する寅次郎に家族全員謝るが、
 寅次郎は、「どうせ俺はこの家では勘定
 には入れてもらえない人間」「メロンは、
 パパ(兵頭)が旅先で世話になった礼に
 俺に寄越したもの。本来はみんなが俺に
 感謝して頂くものを俺の留守に勝手に!」
 「(妹さくらに)俺はたった一人のお前
 の兄ちゃんだぞ。その兄ちゃんを勘定に
 入れなかった、ごめんなさい、で済むと
 思うのか!お前そんな心の冷たい女か!」
 「俺はメロン一切れのことを言ってるん
 じゃない。この家の人間の心の在り方に
 ついて俺は言ってるんだ!」等と悪態の
 つき放題。結局は、取っ組み合いの挙句、
 「勘定に入れなかったの、心が冷てえの、
 そんな文句言える筋合かい?ろくでなし
 のあんたをこんなにも大事にしてくれる
 家がどこにあるかってんだ。本来ならね、
 いつも御心配おかけしています、どうぞ
 メロンをお上がり下さい、私はいいです。
 どうぞ私のも、そう言うのが本当だろう。
 甘ったれるのもいい加減にしなってんだ」
 というマドンナ・リリーの言葉で収まる。
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 「他者から認められたい、自分を価値の
 ある存在として認めたい」という、人間
 本来の承認欲求を考えた時、このケース、
 寅次郎でなくても惨めな気持ちになると
 いうことは想像に難くない。現に私自身、
 過去に職場で、自分の歓迎会だけが開催
 されず、忘年会の会場へ移動する時には
 一人置き去りにされ、担当の自分が席に
 いるのにも関わらず自分にかかってきた
 電話に勝手に対応されて事後報告もない、
 等という体験をしているので、ここでの
 寅次郎の悪態をつきたい気持ちは分かる。 
 ただ、彼は、テキヤで年中旅暮らしの上、
 度々いろんな女性に恋をしては、周囲に
 心配や迷惑をかけているので、その点を
 踏まえての先のマドンナの言葉ではある。
 そういう事情から、寅次郎の中には強い
 劣等感・思い込み・被害妄想等があって、
 無意識に自己承認を避けている気がする。
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 同じストレス刺激を受けてもそれをどう
 認知・評価するかでストレスとなるのか
 否かが違うので、我が身に起きた出来事
 は様々な角度から考えてみる必要がある。
 そこで、私と寅次郎は別人格ではあるが、
 私が寅次郎の立場だったらこのケースで
 どうするかを「認知」の観点から考える。
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 「テキヤで年中旅暮らしの上、度々様々
 な女性に恋しては、周囲に心配や迷惑を
 かけている」自分が、「旅先でお世話に
 なったお礼にと貰ったメロンを、家族が
 自分を勘定に入れ忘れて切り分けたため、
 自分の食べる分がない」、という状況を
 どう受け止めるかだが、寅次郎の悪態に
 対して、私は、こういう風に考えてみた。
 「いつも俺のことを心配してくれている
 みんなが俺を家族として見ていない筈が
 ない。だから、勘定に入れ忘れたことも、
 本当に、ついうっかりして、なんだろう。
 メロンもパパ(失踪中で家族や勤め先の
 人間が心配していた)のことで連絡やら
 何やらで先方に対応してくれたことへの
 お礼の意味もあるんだろうから俺一人が
 貰ったものじゃない。日頃、みんなには
 心配や迷惑をかけているし、勘定に入れ
 忘れられたのは少々惨めだが、うっかり
 なら仕方ない」そして、多分こう言うと
 思う。「勘定に入れ忘れたものは仕方が
 ない。いつも心配をかけていることだし、
 メロンはみんなで食べてくれ」、もしか
 すると、「その代わりと言っちゃ何だが、
 今晩、○○を付けてくれ」と付け加えて、
 夕飯に好物をおねだりするかも知れない。
 更には、マドンナ・リリーに「一口くれ」
 ぐらい言うかも知れない。気の置けない
 間柄の二人であるから、案外、「いいよ。
 ア~ンして」なんていう展開になったり
 して…と、ここまでいくとファンの妄想
 もいいとこだが、こうした受け止め方や
 展開にもっていくことで「自分の分だけ
 がない」という事実がストレスとならず、
 寧ろ、好ましいコミュニケーション形成
 に繋がるのではなかろうかと思えるのだ。
 そこには、自己肯定感の喪失からくると
 思われる、劣等感・思い込み・被害妄想、
 更には、悪態をついたり暴れたりという
 ような感情や行動は存在しない筈なのだ。
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 日常生活の中で起こる様々な出来事には、
 受け止め方一つで状況が一変するような
 ことが多々あると思う。メンタルヘルス
 不調者の悩みに対処するのにも、今回の
 ケースのような「認知の再構成」は重要
 であり、私自身が過去の苦い体験でその
 ことを痛感しているので、私の自己開示
 込みで近々お話させていただくつもりだ。
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 御閲覧、心より感謝申し上げます。
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