わたしは「しくじり上司」でした。
この記事は、わたしのような「しくじり上司」にならないよう、すでにやらかしてしまった上司、その予備軍の上司の方々に、少しでも役に立てばうれしいです。
何を間違ってしまったのか
10年以上前のことですが、昇格して上司になりました。同期入社の中では早い方でしたし、仕事も順調で社内表彰を何度も受けていたのでそれなりに自信やおごりもあったように思います。
もちろん「やったー!」と喜びだけでなく、「どうしよう」という不安もありました。
でも仕事が忙しくなるにつれ、謙虚さはだんだん無くなり「仕事なんだから、言うことを聞いて当然」という思い込みが強くなっていきました。
ポジションが上がると使えるパワー(権力)は大きくなります。
パワーは会社から期待されている証しです。
わたしにはそれを使う権利があります。でも権利があっても、それをそのまま使ってはダメなんですよね。
わたしは支持型人間でマイクロマネジメントをしたがりました。
すべてコントロールしたがり、口調は優しいものの、部下を追い込んでいました。
部下をフォローしてこぼれた業務を手伝いましたが、どこか「なんで私がこんなことまで」と不満をもっていました。
成果重視で部下の気持ちに寄り添おうとしませんでした。
「自分の感情は仕事の無駄になる」と思って、感情を封じ込めていました。チーム内の雑談は「自分の作業時間が奪われる」と思ってなるべく参加しないようシャットアウトしていました。
こんな上司が信頼されるはずもなく、「あなたにはついて行けません!」と部下から直接言われてようやく目が覚めました。
いまでもこの部下が勇気をもって言ってくれたことには本当に感謝しています。
しくじり上司の気づき
「しくじり上司」として気づいたことです。
①パワーは「おまけ」と考えればよかった
昇格すると自分まで偉くなったように誤解してしまったのですが、肩書が変わっただけで自分が急に変わるはずがありません。
「パワーのあるポジションに就いた」に過ぎない、と頭では理解していたつもりが実践できていなかったので、理解が足りていませんでした。偉くなったかのように勘違いして振る舞って、ひんしゅくを買ったり周囲に迷惑を掛ける上司は最低です。
そんなふるまいを続けていたら、ポジション・パワーを失った途端、急に手のひらを返したように周囲から人は去って行ってしまいます。
その後、心を入れ替えて励んだのが認められたのか、当時バラバラになってしまったチームメンバーとは今でもランチで声をかけられて一緒に食実する関係が続けられているのは本当にありがたいことです。
②視点(思い込み)に気づけばよかった
「しくじり上司」は、自分の考えとは異なる意見をもつ部下に対して、こんなアプローチをとっていました。
・「それは違うよ」と指摘して相手の考えを正そうとする
・ちょっとカチンときて従わせようとする
・「目先の仕事をやってから言って欲しいな」と問題をすり替える
「上司と部下」という職位関係と、意見の相違は無関係な問題のはずです。
なのに「しくじり上司」だったわたしは、なぜ「内容」で判断せずに「相手」を正そうとしたり黙らせようとしたかったのでしょうか?
わたしには「部下とは○○である」という視点(思い込み・固定観念)がその前提条件にあったように思います。
・部下は上司に従うべきものである
・まずは仕事を覚えて一人前になってから上司には意見するものである
この視点が間違っている、とは思いません。
自分が「そういう視点をもっている」と把握するだけでよかったのです
「しくじり上司」だったわたしは、私自身の視点にはまったく無自覚でした。
「わたしは部下を従わせるパワーがあるという視点をもっている」と認識していれば、もう少し部下に対する言動や行動を自制できたように思います。
自分の固定観念を1人で気づくことはなかなか難しいです。
コーチングでは、コーチが依頼主さんとの対話の中で、依頼主さんがもつ視点を発見します。するとコーチは依頼主さんに対して、
・あなたは今、「○○は□□というものである」と思っているんですね
・あなたは「○○であるべきだ」と考えているんですね
というように、依頼主さんの「視点」をお伝えします(よい/悪いを評価していないのがポイントです)
自分では気づくことができなかった自分の思い込みを、客観視することになるので、これだけでも大きな気づきとなるはずです。そこから更に、さまざまな視点を体験しながら、自分の世界に対する見方に揺さぶりをかけていくのですが、これは記事末尾のコーチング紹介で後述します。
③パワーは「なるべく使わない」と決めればよかった
パワーを使えば、課題解決はてっとり早いのはまちがいありません。
「いいから」「とにかくやって」と無理に従わせることも可能です。
でも上下関係のポジションパワーによるもので、信頼関係はありません。
「パワーはあるけど、なるべく使わない」と決めればよかったです。
パワーを使わなければ、相手と対等な立場となってしまいます。相手を問答無用で却下することもできなくなるので、部下の主張を聞かなくちゃいけません。パワーを使わない分、時間がかかります。
「そんな意見もあるんだ。考えもしなかったよ」
「なぜそう思ったのか聞かせてくれない?」
と、いったん“受け止める”だけでよかったのです。
受け止めは、相手を否定も肯定もしていません。頭ごなし否定せず、まずは聞いてみる。自分の思い込みを手放し、相手の言うことに認めるものがあれば、素直に認めればいいのです。
そして最終的な評価・判断はいつでもパワーを行使できる、という自信があれば、きっと部下のいうことを素直に認められるはずです。
部下の言うことを聞いてばかりでは、リーダーシップは発揮できません。
でも、権力を使わないで相手と相互の信頼関係を持ってリーダーシップを発揮しようと、自分のスタンスを決めるだけで、思考・発言・行動は大きく変わっていくと思います。
しくじり上司のその後
パワーは時間とともに人から人へと移動して、1箇所には留まりません。
私がそのポジションに留まったのは5年間くらいでかなりの長期政権でした。それでも一時的に過ぎず、永遠にずっと権力者であり続けることはありません。
「権力があるうちに、使ってしまわないと損」と考えるのは得策ではありません。
わたしは別部門に異動して管理職をやっていますが、その部門でのパワーを失った後でもその部門と付き合いはあります。信頼関係がなければ相手にもされなかったと思います。
この後、わたしは管理職から降格になる可能性はじゅうぶんあります。パワーによってつくった関係性はパワーがなくなれば失われます。
なるべくパワーを使わずに関係性を築いて、パワーがなくなっても関係性を維持していきたい、と今では本当にそう思います。
パワーは影響力が強いため、人を狂わせてしまいます。
パワーをもったら、なるべく手放そうとするくらいがちょうど良くありませんか?
いまはなるべくパワーを使わず部下と関係性を築こうと努力しています。
もちろん部下は気を遣ってくれているのだと思いますが、以前のような緊張関係はなく、ずっと心地が良く自然体でいられます。
わたしのような「しくじり上司」にならないよう、すでにやらかしてしまった上司、その予備軍の上司の方々に、少しでも役に立てばうれしいです。
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こんな「しくじり上司」予備軍になってませんか?
・部下が言うことを聞いてくれない
・権限委譲で任せても動いてくれない・部下が信頼できず細かいことまで指示してしまう
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職場で言えない内容でも、コーチに話すことで違う視点で自分を見つけ直すことができます。
自分視点でなく、部下の視点・上司の視点・同僚の視点と複数の視点で物事を考えることで新たな気づきを得るきっかけになります。
タムシンコーチさん(会社員)のプロフィール | ココナラ
副業プロコーチ。普段は民間企業で新規事業開発を担当する40代マネージャー。対話を通じて悩みや不安、ストレスを生じさせる問題を探り、目標達成をお手伝いします。皆さまの成長がなによりの喜び。コーチング組織CTIの応用コース修了。コーチング×MBA×ポジティブ心理学のかけ算を実践中タムシンコーチのプロフィール | ココナラ