相手の立場に立って考えるための4つのステップ(効果的なSPTのプロセス

記事
コラム
「相手の立場に立って考える」という対人関係のテクニック(ソーシャルパースペクティブテイキング=SPT)について、2009年のアメリカ陸軍行動社会科学研究所のテクニカルレポートのまとめ(1)が分かりやすかったのでメモ。
▼こんなことを知りたい人向け
・相手の立場に立って考えること(=SPT)のメリット
・SPTをやるときに気をつけるべきこと
・効果的なSPTのプロセス
▼相手の立場に立って考える(Social Perspective Taking = SPT)とは?
相手の立場に立って考えるとは、
認知的スキルと情緒/感情的スキルの組み合わせと、その活動に従事する傾向や動機を必要とするスキル
他者が何を考え、何を感じているのか、状況についての彼らの認識を把握するために使用する【戦略】と考える研究者(Gehlbach)や
他の人の視点を取るということは状況が他の人にどのように見えるか、その人がどのように認知的、感情的にその状況に反応しているかを理解する能力であり、他者の立場に立って他の人が自分とは異なる視点を持っているかもしれないことを認識する能力である
一種の【社会的意識の必要性】を指摘する研究者(Johnson)もいます。
要するに、
「他者が何を考え、何を感じているのかを認識すること」を相手の立場に立って考えるとしてます。
そしてそれは、パースペクティブ・テイキングまたはソーシャル・パースペクティブ・テイキング(Social Perspective Taking = SPT)と呼ばれたりします。
もともとSPTの発達調査は【幼少期の発達状態】や【道徳的発達の尺度】の観点から調べられていました。
具体的には
・自己の概念がどのように形成
・他者視点がどうやって発達
・文化的規範や価値観がどのように影響を与えるか
・自己中心性の志向性の影響はあるか
などです。
自己認識の感覚は3歳から6歳くらいから身についていき、10代前半になると相手の立場を意識するようになるそうです。
認知能力や情緒能力の発達によって「相手の立場に立って考える能力」というのは発達していくというのが基本的な考え方のようです。
▼SPTのメリット
コミュニケーションを良好に行うためには相手のことを考えられなければなりません。つまり、正確な視点を持つことは、信頼や尊敬、良好な関係につながる可能性があるのです。
研究によると、SPTは他者との関係性に及ぼすいつくかのポジティブな影響があるといわれます。
・協力の促進
・道徳的推論の発達
・利他的行動の奨励
・偏見の減少
・紛争の回避
これらのメリットはすべて現代の活動環境でめちゃくちゃ重要です。SPTに参加するように指示された人は、挑発されても攻撃的な反応が少なく、他の参加者は利他的な行動の増加を示し、SPTの正確さは学校内の多くの対人関係において重要な役割を果たしているということもわかっています。(2)
▼SPTのための4つのステップ
研究者のReeder と Trafimowsは「人は正確な遠近法による予測を行うために想像力、共感力、認知スキル、知識を必要としている」と主張しています。
これから紹介する4つのステップはそれらを踏まえ、シンプルで柔軟性があり様々な状況で活用することができる方法です。
では、どのようなステップなのかそれぞれ見ていきましょう
Step 1. “わかっていないことを理解する”
自分が知らないことや、相手の行動に関する最初の推測が間違っている可能性があることを認識しなければいけません。
よくありがちな3つのバイアス(認知の歪み)について見ていきます。
①根本的な帰属の誤り(the fundamental attribution error)
→自分の身に起こったことは状況のせいにするのに、それが他の人のところで起こった場合には、その人の性格の問題だと認識してしまう、というもの
システムの問題を人の問題だと思い違いする感じ。「テストの点数が悪かったのはあなたの頭が悪いからよ」とする感じ。もしかしたら体調が悪かったり環境に原因があったかもしれないのに本人のせいにしてしまうのよくありますよね。
②素朴実在論(naïve realism)
→この世界は、自分の見たままに存在するという考え方
自分は客観的に現実を見ることができているという思い違い。「私は正しい、あなたが間違っている」という感じです。
③確証バイアス(confirmation bias)
→思い込みや信念から生じた仮説を検証するために自分にとって都合の良い情報ばかり集めてしまう傾向性のこと
人間は先入観や思い込みがあるという前提で「自分が間違っているかもしれない、理解できていないかもしれない」という視点でコミュニケーションを取るのが大事。決めつけはダメ!ってことですね。
Step 2. “情報から仮説を立てる”
コミュニケーションで相手の話を聞きながら「相手はこう思っているのかな」「こう感じているのかな」という仮説を立てます。
話の中で相手について複眼的かつ柔軟に考えるのがポイントです。ここでも自分の思い込みに囚われた仮説を立てていないかという視点が必要になってきます。
Step 3. “仮説の検証”
コミュニケーションは、理解度の確認、共通項の作成、仮説の修正、誤ったものの反証と破棄に用いられます。
ステップ3では、より理解を深めるためのコミュニケーションチャネルを開く動的な会話を行います。
おすすめは【アクティブリスニング】です。
積極的傾聴を使って自分の認識や仮説が正確なのかを確認し、必要なら情報を修正、再構築していきます。
Step 4. “結果に投資する”
ステップ3の仮説検証を活用することで、対人関係や信頼関係を高めていきます。自分の仮説が正しいかどうかを確認することに投資し、みんなが同じように一致しているかどうかを確認し、お互いの理解を深めたり、みんなの協力が必要な大きな問題解決を行ったりしていきます。
以上の4ステップです。
この4つのステップをビデオケースを通して学び、個人ワーク、ペアワーク、グループディスカッション、分岐演習、ロールプレイなどの活動を通してSPTを練習します。
コネチカット大学のGlobalEdプロジェクトでは、この方法を使用することで、協調性、交渉力、リーダーシップの精度と習熟度が向上することが示されたそうです。
▼まとめ
相手の立場に立って考えるための4つのステップは
①わかってないことを理解する
②情報から仮説を立てる
③仮説の検証
④結果に投資する
SPTの練習の良いところは、コミュニケーションスキル、仮説を立てるスキル、そして他者の動機、思考、感情、行動についての誤った仮定につながる主な知覚バイアスへの認識が高まることです。
僕たちは思っている以上に自分のことも相手のことも理解が正確でないのかもしれません。特に相手のことは相手にしかわかりません。自分にできるのは想像力と共感力を働かせて相手の気持ちに思いを馳せ、コミュニケーションによってそれが正しいかを確かめることだけなのかもしれませんね。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す