所得税の累進課税強化で平等は生まれるか?

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私たちの暮らしには税金が密接に関わっています。今回は特に私たちの暮らしの中でも特に親世代にとって関わりの強い所得税について書きたいと思います。

まず、累進課税とは、収入が増せば増すほど支払う税金の額が増える制度で、現在の日本でも取り入れられている制度です。
この制度を取り入れた根底には、格差の是正という大義名分があります。

ではこの制度を強化する事は果たして本当に格差の是正に繋がるのでしょうか。
結論から言えば私はこの制度を強化することは格差の是正に繋がると考えません。これには二つの理由が挙げられます。
一つ目の理由は、中流層以下の人々からチャンスが奪われてしまうという事です。これはどういう事かというと、所得税の累進課税を強化するという事は富裕層の人間が大きな収入を得た時はもちろんですが、中流層以下の人々がビジネスなどで大きな収入を得た時も高額な税金を支払う義務が課されるという事です。これによって、優れたビジネスアイデアやイノベーションを起こす可能性を持った中流層以下の起業家が潤沢な資金を得る事が出来なくなります。

これによって中流層以下の人々がビジネスによって富裕層の人間に食らいついていく機会を奪われてしまうという弊害が生まれる危険性をはらんでいます。
そして二つ目の理由は、職種により有利不利が分かれ、職業間での格差が拡大するという事です。皆さんはクロヨン(9・6・4)という言葉をご存知でしょうか。これは税務署による課税所得に捕捉率に対する不公平感を表す俗語です。

この言葉が生まれる理由を述べる前に前提として、まず所得税というのは収入のうち、どこが課税対象になっているのかという事から説明します。所得税というのは、総収入から経費を差し引いたものが課税の対象となります。これを踏まえた上で先ほどのクロヨンの話へ戻りたいと思います。

クロヨンというのはク=9、ロ=6、ヨン=4の事を示しているのですが、これは税務署の課税所得の捕捉率を給与所得者、自営業者、農林水産業者に当てはめたものです。

つまり、本来課税対象とされるべき所得を給与所得者は9割、自営業者は6割、農林水産業者は4割、税務署に把握されているという事を表しているのです。
以上の様な俗語が生まれている事からも分かる通り、職種が違うだけで最大で2倍近い所得捕捉率の差が生まれ、これにより不公平感を抱いている人がいるという事なのです。
この背景にはサラリーマンの世界で広まっている雇用主が税金を代理で支払う源泉徴収というシステムがあるのですが、問題は残りの『ロヨン』です。もちろん全ての方というわけではありませんし、額には限界があるのでしょうが、自営業者の方などは売り上げや経費について自分たちである程度コントロールできるというアドバンテージを持っているのです。

例えば、車を買う時には商用車として経費で落としながらも私用で使ったり、帳簿に残らないところでキャッシュの流れが起きたり等、少なからずグレーな節税対策が行われているのです。

先ほども述べた通り、全ての方がやっている訳ではないでしょうし、額も大きくなれば脱税として税務署が動くでしょう。
しかし、少額であればわざわざ人件費を割いてまで摘発されるという事は少なく、これが不公平感を生んでいるのではないでしょうか。
最後に。今回私は『所得税の累進課税強化で平等は生まれるか』というテーマで記事を書きましたが、やはり累進課税強化によって平等が生まれるとは考えません。確かに所得の多い者から多くの税金を徴収するというシステムは一見すると効率的かつ理想的にも思えます。しかし、これには上記に示した様な欠陥が含まれており、この制度を強化するという事は賢明な判断では無いでしょう。それに、収入が多いというのはお金を持っている指標になりますが、あくまでもただの指標に過ぎません。それであれば、私は所得税の累進課税を強化するのではなく、固定資産税をはじめとした『資産そのもの』に対する課税を強化すべきなのでは無いかと考えます。

所得というあくまで指標的なものを重視するのではなく、資産という本質的なものを重視して課税の対象にすべきであり、それを実現出来てこそ、本当の意味での平等が訪れるのでは無いでしょうか。
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