第43回:日経平均株価の予想にはどのような期待が織り込まれているか考察してみました(2023年中間アップデート)

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第43回:日経平均株価の予想にはどのような期待が織り込まれているか考察してみました(2023年中間アップデート)

この度はお読み頂きまして誠に有難うございます。Taskaruです。本ブログではコーポレート・ファイナンスに関わる話題を幅広く取り上げていきたいと考えています。

さて、2023年の年初に「2023年の日経平均株価は25,000円~32,000円程度のレンジで推移するということが専門家の意見」に関して、どのような期待値が含まれているかコメントしました。

【前回ブログ】

そこから直近までの推移として、日経平均株価は32,265円(6月9日時点終値)となっております。水準としては年初の専門家予想のレンジから外れてはいない印象もありますが、早くも6月、2023年も折り返し地点が来ていることに照らし、改めて、どういった期待値が現状の日経平均株価に入っているか、あるいは、年初からどういった期待値が変化しているのか、アップデートとして考察したいと思います。

※ディスクレーマー:本ブログで紹介するのはあくまでもコーポレートファイナンスの学習のためのコンテンツであり、具体的に日経平均株価を予想するものではありません。あくまでも日経平均株価を”理論株価”と見立てた場合、その想定の前提となるような、例えば利益成長の期待といったことについて考察するものです。また、購入や売却等について勧誘するものでありません。

さて、前回のブログの一部抜粋となりますが、まずは3つ重要な図表並びに論点を紹介します。

1つ目は「日経平均株価の理論株価算出モデル」です。詳細は前回ブログをご参照頂ければと思いますが、ポイントとしては、理論株価を計算する枠組みとして、配当割引モデルを応用したものとなります。
TOPIX_Valn_Jan2023.png

2つ目に、上記から導き出される結論として、専門家予想レンジの中間値である28,000円程度の日経平均株価を支える理論的な根拠として、「28,000円半ばに至るためには、日本企業のEPSが今後5%で安定的に成長し、50%の総還元性向を維持し、中長期的にも3%のスピードで安定的に増配していく必要がある」ということが言えるという点です。詳細については前回ブログをご参照ください。

3つ目に、パラメーターの変化が結果にどのような影響を及ぼすか分析するためのシミュレーション・テーブルです。1つ目のテーブルから、パラメーターとしては、①リスク・フリー・レート、②EPS成長率、③配当性向、がありますが、年初において、シナリオ分析として動かすパラメーターについて、①リスク・フリー・レートと、②EPS成長率ととしており、①配当性向は変わらないもと想定していました。
Sensitivity_analysis_Jan2023.png

上記を念頭に、ここから6月時点の中間アップデートの話題に入っていきます。確認するところとしては、理論株価算定にあたってのパラメーター、①リスク・フリー・レート、②EPS成長率、③配当性向、に何か変化がないかを考えることが肝要だと思料します。

順番として、比較的にシンプルなところから行くと、

まず、①リスクフリーレートについて。年初時点の分析では0.5%としていましたが、ここは概ね変化はないかと思います。リスクフリーレートについては日本銀行の金融政策次第になりますが、今のところ大きな変化は起こっていないものと考えています。

次に、②EPS成長率について。年初時点の分析では年率5%程度での安定ていきな成長としていましたが、ここも概ね変化はないように考えています。公開資料である「ダイワ日本株ウィークリー」(2023年6月5日付)によれば、6月2日時点でのTOPIX/12カ月先予想利益ベースの予想EPSが157.2円となっています。ちなみに、年初時点の前回ブログでは159.8円となっていたので、利益の先行きに関する期待に大きな変化はないものと推察します。

最後に、③配当性向について。私はここの期待が変わったのではないかと考えています。具体的には、年初時点では配当性向(総還元ベース)で50%という想定をしていましたが、野村證券「日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(23~24年度)」(2023年6月7日付)によれば、22年度の総還元性向が54.9%と前年比で7.3%ポイント上昇したことが指摘されています。つまり、年初のモデル上の想定を上回る形で株主還元がなされている様子が見られます。

また、その背景としては「(1)還元の原資となる利益の伸長、(2)22年度期中において自社の株価が割安と判断する企業が多かったこと、(3)1月30日に東証が中長期的な企業価値向上に向けた取組の動機付けについて公表したこと、などが挙げられる」とコメントされています。

私の見解/肌感覚としても、やはり上記の(3)を念頭に、日本企業においては、いわゆる「PBR1倍割れ」を是正するための株主還元施策の強化が行われるケースが増えたように感じています。

以上を踏まえ、6月のアップデートとして、パラメーターの変化が結果にどのような影響を及ぼすか分析するためのシミュレーション・テーブルにおいて、変数を②EPS成長率、③配当性向とした場合、以下の通りになります。

つまり、同じEPS成長率の期待感(例えば、EPS成長率5%)であったとしても、配当性向が50% → 55% → 60%と推移するにつれて、理論的な日経平均株価は28,300円 → 31,100円 → 34,000円という推移する可能性があります。あるいは、違う見方をすると、EPS成長率が5%"以上"程度が維持される前提とすると、配当性向が55%以上となる場合においては、日経平均株価は30,000円前後を下値として底堅く推移するかもしれません。

(2023年6月時点アップデート版)
感応度分析_2023年6月.jpg

もちろん、逆に言えば、仮に米国発の景気不安などをきっかけとして、EPS成長率が下がれば、理論株価も連動して下がる可能性があります。

ただし、こうした前提の変化については、状況に応じて適宜精査することになるかと思います。また、こうした想定が正しいかどうか、という点については、各々の投資家が判断することになりますので、私の分析としては以上までとなります。

最後までお読みいただき、誠に有難うございます!

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【ディスクレーマー】
将来財務数値に関する予想並びに財務数値実績について、作成にあたって各種開示資料は参考にしていますが、内容や情報の正確性については一切保証しません。また、市場データ等についてもその完全性は保証しません。本資料はコーポレート・ファイナンスに関連する学習のための参考資料であり、便宜的な仮定や前提が含まれていることにご留意ください。また、特定の株式の購入や売却等を勧誘するものではありません。本資料の利用によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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