ツイノベ 251-255

記事
小説
私が幼いころ、母に「マニキュアを塗ってほしい」とせがんでいたそうだ。母はいつも「その長い爪には似合わないわよ」と口実に、私の爪を切っていた。大人になった今、三日月を見ると思い出す。普段から化粧をしない母の細い指を。薄化粧をしたあの朝の、静かに眠っていた母の横顔を/№251 薄化粧

痩せる秘訣を知るために友人の家へお邪魔した。「食べ過ぎはよくないよ」と言われたけれど、出されたデザートがあまりに美味しかったので何口も食べてしまう。すると体が軽くなるのを感じた。軽くなる。軽くなる。あれ? 気付けば、骨と皮だけになっていた。「だから注意したのに」/№252 夕闇が丘③

「反省するまで戻りません」そう言って先生は職員室に帰ってしまった。「別に謝りに行かなくても良くない?」先生はノイローゼで学校を辞めることになった。同窓会で先生が自殺を図ったことを知る。それを聞いた同級生達が笑う『反省するまで戻りません』先生はまだ帰ってこなかった/№253 反省会

「病葉って知ってる?」と、入院していた彼女から聞かれたことがある。秋の落葉期を待たずに、病気によって夏に変色してしまう葉のことだ。彼女は病葉のような人だった。公園のベンチに座る。翠緑をした炭酸飲料の気泡が弾けて、どこへともなく消える様をただただ見ていた。夏だった/№254 病葉

最近は透明飲料ブームだ。新商品の透明飲料を飲みながら高校へ向かう。教室に入ると私をいじめるグループが無視をしてくる。呆れながらも隣の友人に声をかけたけれど返事がない。どころか、出席確認の際に先生まで「今日は休みか?」と言うのだ。どうしてみんな私を無視するのだろう/№255 透明飲料

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