ツイノベ 196-200

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不要不急の恋が自粛されてから、この国の失恋率は8割を超えてしまった。今では恋愛支援施設も人で溢れて、ほとんどが機能しなくなっている。澱を掻き分けていく櫂が壊れた私達は、感情の行く末さえも失っていく。学校で、職場で、ネットで。生まれるはずだったいくつかの物語が消えていった/№196 不要不急の恋②(百景 46番)
山登りをしていると、つる草で生い茂った小屋を見つける。伸びて絡んで移ろって。私がいてもいなくても季節は流れていく。そんな当たり前のことが少しだけこわかった。私の、知らない場所で、川は流れて。私の、知らない場所で、鈴虫が鳴いて。私の、知らない場所で、きっと、誰かが自殺して/№197 砂漠の花(百景 47番)
「海ができた理由って知ってる? 最初は一滴の水だったのよ。水が岩に恋をして何度もアタックしたの。フラれる度に水は涙を流して、涙が波になって、何度も何度も砕け散って海になったのね。だから海はしょっぱいの」と、くだらない話をあなたにするだけで嬉しかった。私の目から海が生まれた/№198 泪の海(百景 48番)
かがり火の側にいる旅人の隣に座る。旅人は星を眺めながら「私は夜が明けたらこの国を去ろうと思います」と告げた。あんなにも朝が恋しかったのに、こんなにも夜が明けてほしくないと思ったのは初めてだ。朝のない国で生まれて生きることができたのなら、別れの夜明けなんて知らなかったのに/№199 夜の国(百景 49番)
「砂漠のどこかに言葉を失うほど美しい花がある」という噂を聞いた。長旅の末に見つけると花は枯れようとしている。どうせもうすぐ失ってしまう僕の命だ。わずかな飲み水を花に与えると、光の粒子を振り蒔きながら花が育っていく。砂漠の中で悠然と輝く姿に、僕はただ静かに手を伸ばしていた/№200 砂漠の花(百景50番)



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