合同会社だと法人口座開設ができない?

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ビジネス・マーケティング
株式会社に比べて少ない費用で設立できるということで、
このところ「合同会社」として起業するケースも増えています。
ただ合同会社は比較的新しい企業形態で、
「法人口座開設ができない?」などの真偽不明の情報が拡散されていたりします。
そこで、合同会社だと法人口座開設ができないのかどうかについて、
詳しく見ていきたいと思います。

本当に合同会社だと法人口座開設ができない?

最初に結論を言ってしまいますが、
合同会社でも法人口座開設ができないといったことはありません。
合同会社は比較的新しい企業形態ではありますが、
「会社法」で「会社」と定められている4つの内の1つです。
そのため合同会社は「法人」と見なされるので、
金融機関で法人口座開設ができるというわけです。
ちなみに会社法で会社と定められている残りの3つは
 ・株式会社
 ・合資会社
 ・合名会社
です。
また「社団法人」や「財団法人」など、
会社法以外の法律で法人と定められている会社や組織もあります。
法人と見なされていれば法人口座を持つことができるので、
社団法人や財団法人なども法人口座開設は可能です。
<h4>合同会社とはどんな会社?</h4>
合同会社は法人口座開設できますが、
そもそも「合同会社って何?」と思っている人も居るかもしれません。
株式会社は、会社の持ち主である「株主」と会社を経営する「役員」が別で、
役員は株主から経営を委託されている形になっています。
それに対して合同会社は、株式会社で言うところの株主と役員が同じで、
出資者自らが経営を行う形となります。
そのため役員と従業員の区別が無く、
合同会社に所属する人は全員「社員」となるのです。
ただ株式会社でも役員が出資することが可能なので、小規模な株式会社だと
株主と役員が同じという実質的な合同会社になっているケースもあります。
株式会社を設立するのに免許税や手数料などで25万円程度かかるのに対して、
合同会社は10万円程度で済みます。
さらに登記にかかる期間も、株式会社だと10日以上かかるところ、
合同会社だと4~5日程度と短くなっています。
なので最近は合同会社として起業して、事業が軌道に乗ったら株式会社に
形態を変更するといったケースが増えてきているのです。

合同会社=小規模は間違い?

一般的に、規模の大きい会社は株式会社で、
比較的規模の小さい会社が合同会社といったイメージを持たれています。
それは一概に間違ってはおらず、
実際に合同会社には小規模な会社も少なくありません。
ただ、外資系で世界的な大企業の日本法人が合同会社というケースも結構多いです。
例えば「GAFA」の内
 ・Amazon
 ・Google
 ・Apple
の日本法人はいずれも合同会社となっています。
ちなみに「GAFA」のもう1つ「Meta(旧Facebook)」の日本法人は、
Facebook株式会社です。
Amazonなどの世界的企業の日本法人が合同会社なのは、
1つには設立にかかる費用と時間が少なくて済むからです。
また経営に関わる重大な事項を決定するのに株主に諮る必要が無く、
迅速な意思決定ができるのも外資系日本法人が合同会社となっている理由の1つです。

株式会社より合同会社の方が法人口座開設が難しい?

合同会社が法人口座を作れるとしても、
株式会社より「ハードルが高いのでは?」と思われていたりもします。
金融機関によっては、株式会社より合同会社の方が法人口座開設の審査が厳しい
といったことがあるかもしれません。
しかし株式会社でも法人口座開設の審査は決して甘くありませんから、
法人口座開設の難易度は株式会社でも合同会社でも大きく違わないと思います。
株式会社でも合同会社でも簡単に法人口座が作れる現状ではないので、
法人口座開設を申し込む際にはしっかりと準備しておくことが重要です。

合同会社が法人口座開設を断られる理由

各金融機関は法人口座開設の審査基準を公表していないため、
合同会社が法人口座開設を断られる明確な理由は分かりません。
ただ、合同会社に限ったことではなく「一般的な話」として
法人口座開設を断られる理由は推測することができます。
まず1つには「本社住所」で、
法人登記の本社住所と実際の事業所の住所が違うといった場合です。
会社を作るのは良いけど資金的に余裕が無くオフィスが借りられないので、
本社を自宅とするケースも少なくありません。
しかし自宅を本社として法人登記すると、自宅の住所を公表することになってしまいます。
さすがに自宅の住所を公表するのにはデメリットも多いですから、
「バーチャルオフィス」で借りた住所を本社住所として登記したりします。
そうすると、法人登記の本社住所と実際の事業所の住所が違うといったことが起こります。
金融機関とすれば、本社住所と実際の事業所の住所が違うと
「本当に事業実態があるのか?」と疑いたくなります。
金融機関は法人口座を悪用されると困りますから、
事業実態があるか疑わしいと法人口座開設を断ることになるのです。
バーチャルオフィスを利用することは全く問題ありませんが、
法人口座開設の審査では不利になることも多いです。

資本金が少ない
合同会社が法人口座開設を断られる理由としては、
「資本金が少ない」ということも挙げられます。
現在は会社設立の際の資本金に下限がありませんから、
資本金1円でも会社が作れてしまいます。
しかし資本金は「会社の運転資金」であり、いくら1円で作れると言っても、
実際に資本金が1円しかない会社はありえません。
そのため、1円でなくても資本金が少なすぎると、「実態のない
ペーパーカンパニーかも」と疑われて法人口座開設を断られてしまうわけです。
また資本金が少なすぎると、
すぐに債務超過となって設立から数年もしない内に廃業してしまう懸念も拭えません。
廃業した合同会社が口座をすぐ閉鎖してくれれば良いですが、
お金欲しさに所有している法人口座を反社会的勢力に売ってしまうかもしれません。
そうすると法人口座が悪用されるので、
資本金が少なすぎるのは法人口座開設では不利になるのです。

事業目的が明確でない

法人口座開設を断られる理由として意外と多いのが、
「事業目的が明確でない」ことです。
合同会社に限らず会社を設立する際にはルールブックとなる「定款」を作成して、
その中に事業目的を記載することになります。
基本的には定款に記載されている事業目的以外の事業を行うことができないため、
将来的に行うかもしれない事業も記載するのが一般的です。
ただあまりにも事業数が多かったり、1つ1つの事業に関連性が無いと
「何の会社なのか」が第三者に分かりづらくなってしまいます。
金融機関としても「何をするのか分からない会社」に口座を持たせるわけには
いきませんから、事業目的が明確でないと法人口座が作りにくくなります。

事業目的が不適格

事業目的が明確でも、
事業目的自体が法人口座開設に「不適格」と見なされることがあります。
実際にあった例としては、「農場経営」を事業目的とした東京都内に本社を構える
会社が事業目的が不適格として法人口座開設を断られたそうです。
都内に農場を作るのは難しいですが、オンラインで繋げば東京に居ながらにして
地方の農場を経営することはできなくはありません。
しかし金融機関の担当者は「都内に農場なんて作れない」→「都内の会社が
農場経営を事業にするのはおかしい」と考えて法人口座開設を断ったのです。
これは極端な例ですが、「占い」とか「出会い系サイトの運営」、「貸金業」なども
法人口座を開設するには不適格と見なされる可能性があります。

必要な許認可を得ていない

許認可が必要な事業を行うための合同会社なのに、
必要な許認可を受けていないと法人口座開設は無理です。
当然ですが、
許認可が必要な事業を許認可を受けずに行うことは法律的に許されません。
と言うことは、必要な許認可を受けていないと
「本当にこの事業をやる気があるのか」と疑われてしまいます。
許認可は自治体や警察署など官公庁に申請して受けるもので、
誰でも簡単に受けられるものではありません。
ですから許認可さえ受けていれば、「ちゃんとした会社」であることを証明できますし、
実態があることの証明にもなります。
許認可が必要な事業はたくさんあって、
むしろ許認可無しで行える事業の方が少ないのではないかと思えるほどです。
なので合同会社を作る際には、会社で行う事業に許認可が必要かどうかを
しっかり確認しておかないといけませんよ。

合同会社が法人口座を作るには

合同会社が法人口座を作るには、
まず先に紹介した「断られる理由」を1つずつ潰していくことです。
バーチャルオフィスを利用せずに登記の本社住所と営業所の住所を一致させるか、
バーチャルオフィスでも法人口座が作れる金融機関を探すかです。
それから資本金については、いくらなら十分とは言えませんが、
少なくとも50万円ぐらい、できれば300万円ぐらいは用意しておきたいところです。
ちなみに、会社設立後に資本金を増やしたり減らしたりするには、
実質的に法人口座が必要となっています。
ですから資本金が少なくて法人口座が作れない場合は、
資本金を増やすことができず手詰まりになる恐れがあるので特に注意しましょう。
定款の事業目的は、メインとなる事業について具体的に記載し、
将来行うかもしれない事業は簡潔にまとめておきます。
そうすることでメリハリがついて、
「この会社が柱となる事業」が第三者から見てもハッキリ分かるようになります。
許認可については、事前に行う予定の事業に必要かどうかを確認しておき、
必要であれば速やかに申請しておきましょう。

「合同会社」にした理由を説明できるようにしておく

合同会社は2006年から可能になった新しい企業形態で、正直なところ、
現状では株式会社に比べるとまだまだ社会的信用が低くなっています。
ですから法人口座開設を申し込む際には、「株式会社ではなく合同会社にした理由」を
しっかり説明できるようにしておくことも重要です。
「何となく」や「設立費用が安いから」では金融機関に信用されず、
合同会社であることが法人口座開設を断られる要因となってしまいます。
例えば「資金的に余裕が無いため、設立費用を抑えて事業資金に
少しでも多く回すために合同会社にした」といったような感じでしょうか。
さらに「事業が軌道に乗れば、合同会社から株式会社に移行する」といった
将来的な展望も付け加えられるとなお良しですよ。

ホームページを作る

意外に思うかもしれませんが、
法人口座開設の審査では「ホームページ」が重要な役割を果たします。
今や個人事業主でもホームページを持っているのが当たり前となりつつありますから、
合同会社がホームページを持っていないと不自然に感じられてしまいます。
またホームページには通常、屋号や代表者名、本社住所、電話番号やメールアドレス
といった連絡先、事業内容、資本金などの会社情報が記載されています。
ですから金融機関の担当者は、ホームページで法人口座開設を申し込んできた会社の
基本的な情報がチェックできます。
さらにホームページの存在は、会社に事業実態があることを証明してくれます。
ホームページがあれば良いというわけではありませんが、
法人口座開設にホームページが大きな役割を果たすのは事実です。

法人口座開設の審査がゆるい金融機関に申し込む

設立したばかりの合同会社が、
いきなりメガバンクに法人口座開設を申し込んでも断られる可能性が高いです。
ですから、ある程度会社として実績を積み上げるまでは、
比較的審査がゆるい金融機関で法人口座開設を申し込むのがおすすめです。
一概に「この金融機関の審査がゆるい」とは言えませんが、メガバンクよりは地方銀行・
信用金庫の方が審査がゆるく、ネット銀行はさらに審査がゆるいとされています。
なので設立して間もない合同会社は、
ネット銀行で法人口座開設を申し込むのが無難なのではないでしょうか。

個人でメインにしている金融機関も狙い目

メインで使っている個人口座がある金融機関に、
自身の合同会社の法人口座開設を申し込むのも1つの方法です。

個人で取引額が大きくないと言っても、メインとして利用してくれている顧客を
金融機関としては無下に扱うことはできません。
ですから、個人でメインとして利用している金融機関に申し込むことで、
法人口座が作れる可能性があります。
それが大手の都市銀行であっても可能性がありますから、
ダメ元で個人のメインの銀行に申し込んでみると良いですよ。

ゆうちょ銀行は法人口座開設の審査がゆるいが・・・

大手都市銀行には含まれないものの、
顧客数や取扱額は大手都市銀行と同等以上なのが「ゆうちょ銀行」です。
ゆうちょ銀行でも法人口座を作ることができ、
しかも他の金融機関に比べてかなり審査がゆるいとされています。
しかし、いくら審査がゆるくてもゆうちょ銀行での法人口座開設はおすすめできません。
その最大の理由は、ゆうちょ銀行には現状で法人向けの貸付制度が無いからです。
個人向けの貸付制度は認可されているものの、
法人向けの貸付制度は金融庁の認可が下りていません。
将来的には法人向けの貸付制度が認可される可能性もありますが、
現状ではゆうちょ銀行で法人口座を作っても融資が受けられないのです。
法人口座開設と融資の申し込みは実質セットみたいなもので、法人口座を持っている
金融機関以外では融資が受けられる可能性がかなり低くなってしまいます。
ですから資金繰りが苦しくなることを想定して、
できれば法人向けの貸付制度がある金融機関で法人口座を作るのがベターです。

まとめ

合同会社だからと言って法人口座開設ができないということはありません。
しかし株式会社と同様に、合同会社の法人口座開設のハードルは高く、
簡単には作れないと思っておいた方が良いでしょう。
とは言え法人口座が無いと事業がスムーズに行えません。
なので紹介した「断られる理由」や「開設のポイント」などを参考にして、
法人口座開設を申し込む前にしっかりと準備してくださいね。

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