こんにちは、アイデア考房です。
仕事柄、新しいビジネスを始めようという人たちに関わらせていただくことがしばしばあります。高い目標に向かって進んでいる方々の活動に触れさせてもらうことは、多くの学びがあってとても感謝しています。
多くの方々は高い志や深い業界・技術の知識を持って、自分の目標に慢心しているのですが、時々、第三者の視点からみて、そこでいいのかな?と思う時があります。
能力ではとても優秀な人たちでも、自分の考えていることにハマってしまうというか、判断に何らかのバイアスがかかってしまう。なぜ、何だろうと思うことが時々ありました。
誰も参入していないからチャンスありと考えてしまう
ある電子デバイスを開発をビジネス化することを目指していた方々。学問的な知識はとても高いのですが、その機能はどこに使うんだろう。ということで用途を調べるためにご相談を受けました。
とても理解するのが難しい技術だったのですが、その性能を達成しているのは自分たちだけだとか。素人ながらに、同じような機能は他にもありそうなのですが、性能が異なるということです。
その領域には誰もいない。確かに、マーケットとして空白地帯で空いているのかもしれません。でも、他社がそこを狙わないのには理由があるかもしれないです。また、デバイスのような部品はその周辺装置やインターフェイス、また素材なども、供給する企業が揃っていなければ市場は開けません。自分達だけ先に行っても、ビジネスはすぐには花開かないです。
そのようなことは、優秀な方々なら理解されていると思うのですが、技術に誇りを持っているゆえに、なんらかの判断のずれを生じさせているのではないかと思いました。
判断を迷わすバイアス
最近、書店で行動心理学についてやさしく解説している本を見かけます。何冊か手に取ってみて、なるほど、先にのべた判断のずれは、人間特有の感情によるバイアスなのではないか、と思うようになりました。
行動経済学は過去からの経済学と異なり、人を機械のようにいつも合理的な判断ができる個体として捉えるのではなく、人は環境や感情でその行動が影響を受けるということを前提としているものらしいです。
「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」によると、人にはいくつかのバイアスがあるようです。その中でもアイデアにおける判断を迷わすだろうと気になったのが「回想バイアス(つじつま合わせ)」というものです。
このバイアスは簡単にのべると
・人は後付けで行動を正当化する
・この正当化は個人・組織でもおこる
ということみたいです。
先の例にもあったような、新しいビジネスを考えるときに、自分達の技術が優れているから、ビジネスがうまくいくはずだ、という思考は後付けで正当化をしているよう見えます。また、それらが複数人が集まる形で組織として共有されるとより強いものになり、自分達の考え方をサポートする情報を選択してしまうようになるように感じます。
思考を左右する二つのシステム
もうひとつ、「選択の科学」という書籍でのべられていたことがあります。それは、人は思考するとき、あたかも2つの脳で考えている状態になる場合がある。その一つは「自動システム」というもので、すばやく、たやすく、無意識のうちに作用します。もう一つは「熟慮システム」で論理や理性により言葉通り物事を熟慮するシステムです。
注目するべきは、私たちはしばしば、一つ目の「自動システム」に思考を大きく影響されてしまうこと。この「自動システム」は、人が成長してきた環境や触れてきた体験により大きく影響を受け、そして無意識に働いてしまうということです。
これらを考えると、新しいアイデアを考えるとき、アイデアを自分自身で評価するときの、バイアスが考えられます。新しくビジネスを起こすことを目的としてアイデアを考える人たちは、基本的には優秀で、過去からもある一部の優秀なグループに所属していたのかもしれません。そうなると、希少なものに価値を感じる。他の大勢が属していないグループに属すること、空白である領域に価値を見出すことも考えられます。
これらの思考が自動システムにより判断の基礎になってしまった場合、その後の熟慮システムではその判断をサポートする考えだけが選択されてしまう可能性もあります。
いつも思っているのですが、私たちが受ける教育での才能と、ビジネスでの商才は異なっているのではないかと思うこともあります。もちろん、私自身は大した商才はありませんが、ビジネスがうまいな〜、と思う方々です。
これは勝手な思い込みかもしれませんが、ビジネスをうまく舵取りする、成功に導くというのは、その人の思考パターン、特に過去の環境や経験により培われた無意識の自動システムによるのではと思ってしまいます。無意識だからこそ、その判断を疑うことなく信じきってしまいます。
実はこんなことを思っている私自身にもこの「自動システム」は存在しているはずです。だから、自分の思考パターンは何かに偏っているのだと思われます。
よいアイデアを判断するために
この「自動システム」の判断は日常生活において、大した影響のない事象に対してならいいのですが、ビジネスの判断とか、実行するアイデアを選択する場合には、なるべく排除したおきたいものです。
先に出てきた書籍などからヒントを探すと、できるのは判断の仕組みを自分の外側に置いてみること、みたいです。
それは
・組織としては判断の仕組み、基準を明確にして逐次それらを見直すこと
・個人としては第三者の考えに触れ、思考パターンを疑ってみること
・自分たちとは異なる考え方を持つ人の意見を素直に取り入れてみること
などなのではないかと思います。何かにおいて、自分自身が納得するよいアイデアを生み出すのは、成果を保証するものではないかもしれません。自分のバイアスに合致した答えが必ずしもベストではないからです。
アイデアを創出し、判断する仕組みを自分の考えを生かしつつ、自分が持つ無意識のバイアスに影響されすぎない、仕組みづくりを考えたいものです。
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