国民的バスケ漫画でみる、高すぎる目標の弊害

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自分やチームのモチベーションを上げるために、あえて高い目標を掲げることがあります。それによってメンバーのやる気が出ると考えていますが、現実はその通りに動くのでしょうか?

場合によってはそうなるかもしれませんが、たいていはNo。むしろモチベーションが下がるなどの弊害が出ます。実際に国民的バスケ漫画では高すぎる目標の弊害が如実に表れているシーンがあります。

今回はそうした高すぎる目標についてみていきましょう。


目標が高すぎると、モチベーションが低下する

「高い目標を掲げれば、そこに向かってみんなが頑張るから、モチベーションもアップする」と思っている人は多いかもしれません。

ですが現実で起きることは逆で、目標が高すぎるゆえにかえってモチベーションが落ちてしまうのです。
理由は簡単で「苦行に陥ったら高すぎる目標がマイナスになる」からです。

気力や体力が充実しているときは高い目標を設定してもいいでしょう。ですが体力や気力が常に十分な状態にあるとは限りません。時には気力や体力が不足することもあります。

気力や体力が減っている状態で高い目標を見るとどうなるでしょうか?
最初に起きるのがやる気の減退です。高い目標を達成するには困難が付きまといます。気力や体力があれば「克服してやる」と思える高い目標も、気力や体力が失っていれば「うわぁ嫌だな」と思ってしまいます

こうした心の変化は、あくまでも一過性のものです。そのため休憩をとって回復すれば心のありようも変化して再び歩めるようになります。ですが高すぎる目標は休むことを許しません

疲れているにもかかわらず目標へと進ませることで、気力や体力はさらに減少。最終的には進めなくなるほど減って挫折することになります。


国民的バスケ漫画でも同様の現象がありました。バスケ部のキャプテンになった彼は「全国制覇」を目標に掲げます。

正直あの学校のメンバーには高すぎる目標です。バスケでスカウトされてその高校に来たわけではなく、ただバスケをしている学生なのですから。

案の定、全国制覇という目標のもとハードすぎる練習を課した結果、部員たちはどんどんやめています。この話はキャプテンが人材に恵まれていないことばかり注目されますが、目標という観点から見ると、そもそもキャプテンの目標設定が間違っているのです。

普通の公立高校での全国制覇は、現実的ではありません。有望な人材を集めている学校ならいざ知らず、普通の学校が技術や選手層で彼らに勝つのはまず無理でしょう。

もしも本気で全国制覇を目標にするならば、目標へのプロセスを具体的に逆算しないといけません。そして逆算に逆算を重ねて(論理的かつ客観的に計算することが必要)、今の自分たちへとたどり着けたときにようやく目標として作れるようになります。

もしも今の自分たちにたどり着けないのであれば、目標自体が誤っていることになります。

実際にキャプテンも、全国制覇をするという名の下で、成果が出るかもわからない猛練習をメンバーに課していました。その結果メンバーは次々と退部し、全国どころか目の前の試合にすら勝つことすらおぼつかない状態になりました。


他人の目標でやる気が出るわけない

目標で気を付けてほしいのは「自分がたてた目標」なのか「他人がたてた目標」なのか分類することです。

「どちらも同じ目標では?」と思った方もいるでしょう。ですが自分のたてた目標と他人のたてた目標は似て非なるものです。

結論から言うと「他人がたてた目標は大きな消耗」を引き起こします。理由は目標に対する動機がないからです。自分で自分に対する目標を立てた場合、目標を達成することで何かしらの報酬が得られるはずです。

「10Kg痩せて異性にもてたい」、「試合で買ってみんなに注目されたい」など。逆に「10Kg痩せたら異性にもてるどころか嫌われる」ことがわかっているのであれば、「10Kg痩せる」という目標は設定しません。

自分がたてた目標はそうした動機があるのですが、他人がたてた目標には自分にとっての動機があるでしょうか。当然ながらありません。ただただ目標がるだけです。

目標を与えられたとしても、その目標を達成する動機がないのであれば、目標を達成しようとは思いません。むしろ「なんでその目標を掲げたんだ?」と思われたり「がんばっているふりをするか」と非協力的になったりします

立場によっては目標を押し付けるざるを得ないこともあるでしょう。ですがその時は目標をそのまま押し付けるのではなく、各メンバーにとっての動機やメリットも一緒にセットして伝えるようにしてください。

バスケ漫画でもキャプテンは「全国制覇」を目標に掲げたのですが、本当にみんな納得した上で作ったのでしょうか?メンバーの様子を見ているとそうは見えません。キャプテンが一方的に掲げた目標である可能性が高いです。

とはいえキャプテンも「誰も反対しなかった」と反論するかもしれません。ですが日本は空気を重んじます。口には出さなくても心の中では反対していることがあります。(経験者は語る。)

実際に「お前とバスケやるのは息苦しいよ」といった人もいました。ここから彼らも内心反発していたことが伺えます。

メンバーがどんどん離脱していったのは厳しすぎる練習のほかに、「勝手に掲げた目標に付き合ってられるか」と思っていたのかもしれません。


正しい目標の建て方

ここまでは高すぎる目標の弊害についてみてきました。今度は正しい目標の建て方を見ていきましょう。大切なポイントは2つです。

1つ目は「ちょっと頑張れば達成できる」こと。大抵の目標には期間が設けられているはずです。正しい目標とは期間内に達成できる目標かつちょっと頑張る必要があるもの、となります。

期間内に達成できるは目標の上限、ちょっと頑張るは目標の下限設定といっていいでしょう。

論理的かつ客観的に見て、期間内に達成できない目標は設定すべきではありません。必ず期間内に達成できるものを作る必要があります。

同時に100%確実に達成できるものも目標にすべきではありません。目標にはメンバーを成長させることも含まれており、100%確実に達成できる目標ではメンバーの成長につながらないからです。

メンバーの成長を促すためにも「ちょっと頑張る必要のある」目標がちょうどよかったりします

2つ目は「過程を楽しませる」ことです。目標には動機があり、達成することで得られるものがあります。ですが目標を立てるときはゴールにある報酬の設定だけでは足りません。目標の過程も楽しめるようにする必要があります。

人のモチベーションとは一過性のものです。1日は保てたとしても1週間1か月以上維持することはできません。そのため目標の途中途中でモチベーションを補給させる必要があります。

例えばダイエットを目標とした場合、運動することをプロセスに加えるのであれば、体力アップや筋力アップが過程を楽しめる要因となります。

そうした目標についた時だけでなく、目標の途中途中にも楽しめる何かを用意してください。


余談、キャプテンの建てた目標が達成できた理由

話をバスケ漫画に戻します。キャプテンの掲げた全国制覇の結末についてみていきましょう。

最終的には全国制覇となりませんが、日本一強い学校を倒したことによりある意味で達成したことになります。

こうしてみると彼の努力は報われたとも言えます。ですがそれは彼の努力のおかげだったのでしょうか?実は少し見方をすると彼の努力はあまり関係なかったりします。

あの学校のスターティングメンバーを見るとそれがわかります。ポジション別に記載しますのであしからず。
・センター:3年生・キャプテン
・ポイントガード:2年生。1年間入院しており、キャプテンの設定した練習はほとんどやっていない
・シューティングガード:3年生。バスケ部に復帰してから数か月しかたっていない
・スモールフォワード:1年生。もともと全国クラスの能力が高かった
・パワーフォワード:1年生。身体能力が圧倒的な素人。技術はキャプテンが鍛えた

実はこうしてみるとキャプテンが育てたのは1名であり、それ以外のメンバーに関しては、厳しい練習はあまり関係なかったりします。そうして忘れがちですが、キャプテンが練習によって育てた選手はみな控えになっています。

こうしてみるとキャプテンの掲げた全国制覇は猛練習によって作られたというよりは、運よく全国クラスの人材が集まった結果だといえるでしょう。

果たして吐いてしまうほどの練習に意味はあったのでしょうか?

※一応フォローしておくと、この当時(90年代)のジャンプは能力バトルの全盛期であり、努力によって成長するシーンはことごとくカットされていた事情もあります。

まとめ

高すぎる目標はやる気を上げるどころか、モチベーションを下げるなどの弊害を引き起こします。それでも自分のための目標であれば克服できるのですが、他人から押し付けられた目標だと、再起できないぐらいに達成する意欲が減少するため注意が必要です。

ただし目標は少し頑張れば達成できるもの、頑張る過程を楽しめるものになります。目標を立てるときはそうしたことを意識して設定するようにしてください。


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