メディア断ち

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ネットや電波に乗ってやってくる情報を完全に遮断する「メディア断ち」をしてみましょう。
外からの刺激に自動反応するだけの受け身脳を自分で働く自立脳に変貌させるには…

「メディアは人間の拡張である」と M・マクルーハンが書いたのは、今から半世紀前 “Understanding Media -The Extensions of Man, MacGraw-Hill 1964※” でした。当時の「ホットなメディア」はテレビです。メディアのほとんどが、しっかり作り込まれた情報を受け手に向かって送リ込むために使われていた時代です。双方向のメディアといえば電話くらい。それから 50年を経てインターネットと通信技術の発達でメディアはすっかり双方向のコミュニケーション手段になりました。メールやメッセンジャーのみでなく、Web の世界もブログや SNS の出現で誰もが発信側になれる時代です。「発信」と書くのすら、もう時代遅れ感があるいま、私たちはメディアと本当に上手につきあえているのでしょうか?

「発信」と言いながらコメントや反応を期待して刹那の切断面を脳ミソが頭蓋骨からでろりんと流れ出るように情報を垂れ流す日々…
と書くことも、すでに「時代に取り残されています」と宣言しているように感じられ、スケルトン感に違和感を持つことがあたかも「オワコン人間」かのように見られる風潮。本当にそれで大丈夫ですか? あなたが「発信」しているものは本当にあなた自身の一断面ですか?

こころみに、24時間、完全メディア断ちをしてみましょう。メール、メッセンジャー、SNS、ツイッター、ニュースサイトをはじめ、全ての Web閲覧、テレビ、ラジオ、DVD、新聞、雑誌、ゲーム、もちろん投稿もダメ。早い話がテレビを消して、スマホを「機内モード」にでもして wifi を切断、固定電話の線を引き抜き、有線ネット接続はルーターごと電源を切り…
ここまで読んだだけで恐怖にかられた人はすでに完全に中毒状態です。もう、自分の力でネットを切ることもできないところまで来ていますので、いっそ電波が届かないところにテントでも持ってでかけましょう。安全と非常連絡のために必要なら、緊急連絡が必要な人に「24時間ネット絶ちします」と連絡した上で、メッセージ受付電話番号を知らせておきましょう。メールの署名に「次回ネット断ち日は○月○日です。メール返信が遅くなりますことをあらかじめお詫びいたします。」とでも書いておけば、捜索願を出され、あとで警察に頭を下げにいくリスクが回避できます。

かくいう私自身も仕事のジャンルによっては「5分返信がなかったら死んだと疑われる」的なコミュニティーの人々とお仕事をしていますので、なかなか難しいところもあります。しかし、ひごろから「日によってはメール対応できません」メッセージを出し続けることで、さしたる混乱もなく「メディア断ち」が実現できています。ひとえに準備と思い切り次第ではないでしょうか。

さて、何のための「メディア断ち」なのか、ということを最後に少し。
冒頭に書いたように、一見双方向に見える今のネット環境ですが、実際のところは相当に「受け身」化し、受け手は「S(刺激)→R(反応)」の自動反応マシーン化しています。たくさんの情報を受容して自由に意思決定しているように思っていても、実際には情報の波に流されている状態に陥っているのです。自分を中心に考えると、逆に固定化してしまって全く動いていないも同然です。実際にメディア断ちすると最初は禁断症状のようになって何かの情報を必死に外に求めます。メディアがダメなら、ということで図書館に行って本を読んだり(まぁこれもギリギリですが)、イベントを見に行ったり。この段階でも、すでにカラダが外に向かって動き初めていることがご理解いただけると思います。

メディア断ちと同時にすると効果的なのが「自然の中に出る」「環境を感じる」ことです。メディアを断った状態であらためて自然を見ると、いかにそれが多様な情報にあふれているかに気づくことでしょう。さらに、「中」が充実し始める段階になると「発信」することへの衝動が強くなるのではないでしょうか。そうなれば、あなたのココロとカラダが動き始めた証拠です。「脳ミソでろりん」垂れ流しではない、本当のあなたを力いっぱい発信していきましょう。

※ M.マクルーハン[著]、栗原裕・河本伸聖[訳]:メディア論 −人間の拡張の諸相、みすず書房 1987

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