ヴィゴツキーのZPD(発達の最近接領域)

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知っていてやらない、できるのにやらないは「できない」と同じ。
「できない」と「ひとりでできる」の間に「手伝ってもらえばできる」が必要というお話です。

旧ソヴィエトの心理学者ヴィゴツキー(Lev Semenovich Vygotsky, 1896-1934)は、37歳という若さで亡くなったため、学者として活躍した期間はわずか10年ほどでした。このため、同じ年に生まれたピアジェ(Jean Piaget, 1986-1980)と比べるとやや知名度が低いかもしれません。しかし、「発達の最近接領域(ZPD : Zone of Proximal Development)」理論をはじめ、学習・発達の分野ではピアジェとならんで数多くの印象的な業績を残しました。

この「発達の最近接領域」というのは、子供が何かを学ぶ時には、「自分ひとりでできる」と「まだできない」の間に「教師や他の大人に手伝ってもらえばできる」という領域がある、というものです。この「手伝う」というのをやや文学的に表現すると、「子供が学ぶ時、子供自身も、子供の学びを手伝う大人もそれぞれいつもの子供・大人とは異なる存在になり、相互作用を通して学びを形成する」ということになります。

少し抽象的でわかりづらいので例をあげてみましょう※。

物を掴むことはできるけれど、あれ・それと指差して示すことをまだ覚えていない幼児がいるとします。オモチャを掴もうとして手を伸ばすけれど届かないという時に、それを見た親は「オモチャを手に取りたいのだな」ということを理解してそれを取ってあげることがあるでしょう。この時、幼児は最初「取ってほしい」という意思表示として手を伸ばしたのではなく、自分自身で取りたかったのだけれど、その動作を見た親が代わりに取ってくれたという「相互作用」を通して、「物を指し示す」という動作の意味を理解するようになる、と考えます。

この場面では、子供が自分の力だけで学んだのではありません。また反対に親が一方的に教えたのでもありません。お互いがいわば協力しあって幼児の側に学びが生まれた、という構図です。

このような形の学びは幼児や子供に限らず、大人の学びでも見られることでしょう。そのことを積極的に活かしてゆくのも、「できる」を「できない」に変えてゆくための有効なプロセスです。

NLPではこの「手伝ってもらう」という概念、感覚をもっと広く「リソース」という考え方でとらえ直します。リソースは日本語にすると「資源」の意味ですがここでは学びや行動の助けとなる全てのものやことがらを含みます。直接・間接の助けやアドバイスに限らず何かのインスピレーションを引き起こしてくれるようなメッセージを受け取ることができるものと考えるのです。

リソースの例はたとえば…
・自己効力を上げてくれるもの(自分自身の過去の成功体験、他の人の成功事例、ほめてくれたり背中を押してくれる人やもの、ポジティブなステート)
・必要な情報やスキルを持っている人
・将来の自分自身(future self)
・英雄物語のキャラクター
・パワーを与えてくれると思える人物やもの(リアルな存在でも象徴でも)

このように挙げていくとあなたの行動や学びの手助けをしてくれるリソースには限りがありません。

そのリソースからあなたはどんなメッセージを受け取りますか?

■ 参考文献
・※ 波多野 誼余夫[編集] 1996, 認知心理学〈5〉学習と発達, 東京大学出版会, p226-229

・柴田 義松[著] 2006, ヴィゴツキー入門 (寺子屋新書), 子供の未来社

・ロイス ホルツマン[著], 茂呂 雄二[訳] 2014, 遊ぶヴィゴツキー: 生成の心理学へ, 新曜社

「(まだ)できない」を「できる!」に
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